映像とともに「かんぱち」の旅を振り返る
恵良を発車すれば、30分ほどで由布院に到着する。由布院駅付近では、線路が弧を描くように大きく迂回している。これは大分県の実業家・衞藤一六が由布院駅を経由するように尽力したためで、「一六曲がり」と呼ばれている。別府発、博多行きの観光列車「いちろく」は、この衞藤一六にちなんでいる。 由布院駅では初めて降車が可能となり、博多から由布院までの乗車となる人もいる。この後、大分までは淡々と田園地帯を駆け抜けていく。特に車窓の見どころもないので、車内では2号車のラウンジに集まるようアナウンスがある。ここまでの列車旅を、映像を映し出しながら振り返る。視覚、聴覚、臭覚、味覚、触覚という5つのポイントから振り返るという点が目新しい。
最後に、スタッフから特製の金平糖をお土産にいただいて席に戻った。
「ゆふいんの森」「或る列車」……次はどの列車に乗る?
博多駅から別府駅まで4時間40分もの長旅だったが、2カ所の駅でのおもてなし、バラエティに富んだ車窓、ぜいたくな昼食など盛りだくさんの内容で、終わってみればあっという間だった。久大本線には、「ゆふいんの森」「或る列車」といった観光列車(D&S列車)もあり、競合しているけれど、それぞれに特色があり、何度通っても尽きることのない魅力でいっぱいだ。次に出かけるときには、どの列車に乗るか? 悩ましい選択でもある。
旅行代金=1万8000円(食事代込み)、畳個室=2万3000円
予約や列車の詳細は、こちら
取材協力=JR九州
この記事の筆者:野田隆
名古屋市生まれ。生家の近くを走っていた中央西線のSL「D51」を見て育ったことから、鉄道ファン歴が始まる。早稲田大学大学院修了後、高校で語学を教える傍ら、ヨーロッパの鉄道旅行を楽しみ、『ヨーロッパ鉄道と音楽の旅』(近代文芸社)を出版。その後、守備範囲を国内にも広げ、2010年3月で教員を退職。旅行作家として活躍中。近著に『シニア鉄道旅の魅力』『にっぽんの鉄道150年』(共に平凡社新書)がある。