グループは存続と言うけれど……メンバー独立後に起こりうる変化とは?
矢野:K-POPには「魔の7年目」という頻出ワードがありますが、専属契約の期限が切れる7年目の段階でメンバーの誰かが再契約しなかったり、俳優などソロ活動に注力したがったりすると、その人抜きで続けるか、もしくは解散するかの二択だったということでしょうか。
ゆりこ:事実上、そんな空気でした。7年目に至る前でしたが、EXOから中華系メンバーが大量脱退した後、唯一残ったレイさんには中国での個人事務所設立を認めたという例はありましたけれど。正直なところ、グループ活動にはほとんど参加していない状況ではあります。まだ希望は捨てていませんが! 本格的な突破口となったのは、2PMのテギョンさんが演技活動に注力するために俳優中心の事務所へ移籍したあたりだと思います。その後も彼は2PMメンバーとして新譜や2023年の来日公演にも参加しています。
矢野:少女時代も今では半数以上がSMエンターテインメントを離れていますが、2022年に奇跡のカムバ(新曲発表)を果たしましたよね。ゆりこさんが大興奮していたのを覚えています。
ゆりこ:こんな日が来るなんて!と泣きました。あと2PMと同じくJYPエンターテインメント出身のGOT7や、YG出身のiKONも全員が元の事務所との専属契約を終了しましたが、グループ活動は続けています。
矢野:SHINeeもオンユさんが復帰し、もうすぐ5月に4人そろって韓国公演をするという発表があり、ホッとしていますが……とはいえ、やはり2PMも少女時代も、グループ活動がグッと減ってしまったことは否めないです。BLACKPINKや他のグループは大丈夫なのかな?と心配してしまいます。
ゆりこ:各グループごとに事情や“温度差”もあるので気になるところですよね。SUPER JUNIORについても先日の「SMTOWN LIVE 2024 SMCU PALACE @TOKYO」で全員そろいましたし、全く心配していないのですけれど、MCで新事務所やソロ活動のPRまでして観客がドッと笑うという流れは、彼らにしかできない芸だと思いました(笑)。そして先日、EXOのファンミーティングに行ってきたのですが、兵役中のメンバー以外は全員そろってホッ。まぁそれは一部のケースとして、矢野さんの心配も理解できます。
矢野:もっとソロ活動に力を入れたいからこその独立、移籍なのでしょうし、会社やマネージャーが違えばスケジュールを合わせるのも一苦労なんじゃないかなって。
ゆりこ:大方のケースは「グループ全員がそろう機会は減少傾向」で「個々を見る機会は増える」だと思います。ただ頻度は落ちたとしてもグループそろってのライブやツアー、ファンミーティングなどは行うのではないでしょうか。なぜならグループのブランド力を維持することが、ソロ活動へも大いに影響すると考えるからです。
矢野:グループ活動の頻度が落ちることは少し寂しくもありますが、メンバーそれぞれの新しい一面を見られる機会が増えるとしたら、全体としてはより楽しみの幅が広がるという見方もできそうです。グループ、個人問わず群雄割拠のK-POP界では、事務所もアーティストも持ちつ持たれつの関係性が熾烈(しれつ)な争いを生き抜くポイントなのかもしれません。
ゆりこ:ひと昔前は、俳優など他ジャンルに転身したり、ソロアーティストとしてイメージチェンジを図ったりする際、かつては「元アイドル」であることを払拭(ふっしょく)しようと、所属していたグループの名前を出さなくなる人も見受けられました。しかし、今のK-POPグループのブランド力やステータスは確実に上がった。世界的に知られているグループであればあるほど「〇〇(グループ名)のメンバー」だからこそ、入ってくる仕事もあるはずです。
矢野:事務所側としても、練習生時代から長年お金やパワーを使って育ててきた人材が「自由にやりたい」「独立したい」と言ってきたときに 「恩知らず!」と簡単に切ってしまうデメリットに気付いたのかもしれませんね。むしろ円満な関係を続けて、共にグループを守って稼いでくれる方がありがたいと。
ゆりこ:10代後半でデビューした子たちも7年たてば30歳目前。それぞれのキャリアビジョンに差が出てくるのは当然のことです。アーティストの考えや人生を、ようやく本人も事務所もファンも尊重し始めたんですよね。