議論の場や、アイデアを出しあう場面で自分の意見を出す際、枕詞などとして使われる「ジャストアイデア」という言葉。使う場面や相手によっては失礼になってしまうことがあるのをご存じですか。今回は、「ジャストアイデア」の正しい意味や使い方などを、具体的な例文も交えて、現役フリーアナウンサーの酒井千佳が解説します。
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<目次>
・「ジャストアイデア」の意味とは
・ビジネスでの「ジャストアイデア」の使い方と例文
・「ジャストアイデア」を使うときに注意したいビジネスマナー
・ビジネスで使える「ジャストアイデア」の類義語
・ジャストアイデアの対義語は「考察」
・まとめ
「ジャストアイデア」の意味とは
「ジャストアイデア」は英語の「just(ジャスト)」に「idea(アイデア)」を組み合わせた言葉です。「just」は、行為や状況が単純でそれ以上でも以下でもないことを表し、「ジャストアイデア」で、「ふと思いついたにすぎない考え」「単なる思いつき」という意味になります。熟考した考えや提案ではなく、その場でふと思いついたことを話す際などに使われるビジネス用語です。また、これは和製英語ですので英語の会話では「just idea」は使いません。本来の英語表現では「I just come up with an idea.(ただ、あるアイデアを思いついた)」となります。
ビジネスでの「ジャストアイデア」の使い方と例文
「ジャストアイデア」は、ビジネスにおいては、アイデアや提案を出す場面でよく使われる言葉です。熟考した考えではないというニュアンスがありますので、自分のアイデアを謙遜して発言したい場合や、自分の意見に自信がない状態で発言をする必要がある場合の枕詞として使われることがあります。まだ検討が十分ではなかったり、反論の余地があると感じている場合などに前置きをすることで、不備や甘さがあってもご容赦ください、という気持ちを込めることができます。
【例文】
・あくまでジャストアイデアではありますが
・ジャストアイデアで恐縮ですが
自分の意見をジャストアイデアと前置きすることで、他の人からの意見も引き出したり、検討を加えることにつながるため、議論を活性化する効果が期待できます。
一方で、「ジャストアイデア」は「熟考されたアイデア、よく練られた考え」と相対する表現ですので、「今後検討が必要な不完全な意見・アイデア」というネガティブなニュアンスを含む言葉でもあります。他人の意見に対して「ジャストアイデア」という場合は、「今後さらなる検討が必要である」という指摘をすることにもなりますので注意が必要です。
【例文】
・それはジャストアイデアにすぎない
・まだジャストアイデアの段階です
・ジャストアイデアにとどまらない提案
「ジャストアイデア」を使うときに注意したいビジネスマナー
「ふとした思いつき」を意味する「ジャストアイデア」。自分の意見を出す際などに謙遜する表現として使うことができますが、場面や相手によっては注意が必要な場合があります。・アイデアを出しあうシーンでは使わない
ブレインストーミングなど、とにかくたくさんの意見やアイデアを出しあう場面で求められるのは熟考したアイデアではなく、さまざまな思いつきです。こうした場では、出されるアイデア全てが基本的にはふとした思いつきですので、発言のたびに「ジャストアイデアですが……」と前置きする必要はありません。
また、さまざまな意見が出されたあとに、議論をまとめなければいけない場面になってジャストアイデアを出すと場を混乱させることにもなりかねませんので、控えた方がよいでしょう。
・上司や先輩など目上の人には使わない
上司や先輩、取引先など、敬意をはらわなければいけない相手から出た意見やアイデアに対して「ジャストアイデアですね!」などと言うのは失礼になってしまいます。英語の「just」には「ちょうど」や「正確な」という意味がありますので、的を射た意見や、テーマにぴったりのアイデアに対して褒める意図で言ってしまうかもしれませんが、ここまで説明したようにジャストアイデアの正しい意味は「ふとした思いつき」です。「ジャストアイデアですね」ということは、「あなたの意見は思いつきにすぎませんね」と言っていることになりかねませんので注意が必要です。
また、目上の人に対して自分の意見を出す際にも、毎回のように「ジャストアイデアですが……」と前置きをすると、自信がないように見られたり、いつもしっかりと考えずに発言しているように受け取られる可能性があります。謙遜する表現としても使える言いまわしではありますが、頻度や場面を選んで使った方がよいでしょう。
ビジネスで使える「ジャストアイデア」の類義語
議論の場や、自分の意見を出す際の前置きとして使われる「ジャストアイデア」。同じような意味を持つ言葉もいくつかありますので、例文と合わせてご紹介します。・フラッシュアイデア
「フラッシュアイデア」は、「ひらめく・ひらめき」という意味のある英語「flash(フラッシュ)」とアイデアを組み合わせた言葉で、「瞬間的にひらめいたアイデア」という意味です。ジャストアイデアとほぼ同じ意味ですが、ジャストアイデアがネガティブな意味で使われる場合があるのに比べて、フラッシュアイデアはポジティブな意味で使われることが多いという違いがあります。
フラッシュアイデアは「良いひらめき」というニュアンスがありますので、他人のアイデアを褒める際にも使うことができます。
【例文】
・彼のフラッシュアイデアのおかげで新しい展開につながった
・一案
「一案」は、「さまざまな考えがある中の一つの考え」という意味です。ジャストアイデアのような「思いつき」というニュアンスはありませんが、自分の考えが全てではないという意味を込めた謙遜表現として、自分の意見を出す際などに使うことができます。
【例文】
・これはあくまで一案ですが
・一案として示します
ジャストアイデアの対義語は「考察」
「考察」は、「よく道理を考えて物事を明らかにすること」「十分に考えて調べること」という意味の言葉です。検討を加える前の思いつきを意味する「ジャストアイデア」とは対極にある言葉です。学術論文や、ビジネスのプレゼン、レポートなどにおいて使われる言葉で、事実やデータをしっかりと調べ、十分な検討を加えることを意味します。考察を加えることで意見や提案が説得力を持ったものになります。まとめ
ビジネスシーンで自分の意見を出す際などに使われる「ジャストアイデア」は、「ふとした思いつき」という意味です。自分の意見を謙遜する表現として使える一方で、まだ十分な検討が加えられていない不完全な意見というネガティブなニュアンスがあるため、相手や場面によっては使い方に注意が必要です。言い換え表現なども含めて、正しい使い方の参考にしてみてください。■執筆者プロフィール 酒井 千佳(さかい ちか)
フリーキャスター、気象予報士、保育士。
京都大学 工学部建築学科卒業。北陸放送アナウンサー、テレビ大阪アナウンサーを経て2012年よりフリーキャスターに。NHK『おはよう日本』、フジテレビ『Live news it』、読売テレビ『ミヤネ屋』などで気象キャスターを務めた。現在は株式会社トウキト代表として陶芸の普及に努めているほか、2歳からの空の教室「そらり」を主宰、子どもの防災教育にも携わっている。