KGIの意味とは? KPI・KSF・OKRとの違い、設定のポイントを解説

KGIとは「Key Goal Indicator」の頭文字を取った略語で、日本語で「重要目標達成指標」と訳されます。ビジネスの最終目標を定量的に評価するための指標として1つに絞って設定するものです。「KGI」「KPI」「KSF」の違いやKGI設定のポイントを解説します。

KGIの意味とは? KPI・KSF・OKRとの違い、設定のポイントを解説
KGIの意味とは? KPI・KSF・OKRとの違い、設定のポイントを解説

事業を成功させるためには、明確な目標を掲げ、それに向けてプロセスを回していくことが不可欠です。その目標達成率を可視化するための指標が「KGI」ですが、他にも「KPI」「KSF」「OKR」など似たワードが出てくるため、その違いについて理解しておく必要があります。そこで今回は、現役フリーアナウンサー酒井千佳が、「KGI」の意味や他の用語との違い、KGIを設定する際のポイントについて解説します。

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<目次>
KGIとは?
KGIとKPIの違いは?
KGIとOKRの違いは?
KSF・KFS・CSFとは?
KGIを設定するメリットは?
KGI設定のポイント「SMARTの法則」
KGI設定の失敗事例
KGI・KPIの達成のために大切なポイント
まとめ

KGIとは?

KGIとは「Key Goal Indicator」の頭文字を取った略語で、日本語では「重要目標達成指標」と訳されます。企業や組織が展開するビジネスにおける最終目標を、定量的に評価するための指標として1つに絞って設定するのが一般的です。KGIは、企業や組織のビジネス内容、方針などによって異なりますが、例えば「年間売上高10%アップ」「利益率15%アップ」など、従業員全員が自社の目標として認識できる内容であることが大切です。部署や部門、立場などに関係なく、全員が達成を目指すべき目標だと考えると分かりやすいでしょう。

・KGIを積極的に取り入れるべき業界
KGIは、BtoB企業や製造小売企業などすでに幅広い業界で取り入れられています。企業や組織として大きな目標を設定し、達成に向けて各部署や部門、あるいは個人が行動するというのは、どの業界でも無意識に行われていることといえます。

そんな中、近年KGIを積極的に取り入れるべきといわれているのがWeb業界とIT業界です。近年、インターネットの普及に伴いWeb業界は著しい成長を遂げていますが、例えば自身でオンラインショップを立ち上げたとしましょう。月の売上が50万円だったとして、それだけでは利益率や購入件数が把握できず、最終的に事業が成功したのか失敗したのか判断ができません。その判断基準となるのがKGIであり、この場合KGIが「売上30万円」であれば目標達成、「売上100万円」であれば到達せず改善が必要ということになります。

また、IT業界も同様で、アプリ開発やITツールの販売などは「売れれば成功」というものではありません。受注数やダウンロード数を正確に把握し、数値を使った具体的な目標を立ててはじめて目標を達成したかどうかの判断が可能となります。製品ではなく情報を扱うWeb業界・IT業界は他に比べると目標の達成や未達があいまいになりがちですが、売上や利益率を見える化してKGIを設定することで、社内でも共有しやすくなり、業績アップにつながるでしょう。

KGIとKPIの違いは?

KGIとセットで使われる言葉に「KPI」があります。ここではKPIの意味、KGIとKPIの関係性について詳しく解説します。

・KPIの意味とは?
KPIとは「Key Performance Indicators」の略語で、日本語では「最終業績評価指標」と呼ばれています。企業や組織が掲げる目標を達成するための重要な業績評価の指標であり、達成状況を定量的に計測・観測することで、各プロセスにおけるパフォーマンスの動向が把握できるようになります。

KPIを使って目標達成度合いを計測、監視することで、各プロセスが適切に実施されているかを客観的に評価することが可能です。

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・KGIとKPIの関係性
KGIは企業や組織が設定した最終目標であり、対してKPIはその最終目標を達成するための中間目標という位置付けです。最終ゴールであるKGIを達成するために、各プロセスが適切に実施されているかを確認するための指標であり、「KGIを達成するためのスモールステップとしてKPIを設定する」と考えておくといいでしょう。

・KPIツリー(ロジックツリー)とは?
最終目標となるKGIを頂点に設置し、その最終目標を達成するために設定したKPIを幹から枝分かれするように段階的に配置した図のことを「KPIツリー(ロジックツリー)」といいます。企業や組織が抱えている課題を可視化できるため、原因追及や論点整理する際に非常に役立ちます。KGIを構成する要素を分解し、実行できるレベルまで落とし込んだKPIを複数設置することで、それぞれがどう行動すれば目標達成できるのかを、一目で把握できるようになることが大きなメリットです。

