M世代の韓国エンタメウォッチャー・K-POPゆりこと、K-POPファンのZ世代編集者が韓国のアイドル事情や気になったニュースについてゆるっと本音で語る【K-POPゆりこの沼る韓国エンタメトーク】。韓国エンタメ初心者からベテランまで、これを読めば韓国エンタメに“沼る”こと間違いなし!
#38はK-POPを語る上でよく話題に上がる「第〇世代」のこと、そして日本ではあまり知られていないK-POPの元祖“第1世代”とブラックミュージックとの関係についてお話しします。
【前回の記事「NewJeansの日本デビュー曲がSMAPを連想させると話題に!一方、韓国で名前が挙がる『K-POP第1世代」とは』(#37)はこちら】
K-POPで話題になる「第〇世代」って何だ?
編集担当・矢野(以下、矢野):前回はNewJeansの日本デビュー曲の“源流”についてお話ししました。その中で気になったのがK-POPの「第○世代」というくくりについてです。デビュー時期や生まれ年で分かれているのか、それとも……? 僕もふわっと理解しているつもりですが、メディアや話者によって基準が違うんですよね。
K-POPゆりこ(以下、ゆりこ):おっしゃる通り「第○世代」をどこからどこまでと厳密に分けるのは難しく、人によっても微妙に見解が分かれるところです。個人的にはカテゴライズすることにあまり意味を感じないのですが……K-POPを語る上で知っておいて損はないと思います。
第1世代(1996年~2004年頃)
SMエンターテインメント(以下、SM)から伝説の元祖アイドル「H.O.T.」がデビューした年からスタート。DSPメディアが対抗馬として輩出した「Sechs Kies(ジェックスキス)」やSM初のガールズグループ「S.E.S.」が第1世代の代表格。グループを組んで、各メンバーのキャラクターや担当を決め、歌って踊るという現在のK-POPアイドルの基礎を築いた。
第2世代(2005年~2013年頃)
東方神起、少女時代、BIGBANGなど日本を中心とした海外展開に成功した世代。この頃からSM、YGエンターテインメント(以下、YG)、JYPエンターテインメント(以下、JYP)という3大事務所の台頭が目立つように。一方でDSPメディアはKARA、SS501、CUBEエンターテインメントも4Minute、BEASTをデビューさせ、日本でも人気を博した。日本における本格的K-POPブームの初代はこの「第2世代」にあたる。
第3世代(2014年~2018年頃)
日本以外の海外進出に注力し始めたEXOの登場を境に「第3世代」とするケースが多い。BTSやBLACKPINKも代表的なアーティスト。多国籍なメンバー構成、SNSやYouTubeを活用したオンラインマーケティングで世界各地に“ファンダム”を形成。アメリカを中心とした英語圏での認知度を上げ、「世界のスター」として成功するグループが出てきた世代。TWICE、SEVENTEEN、Red Velvetなど今もなお第一線で活躍するグループが多い。
第4世代(2019年~2023年頃)
BTSやTWICEの後輩としてデビューしたTOMORROW X TOGETHERやITZYなど、2000年代生まれのメンバーで構成されたグループを指す。すでにアメリカを中心とした世界展開が当たり前となった環境で登場。aespa、Stray Kids、ENHYPENなど新人時代から高い水準のパフォーマンスを披露し、2024年の主役とも言えるアーティストたちが名を連ねる。最もコロナ禍の影響を受けた世代でもある反面、コミュニケーションプラットフォームの発達によりファンとの心理的距離を縮めることにも成功した(IVE、LE SSERAFIM、NewJeansも第4世代に入れられるケースが多い)。
第5世代(2023年後半~現在)
RIIZE、BOYNEXTDOOR、TWS、BABYMONSTERなどアフターコロナにデビューしたグループを指す。ガールズグループ全盛期だった第4世代に比べ、ボーイズグループの台頭も目立つ。メンバーの多国籍化もより進んでいる。
※年代や基準には諸説あります
実際にはデビューやブレイクのタイミングによって「○.5世代」と表現したくなるようなグループもいます。NCTやIZ*ONEとかね。あとNewJeansも「4.5世代」という感じがします。このあたりも個々の感覚差がありそうです。
矢野:表を見るだけでもこれまでのK-POPの歴史と進化を感じます。ただ、この中で僕が一番ピンとこないのが「第1世代」です。日本で知られるようになったのは「第2世代」からですもんね。
ゆりこ:私も日本のK-POPファンの中では長く追っている方に分類されると思うのですが、第1世代は唯一リアルタイムで見ておりません。ですので、今回はさまざまな本を読み、韓国に住む年上の知人たちに話を聞いてリサーチしてみました。
SM:H.O.T.、S.E.S.、SHINHWA
DSPメディア:Sechs Kies、Fin.K.L.、Click-B
その他:god(JYP)、1TYM(YG)、Baby V.O.X(DRミュージック)など
ゆりこ:確かに今はやや影が薄くなってしまったDSPメディアですが、代表アーティストは日本でもおなじみのKARA! 最近カムバックも果たしましたね。新曲『Hello』にはク・ハラさんが生前に録音した声が加わっているんですよ。空との絆を感じさせるジャケット写真もグッときます。
矢野:8月には9年ぶりとなる日本コンサートツアーもあるんですよね。ただギュリさんはけがで不参加だとか。残念!
ゆりこ:ご本人が一番悔しいでしょうね。また、DSPメディアといえば新人ガールズグループYOUNG POSSEもオススメ。そして前回の最後にお話ししたソバンチャもDSPメディアが作った元祖アイドルでした。第1世代より前の黎明期に当たります。
矢野:いろいろな会社やグループが今日のK-POPを作ってきたのですね。H.O.T.やS.E.S.の名前は僕でも知っていますよ。NCT DREAMやaespaがカバーしているのを聞きました。
ゆりこ:そうそう、後輩グループによるカバーをきっかけに知る人も多いはず。私が最初にS.E.S.を知ったのは、学生時代でした。当時私は韓国の歌手といえばBoAさんしか知らず、S.E.S.もすでに解散後だったと思います。帰国子女の友人が教えてくれたんです。彼女がアメリカの学校で人種差別に遭って落ち込んでいたとき、韓国系のクラスメイトがS.E.S.のCDを貸してくれたそうなのです。そこから夢中になり「S.E.S.がつらい異国の学校生活から救ってくれた。アジア人としてのプライドを取り戻すことができた」と言っていました。
矢野:なんだか胸に迫る話。今のBTSやBLACKPINKにも通じるパワーを感じます。
ゆりこ:約20年前のアメリカの中高生がS.E.S.を知っていたのか!という驚きもありますよね。もちろんアジア系コミュニティーに限定されていたかもしれませんが。
矢野:そういえば前回でもK-POPとアメリカの音楽の関わりについての話題が出ました。第1世代、黎明期のグループもすでに影響を受けていたのでしょうか?