レトロな名作を映画館で楽しみたい。「午前十時の映画祭14」で『ティファニーで朝食を』を鑑賞してみた

4月5日から、全国の映画館で「午前十時の映画祭14 デジタルで甦る永遠の名作」が開催中。子どもの頃に見た名作や、まだ生まれてなかった頃に上映されたレトロな名作を映画館の大スクリーンで見ることができます。映画好きの人はぜひチェックしてみては?

ロングシガレットを持つオードリー・ヘプバーン
『ティファニーで朝食を』ロングシガレットを持つオードリー・ヘプバーン
大ヒットした傑作映画27作品が、全国65カ所の映画館やシネマコンプレックスで1年間に渡り上映される「午前十時の映画祭14 デジタルで甦る永遠の名作」。2010年に開幕され、これまで300本以上の作品が上映されてきました。

現在開催中の「第14回」では、2024年4月5日~2025年3月27日の1年間にわたって上映スケジュールが組まれています。“午前10時”という企画名になっていますが、実際の上映時間や料金は劇場によってさまざまです。

作品の選定をしたのは、映画パーソナリティの襟川クロさん、映画字幕翻訳者の戸田奈津子さん、映画評論家でコラムリストの町田智浩さん、フリーアナウンサーの笹井信輔さん、川喜多記念映画文化財団代表理事の武田和さん

戸田奈津子さんは作品選定委員として「『午前十時の映画祭』に選ばれるような名画は、大画面、ベスト音響で楽しめるよう、全スタッフが心を砕いてつくりあげた作品。それ以外のかたちで観ることは作品への冒涜」とコメントしています。

とはいえ、年齢によっては「その頃の作品を大スクリーンで見たくても、まだ生まれていなかった」または「まだ赤ちゃんだった」という人たちも多いはず。筆者もオードリー・ヘプバーンが大好きで、彼女が主演の名作DVDを全て購入して繰り返し鑑賞し、写真集も買うなどして憧れましたが、スクリーンで見たことはもちろん1度もありません。今回、映画館で見ることができると知って大喜び。早速、劇場に足を運んで来ました。

『ティファニーで朝食を』を映画館で鑑賞してみた

『ティファニーで朝食を』は、1961年に公開された映画(日本初公開は1961年11月4日)。

オードリー・ヘプバーンはこの作品で、一風変わった魅力的な女性、ホリー・ゴライトリーを演じています。ホリーと同じアパートに住む作家、ポール・バージャックを演じるのはジョージ・ペパード。美男美女が、おしゃれにかっこよくスクリーンを染めていきます。
ジャケット写真
時を超えても古さを感じさせないオードリーファッション(筆者撮影)
オードリーが身にまとうことでさらに美しさが増す数々のドレスは、ジバンシィのデザイン。映画の表紙写真は、作品の内容を知らなくてもポスターやなどで見たことがある人も多いでしょう。本作はアカデミー賞で作品賞と主題歌賞の2部門を受賞し、主題歌の『ムーン・リバー』は映画とともに世界中の人たちに愛される1曲となりました。

レトロな物語を「映画館」で楽しむぜいたく

ここで少し、『ティファニーで朝食を』のストーリーについてもお話ししていきます。

ニューヨークの小さなアパートに住むホリー・ゴライトリー(オードリー・ヘプバーン)は、部屋に家具も置かず、飼っている猫には名前も付けず、毎日自由に暮らしています。

その部屋の上の階に住み始めた隣人は、作家のポール・バージャック(ジョージ・ペパード)。ホリーの部屋に電話を借りに来たことをきっかけに、知り合います。初対面の男性を相手に警戒心ゼロで、プライベートな話をベラベラと話すホリーはかなり風変わりで危なっかしい人に見えますが、そこは飛びぬけた美しさでカバー。

「気持ちが赤く沈むことがあるじゃない? そんな時はタクシーに飛び乗ってティファニーに行くの」「赤く沈む? ブルーじゃなくて?」なんて軽口をたたきながら、ホリーは「これから刑務所に面会に行く」と言います。

「1回面会に行く毎に100ドルもらえるの」と話すホリーに「変なことに巻き込まれていないといいけど……」と心配するポール。「大丈夫、私は私でやっていくわ」とドレスに着替えてさっそうと出かけて行きます。

