曜日ごとに異なるお弁当は“名店の味”
特急「かんぱち」は博多発12時19分。まずは久留米駅まで鹿児島本線を南下する。すぐに客室乗務員が食事をもってやってきた。食事ができるようにテーブルをセットして、専用のランチョンマットを広げると、2段重ねのお重が置かれた。上段と下段を並べたところで、献立の説明を受ける。
この日は水曜日だったので、福岡市内の名店「味竹林」が用意した和食のお弁当だ。玄海ヒラメ、日田ワラビ酢の物、豊後牛白ワイン煮といった沿線の食材をふんだんに盛り合わせた豪華なもので、ちらし寿司と八女茶御飯もある。他の曜日は別の名店が担当する独自のメニューとなる。
おもてなし駅の駅舎や歴史にも注目を
車窓の見どころは久留米を発車し、久大本線に入ってからなので、しばらくは食事に専念する。列車は特急とはいえ、あちらこちらで運転停車をしながら進む。特に急がないという意味の特急なのであろう。乗客も観光が目的なので、誰も文句は言わない。続いて、台形状の特異な風貌をした伐株(きりかぶ)山が同じく右手に見えてくる。すっきりした写真がなかなか撮れず、何枚もシャッターを押してしまう。そして豊後森を出ると、すぐに鉄道遺産ともいうべき9600形蒸気機関車と扇形庫の脇を通過する。このあたりは車窓からの見どころが多く、休む暇がない。 列車は豊後森の次の小駅・恵良(えら)で16分停車する。ここでも大勢の子どもたちや地元の人々の歓迎を受ける。子ども2人による1日駅長、駅前での獅子舞など田主丸駅とは異なるおもてなしに目が行く。また地元の八鹿酒造が商品を販売していた。
ところで、この小駅に停車した理由は、列車名ともなっている「かんぱち」ゆかりの地だからだ。すなわち、駅近くに本社がある八鹿酒造を再興するとともに、久大本線敷設に尽力した人物・麻生観八氏にちなんでの命名なのだ。駅舎内には、「九重町先哲資料館」があり、麻生観八氏の業績を年譜とともにたたえている。