あくまでも最終ゴールであるため、「商談数100件」「成約率80%超え」など目標の過程にあたる指標、つまりその先にさらなる目標が存在するような指標は適していません。具体例として、「売上10%アップ」をKGIに設定するとしましょう。売上10%アップを達成するために必要な要素として「顧客数」と「顧客単価」を設定します。「顧客数」は「新規顧客数」と「リピーター数」に分解でき、さらに「顧客数」を増やすためには「商談数」と「成約率」が重要な要素となります。このようにどんどん細分化していき、これ以上分解できないレベルまで到達したらKPIツリーの完成です。例えば、このKPIツリーで顧客数が未達成だった場合、商談数と成約率どちらに問題があったのか、どこを改善すれば目標達成できるのかといったことが明確になります。

KGIとOKRの違いは?

「OKR」もKPIと同じようにKGIとセットで使われる言葉です。OKRの意味合いとそれぞれの関係性について解説します。

・OKRの意味とは?
OKRとは「Objective and Key Result」の頭文字を取った言葉で、日本語では「目標と主要な結果」と訳されます。企業や個人における目標設定や管理のための手法の1つで、「Object(達成目標)」とその達成度を観測する「Key Result(主要な結果)」を設定し、企業が目指すべき目標と個人単位の目標をリンクさせることで進捗(しんちょく)確認、評価まで一連の流れとして管理するのが特徴です。

・KGIとOKRの関係性
KGIが達成率100%を目指すのに対し、OKRは60〜80%程度の達成率が理想とされている点が双方の大きな違いです。人事評価に関わる指標でもあり、「簡単には達成できないハイレベルの目標」「もう少し頑張ればどうにか達成できそうな目標」を掲げることで、従業員および企業全体のモチベーションを長期的に維持することにつなげます。KGIやKPIを達成するためには、従業員一人ひとりの意識と努力が欠かせません。OKRを設定して企業の目標と個人の目標を連動させることで、それぞれの役割が明確になることから、OKRはKGIやKPIを達成するための施策と考えていいでしょう。

KSF・KFS・CSFとは?

先に紹介したKPIとOKRの他にもKGIに似た言葉があります。ここでは「KSF」「KFS」「CSF」の意味について解説します。

・KSFの意味とは?
「Key Success Factor」の頭文字を取った「KSF」とは、日本語で「重要成功要因」といいます。KGIやKPIが定量的な指標であるのに対し、KSFは定性的指標であることが大きな違いです。KSFとKPIはいずれもKGIの枝葉となるため混同されやすいですが、構造としては「KGI→KSF→KPI」の順につながるのが一般的です。

KGIは企業単位の大きな目標であり、それを達成するために必要な施策や改善策を絞り込むのは簡単ではありません。そこで重要な役割を果たすのがKSFなのです。KGIの下にKSFを設置することで、より具体的なKPIを設定しやすくなります。例えば「コスト10%削減」をKGIとした場合、「業務効率化」や「生産性向上」などがKSFとなり、そこから細分化することで具体的なKPIを設定できるようになるでしょう。

・KFSの意味とは?
KFSは「Key Factor for Success」の略語で、KFSと同じく「重要成功要因」のことを指します。

・CSFの意味とは?
CSFは「Critical Success Factor」の略語で、こちらもKSFやKFSと同じ「重要成功要因」という意味を持ちます。

これら3つは名称は異なりますが、全て同じ意味で使われている言葉です。相手にどの表現をされたとしても焦らず対応するためにも、同義であることを頭に入れておきましょう。

KGIを設定するメリットは?

事業を成功させるためには、企業における明確な目標「KGI」を設定することが必要不可欠であることが分かりました。では、実際KGIを設定することでどのようなメリットが得られるのでしょうか。具体的に見ていきましょう。

・重要項目・ゴールが明確になる
KGIを設定することで得られる最大のメリットが、企業における重要事項やゴールが明確化されることです。実際の現場では「なんとなく働いている」「ただ目の前の仕事をこなしている」という人も少なからずいるでしょう。しかし、KGIを設定しゴールを可視化することで、全従業員がそれに向けて行動を起こさなければならない状況を作ることができます。それにより個人が「目標達成のために必要な施策は何か」「いつまでに完了すべきか」など、自然と業務の優先順位を考えて行動するようになり、結果的に組織全体としての業務効率化が期待できるでしょう。

