「暗黙の了解」は通用しない。恋愛ドラマで描かれてきた“同意なしのスキンシップ”と現実の決定的な差

恋愛ドラマや少女漫画でたびたび描かれてきた、突然のキスやベッドインから始まる恋――。男女がスキンシップをとるのに言葉はいらない……では済まされない。

“あいまい”であることがよしとされてきた恋愛

しかし、この「性的同意を取る」という行為そのものを、今までしてこなかったという声も多い。前述した村田さんもその1人だ。

「『していい?』と聞くこと自体、ちょっと恥ずかしい気がして」

性的同意を取り付けずに、キスや性行為をする――。
 
それは多くの恋愛ドラマや少女漫画で描かれてきた。過去には「壁ドン」という言葉も流行し、突然キスをしたり、親密なスキンシップをとったりする演出がロマンチックなシーンとして登場してきた。
 
女性誌で長年恋愛記事を書いてきた筆者から見ても、このようなシーンを「恋愛の理想」として主張する女性は多かった。また、言葉での同意を取り付けず、ロマンチックなシチュエーションで自然とキスをしたり、スキンシップをとったりすることが、恋愛の醍醐味(だいごみ)であるという風潮もあり、それをポジティブに捉えている層が一定数いるのも事実だ。

恋愛ドラマや少女漫画における「同意なしのスキンシップ」の前提条件

ただし、フィクションの世界でロマンチックに描かれてきた恋愛ドラマや少女漫画における「同意なしのスキンシップ」には、忘れてはいけない“前提条件”がある。
 
それは、ヒロインが元から思いを寄せていた相手だった、もしくはそこに至るまでに互いのことをよく知り、信頼関係を築いた上での演出である場合がほとんどだということだ。

もちろん、信頼関係があるからと同意なく行為に及んでいいという考えはアップデートすべきであるし、ロマンチックだから言葉なしでOK、という認識は改めるべきであるが、恋愛ドラマや少女漫画で描かれるラブシーンは、前述の事件のように、SNSで出会い、その日のうちにホテルで体の関係に……といったコミュニケーション足らずの希薄な関係ではないことを認識しておくべきである。
 
昨今、不同意性交に関するニュースが増えている。その中には、SNSやアプリでの出会いがきっかけとなった男女のトラブルも多い。

「YES」「NO」のコミュニケーションが重要視される恋愛。その一方でSNSやマッチングアプリでの出会いが主流になり、男女のコミュニケーション不足が加速するというジレンマを抱えている。

この記事の筆者:毒島 サチコ プロフィール
ライター・インタビュアー。緻密な当事者インタビューや体験談、その背景にひそむ社会問題などを切り口に、複数のWebメディアやファッション誌でコラム、リポート、インタビュー、エッセイ記事などを担当。
最初から読む
 
Lineで送る Facebookでシェア
はてなブックマークに追加

編集部が選ぶおすすめ記事

注目の連載

  • 意外と知らないグルメのひみつ

    日本のにんにくは中国産が9割。「国産にんにく」と「中国産にんにく」の違いとは? 3つの産地で比較

  • ヒナタカの雑食系映画論

    都知事選を想起させる? 映画『もしも徳川家康が総理大臣になったら』の「大真面目な面白さ」を解説

  • 植草美幸の恋愛・結婚相談ー編集部選ー

    「彼氏と結婚したい!」25歳女性、「結婚なんかしなくていい」と言う気難しい父親の悩み相談

  • ここがヘンだよ、ニッポン企業

    性加害疑惑・伊東純也選手のプーマ広告が復活 「告発女性を逆に訴える」という対応はアリだったのか?