エスカレーションの意味とは? ビジネスにおける使い方やエスカレーションフローのポイントを解説

「エスカレーション」とは「段階的な拡大・激化」を意味し、ビジネスでは「下位の者が対応しきれない事態を上位の者へ報告・引き継ぎすること」として使われます。「エスカレーション」は「上司への報告」だけでなく、「引き継ぎ」までを含めた用語です。

エスカレーションの意味とは? ビジネスにおける使い方や例文、フローのポイントを解説
エスカレーションの意味とは? ビジネスにおける使い方や例文、フローのポイントを解説

「エスカレーション」は、小売業からIT業界までさまざまな業界で使われているビジネス用語です。

この記事では、エスカレーションの一般的な意味や定義、ビジネスシーン別の使い方や例文などについて現役フリーアナウンサーで日本語教師の阿部佳乃が解説していきます。

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<目次>
ビジネス用語「エスカレーション」の意味とは
ビジネスシーン別「エスカレーション」の使い方と例文
エスカレーションをスムーズに行うためのポイント
エスカレーションフローをつくるときの3つのポイント
まとめ

ビジネス用語「エスカレーション」の意味とは

「エスカレーション」とは「段階的な拡大・激化」を意味する語です。ビジネス用語としては「下位の者が、対応しきれない事態を上位の者へ報告・引き継ぎすること」として使われます。想像しやすいのはクレーム対応ではないでしょうか。「上の者へ代わらせていただきます」というのが、まさにエスカレーションです。多くの場合、エスカレーションはマニュアル化されており、これを「エスカレーションフロー」と呼びます。

また、「エスカレーション」を「上司への報告」として使っているケースがありますが、これは誤用です。「引き継ぎ」までを含めた用語である点に注意しましょう。

ビジネスシーン別「エスカレーション」の使い方と例文

「エスカレーション」はさまざまな業界で使われていますが、ここでは特に主要な以下3つの業界について見ていきましょう。

コールセンター

コールセンターは、顧客とのコミュニケーションが電話越しです。他業種よりもスムーズなエスカレーションが求められるでしょう。基本的には広くマニュアル化されており、顧客が不満を伝えた時点で、問題によって担当オペレーターはより深い専門知識や権限を持つ人へエスカレーションします。エスカレーション先のスキルはもちろんですが、エスカレーションするオペレーター側も、適切な判断力や報告力が求められます。

【例文】「FAQでカバーされていない問い合わせが来たため、回答対応をエスカレーションした」
    「エスカレーション先の担当者を誰にするか、事前に決めておきたい」
    「エスカレーションすべきか判断に迷ってしまった」

IT業界(SE)

IT業界におけるエスカレーションは、技術的に問題や課題が解決できない場合が多いでしょう。例えば、システムの障害やセキュリティー上の脆弱(ぜいじゃく)性が発生した場合、担当者は問題をエスカレーションし、より上位の技術者やマネージャーにサポートを依頼します。一時的な問題だけでなく、開発途中に出る技術課題や重要なプロジェクトの遅延などへの対処法としても利用されます。より高度な知識を持つ専門家が関与することで、問題解決の効率化や迅速な対応が図られるわけです。また、知識だけでなく経験によっても対応の可否は異なります。

【例文】「深刻なシステム障害が起こったため、エスカレーションした」
    「過去に事例があったため、現場社員がエスカレーション対応をした」
    「この問題はどのレベルまでエスカレーションしたらいいんだっけ」

小売業

小売業では、対面接客であることや売り物の多様さから、問題や困難のバリエーションも多い傾向にあります。顧客からの不満やクレームの内容によっては、店舗スタッフは店長を飛び越え、本部や地区マネージャーへ問題をエスカレーションすることもあるでしょう。また、店長へのエスカレーション例としては、在庫管理や物流の問題、価格設定などが挙げられます。

【例文】「店内が不衛生だとクレームを受けたため、店長へエスカレーションした」
    「エスカレーションはスムーズかを研修で確認した」
    「珍しいクレームが入ったため、本部の人間へエスカレーションした」

