恵比寿始発「鉄道雑学ニュース」 第103回

東海道新幹線60周年。品川駅の「特大パネル絵」で振り返る、新幹線の忘れられないエピソード

今年、東海道新幹線は開業60周年を迎える。その記念事業の一環として、JR東海は絵本作家の鈴木のりたけ氏にイラスト制作を依頼し、品川駅構内に特大パネルとして展示中だ。この絵を見ながら、改めて東海道新幹線の魅力や思い出を振り返ってみた。

酒のツマミ、駅弁、そして食堂車があった時代

新幹線の車内では、さまざまな飲食の思い出もある。ビールのお供としてはスナック菓子のチップスターが人気だ。とりわけ、東海道新幹線限定商品があり、最近では伊勢エビ味を購入したことが記憶に新しい。筆者は胃腸が弱いので避けているけれど、シンカンセンスゴイカタイアイスの人気は驚異的だ。

関東の名物としては横浜の崎陽軒「シウマイ弁当」、関西の551蓬莱の「豚まん」が有名だ。しかし、新大阪駅で購入して車内に持ち込むと豚まんのニオイが気になると物議を醸したことがあった。裏を返せば、それだけの人気だということなのだが……。あと、浜松出身の作者らしく、うなぎパイの姿もちらりと見えるのがほほ笑ましい。
カレーライス
食堂車を知っている世代には懐かしいビーフカレー
また、忘れてはならないのが、カレーライスのイラストだ。ナプキンとスプーンが添えられていることから分かるように、これはお弁当ではない。かつて、新幹線に連結されていた食堂車の人気メニューの1つ、「ビーフカレー」のことだ。食堂車がなくなって久しいけれど、人気だったので「復刻 新幹線 懐かしのビーフカレー」として商品化されている。
 
懐かしいといえば、左端に添えられている硬券切符。今となっては信じられない話ではあるが、開業当初の新幹線の切符には硬券が用いられていた。鋏(はさみ)を入れた跡があり、乗車区間が東京~米原となっているところに作者のこだわりがある。

もっと楽しみたい、東海道新幹線の車窓 

富士山
東海道新幹線の代表的な車窓といえば富士山。謎の看板727も……
東海道新幹線に乗車すると、すぐにパソコンを開いて仕事に集中する人、酒を呑んで居眠りをする人も少なくないけれど、車窓を無視するのはもったいない。いくつもの新幹線がある中で、比較的トンネルが少なく、変化に富んだ車窓が展開するのは東海道新幹線だけといっても過言ではないからだ。

代表的なものは、富士山であり、浜名湖をはじめ海や水辺の風景も見ごたえがある。そして、所々で出現する謎の看板「727」。某化粧品メーカーの広告看板であることをどれだけの人が知っているのだろうか? そして名古屋駅のJRセントラルタワーズ。その名の通りイラストの「中央」に配置されているのは偶然ではないだろう。

60年の思い出を胸に、明日を目指し走る東海道新幹線 

除幕式
特大パネル除幕式であいさつする作者の鈴木のりたけ氏(左から2人目)、左は品川駅長、右2人は芸人「中川家」
東海道新幹線の魅力と60年の思い出をぎっしり詰め込んだイラストの特大パネル。子細に見ていくと、すっかり忘れていた過去の甘酸っぱい思い出や、懐かしい情景が走馬灯のように現れては消えていく。若いころとは違って、思い出したくなかった過去も今では懐かしく振り返ることができる。

何度乗ったかは思い出せないけれど、東海道新幹線の旅とともに人生は流れていく。ありがとう、東海道新幹線。そして、これからもよろしく!
 
取材協力=JR東海
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この記事の筆者:野田隆
名古屋市生まれ。生家の近くを走っていた中央西線のSL「D51」を見て育ったことから、鉄道ファン歴が始まる。早稲田大学大学院修了後、高校で語学を教える傍ら、ヨーロッパの鉄道旅行を楽しみ、『ヨーロッパ鉄道と音楽の旅』(近代文芸社)を出版。その後、守備範囲を国内にも広げ、2010年3月で教員を退職。旅行作家として活躍中。近著に『シニア鉄道旅の魅力』『にっぽんの鉄道150年』(共に平凡社新書)がある。
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