2024年は大規模な「太陽フレア」発生のピーク!? 日常生活で起こるかもしれない最悪の事態とは

大規模な「太陽フレア」の発生が予想されていますが、それによって私たちの暮らしにどんな影響があるのでしょうか。気象予報士の片山美紀が解説します。

晴れや雨など空模様を知らせる天気予報のように、宇宙で起きる変化を教えてくれる「宇宙天気予報」をご存じでしょうか? 2024年は大規模な「太陽フレア」が発生するおそれがあり、スマホの通信障害が起きるなど私たちの日常生活に影響が出るといわれています。

そもそも「宇宙天気」とは何?

宇宙にも「天気」はあるのでしょうか?
宇宙にも「天気」はあるのでしょうか?
宇宙というと、どんなイメージがあるでしょうか? どこまでも広がる真っ暗な闇の中、太陽に月、地球をはじめとした惑星が浮かぶ、永遠に変わらない静かな空間……、そんなイメージがあるかもしれません。

しかし実際には、地上で雨が降ったり晴れたりするのと同じように、宇宙の環境もいつも同じではなく日々移り変わります。その変化を引き起こすのが、太陽の活動だといわれています。太陽で爆発が発生すると、放射線の強烈な風が起き、宇宙空間では嵐となります。こうした変化を天気になぞらえて、「宇宙天気」と呼んでいるのです。

そして宇宙の変化が、近い将来、私たちの生活に異変を及ぼす危険があり、「宇宙災害」が起きる可能性があるといわれているのです。

宇宙嵐を引き起こす「太陽フレア」とは?

イメージ画像:solarseven / Shutterstock.com
太陽フレアとは? 画像出典:solarseven / Shutterstock.com
宇宙嵐を引き起こす、太陽の表面上で起きる爆発を「太陽フレア」といいます。太陽フレアが発生すると、電気を帯びたガスや強烈なエネルギーを持つ放射線などが噴き出し、地球に到達することもあるのです。

太陽フレアは突発的に起きる現象ですが、おおよその発生時期を予測することができます。注目すべきは太陽の表面に現れる黒い点状の場所「黒点」の数の変化です。強い磁場を持つ黒点は、周りに比べて温度が低い場所のため、黒っぽく見えています。
 
黒点の数は約11年の周期で増えたり減ったりしていますが、黒点が増加すると、太陽フレアが発生しやすくなるといわれています。

太陽フレアが発生したら「暮らしへの影響」は?

2023年、アメリカ海洋大気庁(NOAA)の宇宙天気予報センター(SWPC)は「次回、黒点の数がピークになるのは2024年1月から10月だ」と報告しました。
次回の黒点数ピークは2024年1月~10月
 次回、太陽の黒点数がピークになるのは2024年1月~10月と予測。出典:アメリカ海洋大気庁(NOAA)宇宙天気予報センター(SWPC)
大規模な太陽フレアが発生すると、人工衛星の不具合や広域での停電が発生したり、GPSの精度が低下したりするなど私たちの暮らしに大きな影響が出ます。
 
1989年3月には、太陽フレアによってカナダ・ケベック州で大規模な停電が発生しました。停電の3日ほど前に起きた太陽フレアに伴う磁気嵐が原因で電力系統が停止し、停電はおよそ9時間続き、約600万人に影響がおよびました。完全復旧まで数カ月もの時間がかかるほど深刻な災害となったのです。
 
科学技術が発展し、人工衛星や電子機器に依存している現代は、一昔前に比べて影響を受けやすくなっています。

「宇宙災害」による最悪のシナリオとは?

日本でも宇宙災害による被害を最小限に抑える必要があると、総務省は太陽フレア発生時の「最悪のシナリオ」を想定した際に、どのようなことが起きるのか報告書をまとめました。

報告書によると、100年に1度ほどの頻度で起きる太陽フレアが発生した場合、以下のようなことが発生する恐れがあるといいます。

広域に及ぶ停電
スマホや携帯電話、無線システムの通信障害が発生
GPSの測位精度の低下に伴い生じる(最大)数十メートルの誤差

GPSに誤差が生じるとカーナビが正常に働かず、衝突事故が発生する恐れがあるということです。

またドローンは、今後も建設や農業のほか運送など多くの分野で導入が期待されるため、障害が生じるとさまざまな業界に被害がおよびます。

その他にも、気象衛星の利用制限により天気予報の精度が低下するなど、安全な暮らしが脅かされるリスクが心配されます。

個人で「宇宙災害」対策を確認

私たち自身が個人でできる対策は、何でしょうか? まずは地震や台風などへの備えと同様、懐中電灯や飲料水、食料などを備蓄することです。このほか、太陽光パネルや蓄電池など予備電源があるとより安心です。

また、国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)が運営する「宇宙天気予報」で毎日の太陽の活動状況が公開されています。気になる人は日々、チェックしておきましょう。将来的には日々の太陽活動や社会への影響を伝える「宇宙天気予報士」の創設も期待されています。目には見えない、宇宙空間で引き起こされる災害。私たちも無縁ではいられません。

<参考>
・『宇宙の天気は予報できるのか? 宇宙天気』(篠原学/誠文堂新光社)
NOAA FORECASTS QUICKER, STRONGER PEAK OF SOLAR ACTIVITY(アメリカ海洋大気庁〔NOAA〕宇宙天気予報センター〔SWPC〕)
宇宙天気の警報基準に関するWG 報告:最悪シナリオ(総務省)
宇宙天気予報(国立研究開発法人情報通信研究機構〔NICT〕)
この記事の執筆者:片山 美紀
1991年生まれの気象予報士。現在は『首都圏ネットワーク』(NHK総合)などで気象解説を担当。防災情報を正しく活用してもらうための普及啓発として講演活動にも取り組む。 
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