・会社のビジョンを従業員が理解できる
それぞれの従業員が、会社のビジョンや目標を理解しやすくなるというのも、KGIを設定するメリットです。自分以外のメンバーや複数のチームと仕事をする際、同じ目標や目的を共有していないと方向性を決めるのは難しくなります。会社のビジョンを共通認識として持つことで、目標を達成しやすくなるだけでなく、チーム全体、あるいは組織全体のモチベーション維持、向上にもつながるでしょう。一方、KGIを設定していない環境では、従業員から「何のために働いているのか分からない」などといった不満が漏れるリスクも高くなります。労働環境を整えるためにも、KGIの設定は欠かせません。

・事業の達成率や進捗状況が分かる
KGIを設定することで、事業の達成率や進捗状況が把握しやすくなります。KGIは、数値を用いて定量的に評価することが原則とされており、目標となる数や期限を明確に示すことが求められます。そのため、データを確認、比較するだけで達成率や進捗状況を管理できるようになるのです。進捗状況を定量的なデータとして把握できることで、より具体的な経営判断にもつながっていくでしょう。

・外部のステークホルダーに進捗を説明しやすい
KGIを設定し、最終ゴールを明確化することで外部のステークホルダーに進捗状況を伝えやすくなるのも大きなメリットの1つといえるでしょう。株主や取引先、顧客など社外の人たちと進捗状況を共有するのは簡単ではありません。しかし、KGIを設定することで企業の目標、ゴールが数値化され、外部のステークホルダーも数字で判断することが可能となります。取引の際の材料としても、大いに役に立つはずです。

KGI設定のポイント「SMARTの法則」

KGIを設定する際は、「SMARTの法則」を活用すると効果的だといわれています。「SMARTの法則」とは、企業や組織が目標を設定するために使う定番のフレームワークであり、以下の5つの要素から構成されています。

・明確性(Specific)
目標は、具体的であることが何より重要です。目標が明確であればあるほど、そこに到達するための行動についても具体的に検討できるようになります。また、目標が抽象的だと、それぞれの認識にズレが生じてしまう可能性があります。「できるだけ多くの契約を取る」ではなく「新規契約20件獲得」など、誰が見ても理解できる内容にしましょう。

・計量性(Measurable)
目標は回数、件数、率など定量的に測定できる内容であることが原則です。例えば「できるだけ売上を伸ばす」と「売上率10%アップ」では、前者は計量化できる目標ではないため、後者に比べると目標達成のための行動を考えるのが難しいというのが分かるでしょう。実際「顧客満足度の向上を図る」「商談の成功率を高める」などといった目標を掲げているケースは多く見受けられますが、そもそも目標設定をする際には「図る」「高める」「改善する」といった抽象的な表現はNGといえます。

・現実性(Achievable)
目標は「努力すれば達成できる」程度が好ましいとされています。担当者に「どうせ無理だ」と思わせてしまうほど目標と実態がかけ離れていては、現実味がなくモチベーションの低下を招いてしまいます。前期間の数値を基準にして、十分に達成見込みのある目標を設定しましょう。その際、達成見込みがある理由を付け加えると、なお効果的です。例えば「先月は売上が平均して5%上昇した」だから「今月の目標は7%アップだ」といえば、担当者のモチベーションの向上にもつながります。

・関連性(Result-oriented or Relevant)
目標は、企業や組織が掲げる最終目標と関連がある内容であることが重要です。ここで言う最終目標をKGIとすると、「最終目標を達成するために取るべき行動」がKPIです。KGIとKPIに関連性がないと、担当者は途中で目的を見失ってしまい、モチベーションを維持することが難しくなります。目標を立てる際は、KPIを達成することでKGIを達成できる内容に設定することが大切です。

・期限・適時性(Time-bound)
目標には、期限設定が欠かせません。いくら数値で示した現実味のある目標を設定したとしても、いつまでにそれを達成するのかということが明確でないと、先延ばしになりモチベーションが下がってしまいます。また「そのうちやればいい」という気持ちから、業務効率も大幅に低下します。「いつまでに何をすべきか」を明確にするためにも、週、月、四半期など適切な範囲で期限を定めて取り組むことが大切です。

KGI設定の失敗事例

KGIを設定する際は「SMARTの法則」がポイントになると解説しましたが、大切なのは5つの要素全てを満たしていることです。5つのうち1つでも欠けてしまうと、以下のような失敗につながるリスクがあるため注意しましょう。

・明確性と計量性が欠けている
「顧客満足度を向上させる」という目標を掲げている企業が少なからずあります。目標として間違っているわけではありませんが、これだけでは明確性と計量性に欠けるといえます。定量的に評価されておらず非常にあいまいな表現となっているため、それに向けて何から始めるべきかを検討しにくいでしょう。こういった場合には「顧客満足度調査のスコアを80%以上にする」など、明確性と計量性を満たすことでKPIの設定につなげやすくなります。

