半世紀ほど前に大活躍した国鉄特急の魅力を余すところなく伝える作品展の見どころを紹介しよう。
国鉄の特急列車とは
もともと特急列車とは特別急行列車の略で、全国各地で走っていた急行列車よりワンランク上の、文字通り「特別な」列車だった。機関車がけん引する客車列車で、1956年11月時点では東海道本線を走る「つばめ」「はと」、京都~博多を走る「かもめ」、夜行の「あさかぜ」の4本しかない貴重な存在でもあった。 東海道本線の全線電化が完成すると、電車による特急列車が開発され、1958年に「こだま」がデビュー。ボンネットスタイルの先頭車および赤とクリームの斬新な塗装は一世を風靡(ふうび)し、以後、特急列車のカラーとして受け継がれていく。
当時、全国の幹線の電化は未発達だったので、まずはディーゼルカーによる特急車両の開発が進み、1961年の白紙ダイヤ改正により、北海道から九州まで(四国をのぞく)、特急列車によるネットワークが張り巡らされた。
1968年10月のダイヤ改正で、東北本線全線電化複線化が完成したのを機に、交直両用の485系特急電車が投入され、電車特急が主流となっていく。また、1日1往復だった特急列車が増発され、2往復以上走る線区も増えていった。
特急列車の大衆化が決定的となった「エル特急」誕生
1972年10月のダイヤ改正で誕生したのが「エル特急」だ。毎時××分発、自由席設置、そして路線によっては1時間に1本運転など、特急列車は気軽に乗れる列車となっていく。高度経済成長期でもあり、旅行や出張の需要も増え、長距離列車の主役は完全に急行から特急へと移った。この時期から国鉄分割民営化までの15年ほどの間の特急列車の記録が、今回の写真展のメインとなる。
現在では、新幹線の愛称としてすっかり定着している列車名もいまだ在来線特急として活躍中で、「やまびこ」「つばさ」「とき」「あさま」「はくたか」「かもめ」などおなじみの列車が美しい日本の四季の中を走る様子を詩情豊かに撮影している。
今ではJR化以降に開発された新型車両で運行中の人気列車「あずさ」「ひたち」「おおぞら」「オホーツク」「ひだ」なども国鉄特急色をまとい快走している。
それにしても、赤とクリームの塗装は、近年のステンレス車両や奇をてらったデザインの車両よりもはるかに日本の自然によくマッチしていると思うのは筆者だけであろうか?