「退勤間際の無茶ぶりは私への嫌がらせ?」苦手なパワハラ上司が実は“悪役スター”だった話

職場に、どうしても気が合わない苦手な人はいませんか? その人に対する見方を変えることで、不思議と関係が良くなったり、苦手ではなくなったりすることも……。そんな「魔法のようなマインドセット」を具体事例とともにお伝えします。

退勤間際に業務を無茶ぶりする上司と戦うべき?
退勤間際に業務を無茶ぶりする上司に振り回され続ける……戦うべき?
職場に、どうしても気が合わない同僚や上司はいませんか? 人に対する見方が変わると、不思議なことに、その人との関係が良くなったり、苦手ではなくなったりします。そんな魔法のようなマインドセットをお伝えします。

「苦手な人」を回避することは不可能

仕事をする上で、人間関係の悩みは尽きないものですよね。自分が選んだ人とだけ仕事ができればいいですが、会社組織ではそうもいきません。あなたはどんな人が苦手でしょうか?

・上から目線で命令ばかりする上司
・不明瞭かつあいまいな指示で振り回す上司
・人の悪口ばかりを言ってくる同僚
・マイルールを押し付けてくる同僚
・仕事を依頼しても目を合わさず、太々しい態度の部下
・目の前にいるのにLINEやメールで連絡してくる部下
・神様扱いは当然とばかりに横柄な態度をとるお客さま
・接客待ちのお客さまが他にいるのに時間泥棒してくるお客さま

……こんな人たちと、どう接したらいいのでしょう。

【事例】わざと? 退勤間際に仕事を無茶ぶりするパワハラ上司

30代の相談者から筆者に寄せられた事例とともに、攻略法を考えます。

今回の相談者:30代女性(接客業)
「思いつきで仕事を振ってくる男性上司に振り回され続けています。その上司は、お客さまの前では愛想がいいのですが、私がバックヤードで事務作業をしていると『あっ、そうそう、これも頼むよ』と仕事を押し付けてくるのです。定時で帰ろうとする私の姿に気付き、すかさず大量の仕事を振ってきます。

泣く泣く予定をキャンセルして残業するなどということが何度もあり、困っています。どうしたらいいですか?」

>職場のハラスメントで最も多いのは?

苦手な相手に「やってはいけない」こと

これはたまりませんね。ただ、自分自身の対応を変えることで、相手の反応が変わる場合もあります。

まず、苦手な相手と戦おうとしないことです。応戦する時点で相手と同レベルになってしまうので、「成長した自分だったらどう接するか」を考えて行動してみましょう。

そして、陰で悪口を言わないこと。悪口を聞かされる人は、「この人は、こうやって自分のことも陰で悪く言っているかもしれない」と感じ、あなたのことを信用できなくなるかもしれません。下記は、1984年にノーベル平和賞を受賞した“反アパルトヘイト”人権活動家デズモント・ツツ大主教の言葉です。

「神さまは人間のことをよく知っているから、嫌いな人を好きになれとはおっしゃらない。しかし、嫌いな人を愛しなさいとおっしゃる」(月刊『致知』2019年12月号より)

どんなに嫌いな人でも「人を呪わば穴二つ」、自分に返ってきます。好きになれないとしても、人を恨んだり憎んだりするより、“成長した自分”として相手の幸せを願いましょう。

苦手な相手に「やってみる」と効果的なこと

次に、苦手な相手に対して実践してほしいことがあります。「相手の背景を考える」ということです。

例えば、上から目線の命令ばかりする上司に対して「もしかしたら、家では肩身の狭い思いをしているのかも。職場でしか威張れないのかもしれない」と思ってみる。

また、「本当は『俺の思いは普通に言っては伝わらない』と思っているからこそ、力んで威圧的・強制的になってしまうのかも」「そのような指示の出し方しか知らないのかも」などと、背景を想像しながら少しでも相手を理解しようとしてみるのです。

実際、上から目線でコミュニケーションを図る人ほど、「人は自分のことを分かってはくれない」という深層心理が存在していることがよくあります。

パワハラ上司攻略術を実践した結果……

上司からの退勤間際の無茶振り仕事に困り果てていた30代女性に対して筆者は、上記のような攻略法とともに、「その上司のことを好きにならなくてもいいです。ただ、上司の仕事がうまくいきますようにと祈ってあげてください」とアドバイスしました。

すると後日、不思議なことが起きたのです!

誰に対しても威圧的で、いつも眉間にしわを寄せ威張り散らしていた上司が、彼女の前では明らかに優しくなったというのです。自分を理解してくれようとしているということを感じ取ったのかもしれません。そして、さらに彼女自身にも変化が訪れます。

日ごろ人間関係で嫌な思いをしていても、いつも「しょうがない」と我慢している自分の考え癖を認識した彼女は、結果的にそれを気付かせてくれたパワハラ上司へ、感謝の気持ちが芽生えたといいます。

実は、嫌な人ほど「悪役スター」かも?

その後、上司の異動に伴い一緒に働くことはなくなったそうですが、出会う人は、出会う必要があるからこそ、目の前にいると考えてみてください。その人があなたに対して役割を果たすと、いろいろな形であなたの前から去っていきます。

一方、あなたが嫌な相手を「嫌な人」とだけ捉えていたら、ずっとずっとあなたの前に居続けるかもしれません。実は、嫌な人ほど「悪役スター」としてあなたの前に現れ、あなたを成長させてくれる存在になりうるのです。

そこに気付くと、嫌な人に対して愚痴を吐くのではなく、「自分に何を教えてくれているのか」に目を向けて、自分を成長させることができます。

「相手と過去は変えられない。自分と未来は変えられる」という、交流分析を提唱したカナダ出身の精神科医エリック・バーンの名言にもあるように、相手はなかなか変わりません。自分から変わっていきましょう。
この記事の筆者:市川 浩子
両想いビジネスコンサルタント/一般社団法人ジャパングッドリレーションアカデミー代表理事。1万人に断られた営業時代の経験から心理学・脳科学等を学び、新規開拓数No.1に。著書『相手に「やりたい!」「ほしい!」「挑戦したい!」と思わせるムズムズ仕事術』(あさ出版)
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