・現実性が欠けている
トップダウンの企業によく見られるケースですが、「今月の成約件数は先月の倍に」など到底達成できないようなKGIが設定されることがあります。業績向上を目指すのは企業として当然の考え方ではありますが、これまでの実績や市場の動きなどを踏まえた上でKGIを設定することを意識しましょう。

・関連性が欠けている
SMARTの法則における5つの要素のうち、満たすのが最も難しいのが「関連性」だといわれています。そのため、実際の現場でもKGIとKPIの関連性がない、薄いといったケースは珍しくありません。例えば「海外シェアを10%アップする」というKGIを設定した場合、KPIが「TOEIC800点を達成する」だと、KPIがKGIの達成に直結するとはいえません。個人におけるKPIのチェックをしていない、精査に至っていないという企業は注意が必要です。

KGI・KPIの達成のために大切なポイント

最後に、KGI・KPIを達成して企業や組織としてのゴールにつなげるための大切なポイントについて解説します。

・改善可能なKGI・KPIにする
KGIとKPIには、その都度改善していける柔軟性が必要です。1つのアクションで目標を達成できるなら簡単ですが、現実には失敗を繰り返してやっとゴールが見えてくるものです。つまり、KGIとKPIにおける改善点を見つけ出して整理し、常に新しい施策を生み出す必要があるのです。施策をKGIやKPIと連動させることで、双方の進捗をまとめて観察、検証でき、より効果的かつ効率的に目標に近づくことができます。KGI・KPIと施策はセットとして考えておきましょう。

・単純なKPIを設定する(複数設定しない)
大きな目標である「KGI」を達成するために不可欠となる要素「KPI」が複数あるのは当たり前、ということを前提としている企業は多くあります。しかしそれは、KGIを達成するまでに、課題がいくつもあるということと同じです。課題が増えるほど複雑になり、それら全てを管理するには時間も労力もかかるでしょう。加えて、全てのKPIに同じだけ注力できるかというと、そうではありません。実行した施策としなかった施策、これらの差が出た時点で検証にも意味がなくなってしまいます。そうした状況を避けるためにも、KPIはできれば1つに絞るのが理想です。

・現状を常に把握できるよう組織内の体制や環境を整備する
KGIやKPIを確実に達成するためには、企業や組織が柔軟にフォローできる体制や環境を整えることが大切です。担当者のトラブル発生時はもちろん、思ったより進捗が遅れているというような場合も、管理者が速やかにフォローできれば、組織全体としての効率を下げることなく業務を継続することが可能です。管理者が正確に把握し、適切な指示を出すためにも、個々の状況を可視化できる環境を構築しましょう。

また、DX化を推進することでさらなる業務効率化が望めます。中でも、顧客情報や購入履歴、問い合わせ履歴など顧客に関するあらゆる情報を一元管理できる「CRM(顧客管理システム)」と、タスクや案件の進捗状況、商談事例などをデータ化して共有する「SFA(営業支援システム)」は、欠かせないツールとして導入する企業が急増しています。この2つを相補的に活用することで、例えば「見込み顧客へのアポイント獲得率の推移」や「先月の商談成立件数」などをタイムリーに把握することができ、目標と進捗に乖離(かいり)が出れば、即座に改善策を練ることも可能になります。

まとめ

「KGI」の意味や「KPI」「KSF」「OKR」などとの違い、KGIを設定する際のポイントなどについて詳しく解説しました。KGIを設定し、企業としての最終目標を可視化することは、社内だけでなく社外の理解や信頼を得ることにつながります。また、KGIを設定する際にはSMARTの法則を活用し、下位項目として他の指標をうまく組み合わせることが大切です。徹底的に業務効率化を図りたいという場合は、社内体制や環境を整えるためにもCRM/SFAツールなどの導入を検討しましょう。

■執筆者プロフィール
酒井千佳
酒井 千佳(さかい ちか)
フリーキャスター、気象予報士、保育士。
京都大学 工学部建築学科卒業。北陸放送アナウンサー、テレビ大阪アナウンサーを経て2012年よりフリーキャスターに。NHK『おはよう日本』、フジテレビ『Live news it』、読売テレビ『ミヤネ屋』などで気象キャスターを務めた。現在は株式会社トウキト代表として陶芸の普及に努めているほか、2歳からの空の教室「そらり」を主宰、子どもの防災教育にも携わっている。
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