新しいデザイナーを起用したD&S列車
新しい観光列車(JR九州では「D&S列車」と呼ぶ)は、運転区間のかなりの部分を占める久大本線(愛称「ゆふ高原線」)開通に寄与した麻生観八氏ならびに衞藤一六氏の名前に由来している。博多発が「かんぱち」(月水土)、別府発が「いちろく」(火金日)で2日かけて1往復している。(木曜は運転しない)JR九州のD&S列車といえば水戸岡鋭治氏が長年デザインしてきたが、今回は鹿児島のデザイン会社IFOO(イフー)が担当、いよいよ新たな時代が始まったようだ。IFOOが列車デザインを手掛けるのは初めてだという。
興味深く車内に入ると、水戸岡氏の手掛けた車両に見られたにぎやかさや華やかさは影を潜めたものの、落ち着いたシンプルさの中にも気品が漂う洗練された独自のデザインに斬新さを感じた。
畳敷のプライベート空間にラウンジも
3両編成の車両は新車ではない。1号車と3号車は肥薩線で運行していた「いさぶろう・しんぺい」を改造したもの、2号車は久大本線などのローカル列車として走っていたキハ125を改造したもので、この形式の車両が観光列車になったのは初めてだ。編成全体を眺めてみると、2号車だけがやや短いことが分かる。艶(つや)のある黒を基調とした車体には周囲の風景が映りこみ、駅構内で見ると、反射の具合で真っ黒ではないように見えるのが面白い。列車の走行ルートを図案化したものが描かれるとともに、沿線の駅名などのローマ字がぎっしりと書きこまれていて、これは水戸岡デザインを踏襲したものといえる。 1号車は赤をベースとしたソファ席。火山や温泉を思わせ、大分・別府エリアの風土をモチーフにデザインしたという。片側に通路があり、3人向かい合わせの席はヨーロッパの長距離列車のコンパートメント風だ。個室ではないものの、ソファの背が高いので個室のような雰囲気である。それぞれテーブルもあり、ゆったりと食事が味わえる。面白いことに運転台すぐ後ろの席は畳敷の個室になっていて、プライベートな空間だ。 2号車は「ラウンジ杉」。樹齢約250年の杉の一枚板カウンターが目を惹く。飲食や鉄道グッズの販売もあり、席を離れての気分転換にももってこいだ。大きな窓から眺める沿線の風景も素晴らしい。 3号車は福岡・久留米エリアの風土をモチーフにデザインし、平野や耳納連山の山々をイメージした緑を基調とした落ち着いた空間だ。通路をはさんで、2人掛けと4人掛けのボックス席が並ぶ。シートはソファのようにゆったりとしているのみならず、背もたれが高いので半個室のようなつくりで落ち着ける。1号車同様、運転台のすぐ隣は畳敷の個室となっている。 今回は4人掛けのボックス席をあてがわれた。ちなみに列車は特急で全席グリーン車扱いである。