筆者も関西エリアに出張に行くことが少なくないが、主要駅の新幹線ホームは外国人であふれかえっているのを目の当たりにする。外国人観光客の増加は数字にも出ていて、政府観光局の統計によれば、2024年3月の訪日外客数は、単月として初めて300万人を超えたという。その背景には、円安が進んでいる安い日本への「インバウンド需要」が高まっていることがある。
外国人が感じているのは「日本のポジティブさ」だけではない
メディアでも、安くておいしい日本の食事や日本の独自文化に目を輝かせる外国人を取り上げることが多い。事実、筆者の知人も、何人もが日本を観光で訪れ、皆一様に日本を絶賛している。個人的には外国人が日本のポジティブな面を語る姿はもう見飽きた感もあるが、日本が外国人から好意的に見られることに気分を害する日本人は多くないだろう。ただメディア報道などでは日本に対するネガティブな見方があまり報じられないので、筆者としてはどこか腑に落ちないところがある。当然だが、日本は決して観光客が表面的に感じるような素晴らしいことばかりではない。
そこであえて、日本のことをよく知る在日外国人に、本音ベースで日本について聞いてみることにした。ある程度、日本と付き合いが長い日本に暮らす外国人らに、客観的に、日本の嫌いなところ、つまりネガティブな要素を聞いてみた。
外国人が感じる「日本のダメなところ」を知っておく必要性
日本の少子高齢化は深刻で、今後も人口減を食い止める術はない。生産年齢人口(15~64歳)は、2050年には、2021年から29%減となる5275万人になり、日本経済なども縮小していく運命にある。岸田文雄首相も、そんな日本では移民を受けるのが不可避であり、「外国人と共生する社会を考えていかなければならない」と主張している。そして2024年3月に、人手不足の分野を中心に今後5年で外国人労働者82万人を受け入れると閣議決定している。
つまり、これから中長期的に日本で暮らす外国人が増える。そこで、彼らが感じるであろう日本のダメなところを知っておくのも日本人としては必要なことではないだろうか。
まず、誤解なきよう言っておくが、今回取材に応じてくれた外国人たちは、皆日本の食事や文化が大好きな人たちだ。だからこそ日本に暮らしていて、長く日本人と正面から向き合ってきている。「日本がいやなら帰れ!」と短絡的に言うのではなく、彼らの率直な声を知ってもらいたい。
アメリカ人男性「日本に住むことで、腑抜けた人間になってしまうリスク」
まず30年以上日本に暮らしてきたアメリカ人に単刀直入に聞いた。「あなたは日本の何が嫌いか」と。この男性はまず、「日本に住むというのは、他の国で感じるような不安や恐怖、心配事とは無縁で暮らせることを意味する。凶悪犯罪もめったにないし、夜中にうっかり行ってはいけない地域に入ってしまう心配をしなくていい。カフェで注文を取りに行くときに、ノートパソコンをテーブルの上に置きっぱなしにもできる」と褒めた一方で、「日本に住むことで起きる問題の1つは、日本での生活に慣れてしまうと、外国に帰国したり訪れるときに、大人しくて世間知らずで異常なほど性善説を信じる人になってしまい、腑抜けた人間になってしまうという大きなリスクを負うということだ」と語る。
別のアメリカ人男性に同じ質問をすると、「日本には痴漢や、パンティー泥棒の国会議員(自民党の高木毅議員など)のような一風変わった性的な犯罪はけっこうあるな。それは明らかにネガティブ要素だろう」と語る。
このアメリカ人はさらにこう言う。「日本の住宅は一般的に質が低い。断熱材をがっつり使うことが一般的でないため、冬にマンションの中で凍えそうなくらい寒い」と言う。またこの男性は、日本の仕事文化にも不満を持ち、「威圧的な労働文化に対する私の忍耐は、年を追うごとに弱まっていくのが分かる」と語っている。
つまり、よく言われることだが、日本の企業文化は形式ばっていて、表面的に折り目正しく見せ、体裁を取り繕うことが重要視されており、このアメリカ人男性は日本のビジネス文化に疲れきっているという。「あとは物事の決定に時間がかかる」とも付け加える。