パラダイムとは? 意味やパラダイムシフトの例、ビジネスシーンで求められる背景をわかりやすく

「パラダイム」とは「特定の分野で規範となる物の見方、捉え方」という意味で、ビジネスシーンでは、「ある時代において、当たり前になっている考え」や「ひとつの時代において特徴的な価値観」などを意味します。「パラダイムシフト」は、ある時期に当たり前だとされていたことが大きく転換することや、ある時代における常識が覆されるような大きな変革のことを指します。

パラダイムの意味とは
パラダイムの意味を解説

近年、多様性を重視する価値観への変化や、コロナ禍を経ての生活様式の変化、生成AIをはじめとする目覚ましい技術の発展など、多くの変革が起きる中で、「パラダイム」や「パラダイムシフト」といった言葉を耳にする機会が増えています。

今回は「パラダイム」の意味や、「パラダイムシフト」の例、「パラダイムシフト」がビジネスシーンで注目される背景などを、フリーアナウンサーで日本語教師の阿部佳乃が解説します。

<目次>
「パラダイム」の意味とは?
「パラダイムシフト」の意味とは?
「パラダイムシフト」が注目を集めている理由は?
近年における「パラダイムシフト」の例
「パラダイムシフト」に対応できる人材のイメージ
まとめ

「パラダイム」の意味とは?

「パラダイム」とは英語の「Paradigm」に由来する言葉で、「特定の分野で規範となる物の見方、捉え方」という意味があります。

ギリシャ語で「手本」や「規範」という意味のある「paradeigma」が語源となっている言葉で、1962年にアメリカの科学哲学者トーマス・クーンが著書の中で、「広く人々に受け入れられている科学的な業績で、一時期の間、科学者に対して問い方や答え方の手本を示すもの」と定義しました。当時は、科学の分野で、「研究の土台となる前提」を表す言葉として使われましたが、時代の流れとともに意味も変化し、現在ではさまざまな分野で使われるようになりました。
 

・ビジネスシーンにおける「パラダイム」の使い方
ビジネスシーンで「パラダイム」という言葉が使われる場合は、「ある時代において、当たり前になっている考え」や、「ひとつの時代において特徴的な価値観」などを意味します。

多くの人が当たり前に持っている共通の認識や考え方のことで、「模範」や「常識」「慣習」などとも言い換えられます。多様化する社会の中で「当たり前」や「常識」が問い直される近年においては、ビジネスにおいても「パラダイム」とは、何であるかを正確に捉えることは非常に重要です。また、それまでの常識が大きく変わるような転換点を迎えた時には、「パラダイムシフト」という言葉で表現されることもあります。

「パラダイムシフト」の意味とは?

「パラダイムシフト(paradigm shift)」とは、「パラダイム」に「変わる・移る」という意味のある「shift」を合わせた言葉です。ある時期に当たり前だとされていたことが大きく転換することや、ある時代における常識が覆されるような大きな変革のことを指します。

世界で最も有名なパラダイムシフトの例としては、コペルニクスの「天動説」から「地動説」への転換があります。また、移動手段に目を向けても、馬車や蒸気機関車から自動車や電車への変革、さらには飛行機の発明など、人類の歴史の中で多くの「パラダイムシフト」が起きています。

「パラダイムシフト」が注目を集めている理由は?

世の中が目まぐるしく移り変わっていく現代において、「パラダイムシフト」は大きく注目されています。ここからは、「パラダイムシフト」が注目されるようになった背景をいくつか見ていきます。
 

・グローバル化が進んでいる
まずは「グローバル化」です。科学技術の発展で情報の伝達速度が飛躍的に上昇したことにより、国内だけではなく世界中の情報に瞬時にアクセスできるようになりました。異なる地域の文化や価値観に触れることで新たな価値観が生まれたり、各分野における最先端の情報が分かるようになることで変化が促されたりしています。また、1つの国の中での常識に縛られず、世界のどこでも通用するグローバルスタンダードの考え方を身に付ける重要性が高まり、それまでの考え方、常識を大きく変える必要に迫られる場面も増えています。
 

・デジタル技術の進歩
現代の生活とデジタル技術は、切っても切れないほど深く結び付いています。技術の発展にともなって私たちの生活は大きく変わり、常識も変わってきました。例えば、インターネットが発明されたことにより、いつでも世界のさまざまな情報にアクセスできるようになったほか、離れた場所とのコミュニケーションの方法も、手紙や電話から、メールやチャットへと変化していきました。

また、スマートフォンの登場によって変化はさらに加速しました。スマホは、コミュニケーションのツールにとどまらず、情報の取得、ゲームや動画などの娯楽、金融サービス、ビジネスツール、SNSなどのアプリを使うことで、多様な役割を担えるようになりました。近年話題となっている生成AIをはじめとするAI技術も、これまで人の手を必要としてきた作業や仕事を機械が代替できる技術として注目され、「パラダイムシフト」を起こしつつあります。
 

・新型コロナウイルス感染症がきっかけ
新型コロナウイルス感染症による、いわゆる「コロナ禍」も私たちの生活を一変させました。感染予防の観点から非接触が推奨され、それまで対面で行ってきたコミュニケーションが制限されただけでなく、働き方や、企業が提供するサービスも大きく変わりました。

また、店舗を利用せずインターネット上で商品を売買することは現在では一般的になったほか、現金を使わない電子決済も浸透しました。コンサートや講演会、イベント、企業面接などのオンライン上での開催も、コロナ禍を経て新たに確立されたものです。

