AIに負けない子の育て方 第12回

「難関校だから」で選ぶと後悔…中学受験でやみくもに高偏差値校を目指すことの弊害

中学受験が過熱しています。しかし、少しでも偏差値の高い学校を目指した結果、親子関係が悪化したり、入学後にやる気を失うなどの弊害も生まれています。後悔しない中学受験にするために大切なことを、この道20年の教育ジャーナリストが解説します。

偏差値は学校を評価する指標ではない

本来、偏差値はある集団の分布を見る指標に過ぎませんが、受験においては、あたかも「学校の価値を決める指標」のように使われています。

そうなってしまう原因の1つが、偏差値表です。上から下に並べられているあの表を見たら、「この学校はあの学校より上」「この学校は最下位クラス」という序列に見えてしまいます。

塾は少しでも上の偏差値の学校に合格させようとしますし、学校も、偏差値が下がると受験生が集まらないので、必死になって偏差値を上げようとします。
 
しかし、当然のことながら、偏差値は教育の中身を表す指標ではありません。

筆者も、取材をする中で、「こんな素晴らしい取り組みをしているのに、なぜこの偏差値?」と思う学校がいくつもありました。

反対に、広報が上手で、まだ成果も出ていないのに偏差値だけが上がっている学校も見受けられます。学校を選ぶ際も、目に見える数値だけで判断するのではなく、中身を見極める目が必要なのです。
 
一方で、中学入試も多様化しています。小学校で英語が教科化されたこともあり、ここ数年で急速に増えているのが、英語入試です。こちらも実施校は2014年の15校から10年で142校へと拡大。英検などのスコアによる優遇制度を設けている学校も増えています。

さらに、首都圏では、自分が頑張ってきたことを紹介するプレゼン型の入試や、課題にどう向き合うかをみるPBL(問題解決)型入試、プログラミング入試など、さまざまなスタイルの入試が出現しています。

これらの「新タイプ入試」は、生徒募集に苦しむ私学の生徒集めの手段と揶揄(やゆ)する声もありますが、多面的な能力を測ろうという考え方は、世界的な潮流でもあり、大学入試の変化にも対応しています。まだまだ全体の人数の中では、小規模ですが、塾主導の受験に風穴をあける取り組みです。

「受験軸」が最高の合格を勝ち取る鍵

そんな中、受験児童を持つ親の意識も変わってきているようです。
 
従来通り、4年生からしっかり進学塾に通って4科目受験で難関校を目指す層以外に、塾には通っているが、偏差値重視ではなくわが子に合った学校を選ぼうと考える層。習い事などを並行して続けながら、公立中高一貫校との併願や2科目受験と新タイプ入試を活用して中学受験をする、あるいは志望校に行けなかったら公立でいいと割り切っている「ライトな受験」をする層も増えています。昨今の中学受験者数を押し上げているのが、こうした家庭なのです。

そんな動向を反映するように、中堅校といわれる学校の人気が高まっています。
 
高偏差値の学校に入れたら安心という時代でもありません。むしろ今後必要なのは、どれだけ学びを深め自分のものにすることができるかということと、学び続ける意欲です。受験はゴールではなくスタートなのです。
 
やって良かったと思える受験にするためには、短期的な目標や周りが決めた指標に従うのではなく、親子で「何のための受験なのかを見失わない冷静さ」を持てるかどうか。そして、親の見栄ではなく、本当に子どものことを考えた学校選びをすることが重要です。
 
それを筆者は、「受験軸を持つ」と表現しています。
 
やみくもに偏差値を上げることを目指すのではなく、「何のために受験をするのか」「どんな受験にするのか」を考え、わが家の軸を決めることが最高の合格を勝ち取るためには欠かせないのです。
 
8月22日に筆者の新刊『中学受験 親子で勝ち取る最高の合格』(青春出版社)が発売されます。この本では、やって良かったと思える受験にするための受験軸の作り方や、軸を持つ上で知っておきたい、塾選び・学校選び・親子の信頼関係の築き方まで解説しています。

内容はこちらからご覧ください。現在Amazonで予約受付中です。

<中学受験>親子で勝ちとる最高の合格
<中学受験>親子で勝ちとる最高の合格


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この記事の執筆者:中曽根 陽子
数少ないお母さん目線に立つ教育ジャーナリストとして、紙媒体からWeb連載まで幅広く執筆。海外の教育視察も行い、偏差値主義の教育からクリエーティブな力を育てる探究型の学びへのシフトを提唱。お母さんが幸せな子育てを探究する学びの場「マザークエスト」も運営している。『1歩先いく中学受験 成功したいなら「失敗力」を育てなさい』(晶文社)など著書多数。
 

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