一見、自由奔放で、美貌を武器に男性に貢がせる小悪魔に見えるホリーですが、実はとんでもない苦労人だったことが後に発覚。少女時代は浮浪者同然の貧乏暮らしで、たった1人の兄・フレッドが軍隊から帰って来たら私が養うんだと、兄との暮らしのためにお金を稼いでいたことが分かります。

そんなホリーに心惹かれるポールですが、実は自分も作家として売れた作品は1作だけ。その後はろくに執筆もせず、室内装飾家のパトロン女性に養ってもらっている状態でした。似たもの同士の2人が、嫌気がさすような自分たちの生活に終止符を打ち、もがきながら自分が進むべき道を模索していく姿は現代の若者と何ら変わりなく、どんな世代の心にも響いていく作品だと思います。

また、部屋の中でも路上でもお構いなしにタバコをふかす姿は現代にはないシチュエーションですがそれもまた興味深く、そんな何気ないシーンも現代に見ると新鮮に映ります。
劇場
筆者が赴いた「TOHOシネマズ南大沢」
昨今は若者たちの間でも「昭和レトロ」のカルチャーが人気を呼んでいますが、カフェやファッションだけでなく、映画館で味わう名画でも「昭和レトロ」も楽しんでみては?

今後の上映スケジュール

「午前十時の映画祭14 デジタルで甦る永遠の名作」の今後の上映作品は以下の通りです。

4月26日~5月9日:『ティファニーで朝食を』(グループA、B)
5月10~23日:『ベルリン・天使の詩』(グループA)、『パリ、テキサス』(グループB)
5月24日~6月6日:『パリ、テキサス』(グループA)、『ベルリン・天使の詩』(グループB)
6月7~20日:『宗方姉妹』(グループA)、『小早川家の秋』(グループB)
6月21日~7月4日:『小早川家の秋』(グループA)、『宗方姉妹』(グループB)
7月5~18日:『シャイン』(グループA)、『フェーム』(グループB)
7月19日~8月1日:『フェーム』(グループA)、『シャイン』(グループB)
8月2~15日:『マッドマックス』(グループA、B)
8月16~29日:『マッドマックス2』(グループA、B)
8月30日~9月12日:『花様年華』(グループA)、『男たちの挽歌』(グループB)
9月13~26日:『男たちの挽歌』(グループA)、『花様年華』(グループB)
9月27日~10月10日:『プライベート・ライアン』(グループA)、『スターリングラード』(グループB)
10月11~24日:『スターリングラード』(グループA)、『プライベート・ライアン』(グループB)
10月25日~11月7日:『カジノ』(グループA)、『スカーフェイス』(グループB)
11月8~21日:『スカーフェイス』(グループA)、『カジノ』(グループB)
11月22日~12月5日:『ネットワーク』(グループA)、『チャイナタウン』(グループB)
12月6~19日:『チャイナタウン』(グループA)、『ネットワーク』(グループB)
12月20日~1月2日:『ひまわり』(グループA、B)
2025年1月3~16日:『妖星ゴラス』(グループA)、『海底軍艦』(グループB)
2025年1月17~30日:『海底軍艦』(グループA)、『妖星ゴラス』(グループB)
2025年1月31日~2月13日:『戦場にかける橋』(グループA)、『ドクトル・ジバゴ』(グループB)
2025年2月14~27日:『ドクトル・ジバゴ』(グループA)、『戦場にかける橋』(グループB)
2025年2月28日~3月13日:『アメリカン・グラフィティ』(グループA)、『雨に唄えば』(グループB)
2025年3月14~27日:『雨に唄えば』(グループA)、『アメリカン・グラフィティ』(グループB)

上記の開催映画は、グループAとグループBのエリアによって異なります。詳しく知りたい人は「午前十時の映画祭14」公式Webサイト、もしくはご希望の映画館の公式Webサイトをご覧ください。

また、現在「午前十時の映画祭15」(2025年4月4日~2026年3月26日放映)で上映される作品を募集中。締め切りは8月31日ですので、リクエストがある人は映画祭公式Webサイトから応募してみてくださいね!

この記事の筆者:栗原なお
テレビ局の宣伝部でドラマの公式Webサイトなどの制作に携わる。その後、編集プロダクションやエンターテインメント専門誌の編集を担当。現在はライターとして、長年のマスコミ業界での経験を生かしたコラムの執筆をはじめ、取材やインタビュー活動も行う。
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