近年における「パラダイムシフト」の例

ここからは、近年の代表的な「パラダイムシフト」の例を見ていきます。
 

・シェアリングサービス
まず挙げられるのは「シェアリングサービス」の普及です。モノを個人で所有するという価値観から、他人と共有し、必要な時に必要なだけ使うという価値観へ変化したことにより、さまざまなシェアリングサービスが生まれました。カーシェアリングや、シェアオフィス、シェアハウスなど、個人で所有したり利用したりするには高額なものを他人と共有するサービスだけでなく、傘やモバイルバッテリー、自転車など、常に必要なわけではないもののとっさに必要になることのあるものをシェアするサービスも増えています。

また、政府が推進する「シェアリングエコノミー」では、企業が提供するサービスにとどまらず、個人の資産のシェアも想定していて、空き部屋を民泊として貸し出す「場所のシェア」や、空いた時間に家事や子守りなどを代行する「時間・スキルのシェア」、クラウドファンディングのような「お金のシェア」など、さまざまな分野でのシェアリングサービスが生まれています。
 

・多様化した働き方
高度経済成長期に確立された、新卒の一括採用や終身雇用、年功序列型の組織といった「日本型雇用」と呼ばれる雇用形態は、バブルの崩壊や少子高齢化の加速によって変わりつつあります。過剰な時間外労働の是正や、産休・育休制度の充実など、ワークライフバランスを重視した働き方が求められるようになったほか、先を見据えて学び直しを行うリスキリングや、転職によるキャリア形成、定年後の再雇用なども一般的になってきました。

1つの企業に生涯勤めあげ、定年後は悠々自適の老後を過ごす、というかつてのモデルは失われつつあります。また、コロナ禍を経て、出社を前提としない働き方も浸透しました。リモートワークやワーケーション、ノマドワークといった場所や時間を選ばない働き方が増えたほか、本社を都市部から地方に移転したり、オフィスそのものを持たない選択をしたりする企業も増えつつあります。

「パラダイムシフト」に対応できる人材のイメージ

それまでの常識が大きく変わる「パラダイムシフト」。近年、技術の進歩や情勢の変化によって、その言葉の注目度が高まっています。では、どのような人材が「パラダイムシフト」に柔軟に対応できるのでしょうか。
 

・新しい物事へ順応する力がある
1番大切なのは、変化を受け入れ、新しい物事に順応する能力です。変化を受け入れるためには、変化に敏感である必要があります。固定化された視点しか持ち合わせていないと変化に気付きにくくなります。多角的な視点を持ち、新しい流れを敏感に感じとること、また、それに伴って必要となる新しい知識や価値観、技術を積極的に取り入れる姿勢を持つことも重要です。

過去の経験や実績に固執しすぎると新しい展開についていけなくなってしまいます。時世に合わせて、必要とされているものを感じ取り、自分自身を絶えず変化させて対応していく力が求められます。
 

・行動力がありイノベーションを起こせる
考え方の柔軟性に加えて、それを形にするための行動力も必要です。「パラダイムシフト」が起きる局面では、それまでの常識は通用しなくなり、新しいスタンダードが作られていきます。まだ誰も見たことのない、踏み込んだことのない領域に積極的に一歩を踏み出す力が求められます。

過去の成功体験に基づいた行動しかできないと、新しい領域を開拓することはできません。それまでの常識から外れたことであっても、思い切って行動に起こすことで、新たなイノベーションを起こせます。
 

・多様性(ダイバーシティ)を活用するコミュニケーションスキル
自分自身の考えや価値観に固執せず、さまざまな価値観を身に付けるために、コミュニケーションスキルも重要です。自分とは立場や考え方の違う人の意見でも、頭ごなしに否定したり拒絶したりせずに、耳を貸し、参考にすることで、広い視野を持つことができます。

近年では、組織の採用においても、多様性が重視されるようになってきました。さまざまなバックグラウンドを持つメンバーと良好な関係を築き、新しい挑戦をするためにも、互いの立場や価値観を認め合えるコミュニケーションスキルが必要です。

関連記事:ダイバーシティの意味とは? インクルージョンとの違いや推進方法、企業事例を解説

まとめ

ある時代において多くの人が共通の認識として持つ常識や前提のことを「パラダイム」と言います。このパラダイムが大きく変化する「パラダイムシフト」は近年さまざまな分野で起こりつつあり、ビジネスにおいてはこの変化に柔軟に対応することが求められます。

昔も今も、当たり前だと思っていた常識は、日々変わっていくのでしょう。コロナ禍を経て、この機会に「パラダイム」や「パラダイムシフト」の正しい意味をあらためて確認するとともに、パラダイムシフトに対応できる柔軟な姿勢を意識してみてはいかがでしょうか。
 

■執筆者プロフィール

阿部佳乃

阿部 佳乃(あべ よしの)
アナウンサー×日本語教師/元TBSテレビあさチャン!報道リポーター。大学卒業後、佐渡ケーブルテレビを経て、UX新潟テレビ21/NHK水戸放送局キャスター/とちぎテレビアナウンサー。現在は、アナウンス講師、ナレーター、イベント司会等、フリーランスで活動しながら、大学や日本語学校で留学生に「日本語」を教えている。趣味は、旅行(47都道府県制覇)と声楽、読書。

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