SNSやマッチングアプリのプロフィールで、「趣味」を打ち明け合う場面も多くなった昨今、「映画好き」「ドラマ好き」は似ているようで、その人の印象や人格のようなものまで大きく異なってくるのはなぜなのか、と考えられたそうです。
その本質を考えると、若い人が映画そのものに抵抗を覚える理由がどこにあるのか、その理由の一端が分かったようにも思えたのです。ここでは、映画ファンの筆者と、その1年目の女性社員さんとの対談をお届けします。
【こちらもおすすめ:「倍速視聴とスキップ」「ながら見」をしてしまう理由は? 新卒社員の本音に、映画オタクが“ガチ回答”】
違いを感じる理由は予算や制作規模にある?
ーー(ヒナタカ、以下同)「ドラマ好き」は気軽に話題に出したりできるけど、「映画好きです」と自分から言うのはハードルが高い、というのは、なんとなく分かる気もします。(Mさん、以下同)なぜそう思ったのかといえば、ドラマが映画に比べて、作る時間やコストが抑えられているイメージがあったからなのかもしれません。でも、必ずしもそうではないですよね。2023年夏に放送されていた『VIVANT』というドラマがすごくはやっていて、見てみたらお金も撮影期間もかかった作品だと分かったんです。
ーー本当にそうですよね。最近の海外ドラマでも、映画以上の予算と長い制作期間をかけていることもありますし、ドラマだからこその長い尺でこそ描けるものもあると思います。『ゲーム・オブ・スローンズ』『SHOGUN 将軍』あたりがそうですよね。もちろん作品にもよりますが、全体的な予算や制作規模という評価軸からすれば、映画とドラマの違いは、もうほとんどなくなっているのではないでしょうか。
映画館に足を運ぶ必要性もハードルの高さにつながる?
ーーそれでも、なお「ドラマ好き」よりも「映画好き」の方が偉そうだ、格式高そうだ、という印象を覚えるというのであれば、おそらく予算や制作規模以外にも理由がありそうですね。例えば、ドラマはテレビ放送で無料で見られたりもしますから、単純に「アクセスのしやすさ」はあります。もちろん映画も家で地上波放送やサブスクで鑑賞できますが、もともとは映画館で集中して見ることを想定した媒体でもありますから、やっぱり映画の方が娯楽としてハードルの高さがあるのかな、と。
最新の映画は、映画館へ移動して、そこでお金を使わないと見れない、ということはあるかもしれません。「映画館まで足を運ぶ」ことから、「映画館で映画を見るほどに好きかどうか」と問われているような気もするんです。
ーーなるほど。自分のような映画ファンは、週に何本も映画館に映画を見に行ったりするのが普通になっていますが、「そこまでじゃないと映画ファンって言えないのかな」と思われるというのも、分かる気がします。家で映画を見る人も堂々と映画好きって言っていいと思いますし、映画館で映画を見るのが好きな自分としては「もうちょっと気軽に、みんなに映画館に映画を見に来てほしいな」とは思うのですけどね。
アイドルやお酒に置き換えても分かること
少し話が変わるのですが、私は乃木坂46や櫻坂46などの女性アイドルがすごく好きで、ライブにもよく行くんです。
でも、アイドルオタク、鉄道オタクなど、いろんなジャンルが好きでマニアックな人たちがSNSやネットで、自分が好きなものを発信する機会が増えていて、すごく好きな人がすごく熱く語っているところを見ると、「自分がそんなに好きと言っていいのかな」と思う部分があったんです。
ーーなるほど。SNS時代ならではの「熱量」を、自分自身と比較してたじろいでしまうというのは、特に若い人にはあるのかもしれませんね。
実際にその熱量を持って、趣味にお金を投じているかどうかにも理由があるのかもしれません。私は高校生の頃から乃木坂46などの女性アイドルが好きだったんですけど、高校生の頃はお金があまりなかったので、ライブにはそんなに行けなかったりもしました。 堂々とアイドル好きと言えるようになったのは、 それなりに自分で好き勝手にお金を使えるようになった大学生になってからなんです。それでも、私よりもライブにたくさん行っている人たちに比べると、「そこまでファンだと言ってはいけないのかな」っていう気持ちがあって、それは高校生の時から持ち続けているものなのかもしれません。
だから、なんとなく、オタクならではの熱量を持つ人がいるところに、気軽な気持ちで入っていくのが難しいなと感じているんだと思います。さらに、ドラマより映画の方が、オタクっぽい人が多いイメージがあって、より「好き」に対してのハードルの高さもあるんじゃないかと。
ーーそれは分かる気がします。少しズレるかもしれませんが、自分も映画以外の分野で経験があるんですよ。「お酒好きですか?」と聞かれて、深く考えないまま「好きですよ」と答えたのですが、よくよく話を聞いてみると、相手はさまざまな種類の日本酒やご当地のビールを飲み比べたり、もはや研究をしているような方で、特にこだわりなくコンビニで買ったチューハイや発泡酒を、週に1回くらい飲むような自分とはぜんぜん違っていたんです。「日本酒どれが好きですか?」と聞かれて「日本酒のことぜんぜん分からないです……」と返すしかなくて、なんだか申し訳なくなったんですよ。
そういう何かの「好き」についてのギャップやズレを感じてしまう、というのは、趣味全般にあることなのかもしれませんね。