言わずと知れた劇場版『名探偵コナン』第23作目の本作では、人気キャラクター「京極真」が初めて劇場版のメインキャラクターとなったほか、初の海外(シンガポール)が舞台となっています。さらなる特徴は「ツッコミどころ満載」であることでしょう
劇場版『名探偵コナン』、近作の共通点
創作物のツッコミどころは往々にしてネガティブな要素になり得ますし、特に推理もののミステリーでは謎解きのロジックが重要となるので、本来はなるべくツッコミどころは解消しておくべきでしょう。しかし、こと劇場版『名探偵コナン』の近作では、ミステリーはあくまで要素の一部。メインはいい意味で荒唐無稽かつ派手なアクション、愛され続けるキャラクターの格好良さ、関係性の尊さを推した「キャラ萌え」になりつつあります。
それもあってか、多少のツッコミどころは大きな問題ではないどころか、一周回って心の中でツッコんで見た人同士で盛り上がれるギャグへと昇華されているような気さえするのです。ここでは、劇場版『名探偵コナン』の中でも、抜きん出て愛することができる、『紺青の拳』のツッコミどころ5選をあげていきましょう。
※以下からは黒幕の正体を除き、結末を含む映画本編のネタバレに大いに触れています。ご注意ください。
1:マーライオンが盛大に血を吐く
映画の冒頭からマーライオンが血を吐く画に度肝を抜かれた人は多いのではないでしょうか。後にこれは「街を破壊する作戦の決行を海賊へと知らせる合図」であることが明らかになり、そこでは血ではなく「赤い水」であると言われていました。とりあえずツッコミましょう。「もっとほかに目立たない合図の方法があっただろ」「どうやって赤い水を吐かせたねん」「赤い水って言われてたけど結局血なの? それともワインなの? トマトジュースなの?」と疑問だらけだよ!
「スタッフがマーライオンに血を吐かせたかっただけだろ」と言われても仕方がないガバガバぶりですが、実際に脚本を手掛けた大倉崇裕はX(旧Twitter)で「マーライオンの血しぶきは、シンガポール取材の初日にほぼ全員一致で決定。しかし、あんな禍々しい色であんな量吹き出すとは!」と投稿していました。うん、全員一致なら仕方がないですね(遠い目)。
ちなみに大倉崇裕は同投稿への「どういうカラクリで血を吹いてるんでしょうか…?」という質問に対し「口から出ている水は海水を取り込んで循環しているらしいのです。だから、循環させる機械に赤いものを仕込むか、周りの水を赤くすれば勝手に取り込んで吹くと」と、一応は回答。いや、あの、なるほどとはなったんですが、それ以外の疑問は解消されていない気もしますが、まあ、もう、いいや(諦めた)。
2:優れもののスーツケースに入ると色黒になるコナン
今回のコナンは、怪盗キッドに誘拐されてシンガポールに連れて来られるわけですが、その過程がものすごいことになっています。何しろ、コナンが入ったスーツケースは「手荷物検査のX線を通さない特別仕様」「12時間は持つ酸素発生器が入っている」「長時間入っていても体が痛くならない極上のクッションが詰め込まれた優れもの」だったのですから。「運び方が倫理的にも物理的にも危うすぎる」「X線を通さなかったら余計にその荷物怪しまれるだろ」「極上のクッションとは」などは、まだ小さなツッコミどころ。なぜかコナンはスーツケースから出ると肌が黒くなっており、それに対する説明は特になし。なんで? なんでスーツケースに入ると色黒になるの? それどういう理屈?
コナンの突然の色黒化に見ているこっちが混乱する最中、蘭と園子に見つかってコナンじゃないかと思われるのですが、キッドが「ここの子どもらしい」と言い、とっさに思いついた「アーサー・ヒライ」と名乗ると、それをしっかり信じて、この映画のほぼ全編でコナンは現地の子どもこと“アーサー・ヒライ”として活躍するのでした。コナンも「てめえら、あっさりだまされすぎだろ」と言っていたけど、本当だよ!
ちなみに、脚本家の大倉崇裕は「『シンガポールかよ〜』を言わせるの、実はものすごく苦労しました」ともXに投稿。「コナンが気づいたらシンガポールにいた」という“おもしろ状況”のために、ここまでやらなければならないとは……皮肉ではなく、脚本家は大変な仕事だとよく分かります。