エスカレーションをスムーズに行うためのポイント

トラブルが拡大するのを避けるための対策として行うのがエスカレーションですが、残念ながらエスカレーションがうまくいかなかったり、さらなる状況の悪化を招くということも珍しくありません。中でも多いのが、トラブルの原因がこちら側にあることが明白な場合、上司に責められるのが嫌で部下がエスカレーションしないというケースです。これでは、上司がトラブルを正しく把握できず、大事に至ってしまっても仕方ありません。そうした状況を防ぐためにも、以下のようなポイントに着目し、常に円滑なエスカレーションが行われる環境を整備しておくことが求められます。

エスカレーションすることをルール化しておく

エスカレーションについて明確なルールがない場合、何かが起きた際の判断は本人に任されることになります。これではエスカレーションする人としない人が現れたり、誰にエスカレーションすべきか判断できなかったりといった状況に陥ってしまいます。適切なエスカレーションをしてトラブルを未然に防ぐためにも、事前に引き継ぎ時のルールを決めておき、社内で周知しておくと安心です。

エスカレーションフローを設定する

問題発生後、エスカレーションするまでの流れをシステム化したものを「エスカレーションフロー」といいます。トラブルの種類ごとに「これ以上は上司に引き継ぐ」というようにボーダーラインを決め、どのようなルートでエスカレーションするかという道筋も、具体的に設定しておきます。そうすることで、万が一の際もそれぞれが落ち着いて対応できるようになります。

担当者に責任を問わない

現場の担当者が上司に報告したことで、のちに担当者が怒られたり、責任を取らされたりするケースがあります。しかし、それではますます現場スタッフがエスカレーションしづらい環境になってしまいます。円滑なエスカレーションのためには「担当者に責任を問わないこと」が大前提です。トラブルの拡大を引き起こさないために、企業側もエスカレーションしやすい環境づくりを心がけましょう。

エスカレーションフローをつくるときの3つのポイント

インシデントをレベル分けして優先度を決める

エスカレーションフローは、その名の通り単なるマニュアルではなく「フロー(流れ)」です。そのため、レベル分けが重要なポイントといえます。インシデントを適切にレベル分けし、優先度を設定することで、エスカレーションの優先順位や対応時間を明確化できるでしょう。

例えば、軽微な問題や一時的な障害は低レベルに分類し、通常のサポートチームで対応する。一方、重大なシステム障害やセキュリティー侵害は高レベルに分類し、即座に上位の専門家や管理職にエスカレーションする。このようにレベル分けすることで、問題への迅速な対応が実現します。ひいては、ビジネスの継続性や顧客満足度の向上にもつながるでしょう。

報告手段とルートを設定する

「問題への迅速な対応」という意味では、あらかじめ報告手段とルートを設定しておくこともポイントの1つです。具体的には、メール、電話、チャット、チケット管理システムなどが挙げられます。報告手段は、混乱を避けるために統一しても良いですが、利便性や緊急度に応じて選択できるとベストでしょう。

報告ルートも、問題の種類や重要度に応じて設定してください。一般的なルートは直接上司や専門部署に報告することですが、複数の重要な担当者へ同時に報告することも視野に入れると良いでしょう。

エスカレーションの記録をデータベース化する

エスカレーションフローは、都度更新されていくのが理想です。エスカレーションフローにない問題が起きた際、ベストなエスカレーションをデータとしてフローに組み込みましょう。これにより、同じような問題が再発した場合にも的確な対応が可能となります。その際、問題の内容とエスカレーション先だけでなく、進捗(しんちょく)や関係者なども詳細に記録し、データベースに保管してください。また、エスカレーションの経緯や担当者の関与などが明確になるため、責任の所在を明確化できる利点もあります。

さらに、データベースに蓄積された記録を分析することで、エスカレーションの傾向やパターンを把握し、将来の問題予知やプロセス改善に役立てられるでしょう。

まとめ

ビジネスにおける「エスカレーション」とは、「下位の者が、対応しきれない事態を上位の者へ報告・引き継ぎすること」です。大本の意味は同じですが、業界によってエスカレーションの過程・傾向は異なるでしょう。エスカレーションは、スムーズに業務を進めるためだけでなく、顧客満足度にも直結する要素です。

そのため、適切なタイミングや手法、判断や報告のルールなどを、事前に「エスカレーションフロー」として明確にしておきましょう。その際は「インシデントをレベル分けして優先度を決めること」「報告手段とルートを設定する」「エスカレーションの記録をデータベース化する」の3点を意識してみてください。

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