「デフォルト」は、今やさまざまな場面で使われる言葉です。しかし、使われる場面や業界によって、そのニュアンスは大きく異なります。そこで今回は、デフォルトの原義や日常生活における意味、業界ごとの使い方と例文などについて現役フリーアナウンサーの酒井千佳が解説していきます。
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＜目次＞
・「デフォルト」の意味とは
・日常生活における「デフォルト」の使い方と例文
・金融・経済業界における「デフォルト」の使い方と例文
・IT業界における「デフォルト」の使い方と例文
・スポーツ業界における「デフォルト」の使い方と例文
・まとめ
「デフォルト」の意味とは
「デフォルト」は、一般的に「基本的な状況・初期状態・標準設定」といった意味で使われる言葉です。ほかにも「債務不履行（特に、国家が累積債務を返済できなくなること）」や「コンピューターにおいて、ユーザーが特に指定していない場合に設定されている標準の動作条件」などを指すこともあります。英語での「default」は「de（完全に）」と「fault（不足）」からなる語で、「不出場・欠場・棄権」「不履行・怠慢」「初期値・通常の方法」などを意味します。どちらも「初期状態・標準設定」といった意味はありますが、原義からは遠いように思えるでしょう。
これはコンピューターにおけるプログラミングが関係していると考えられており、「完全に不足している → どの条件も満たさない → 何もしていない初期の標準値」と、意味が派生したという説が有力です。実際、ポピュラーなプログラミング言語の1つ「C言語」では、「どの条件も満たさなかった場合の処理」を「default」部に記載します。
日常生活における「デフォルト」の使い方と例文
日常生活における「デフォルト」は、多く「普通・標準であること」「初期状態であること」を意味します。また、人に対して使う場合もあり、こちらも「標準」「いつもそうであること」「当たり前であること」などを意味します。【例文】
「このスマートフォンはデフォルトだと通知がうるさいから、設定画面で通知音を下げた方がいいよ」
「この加湿器にはカートリッジがデフォルトで付いています」
「『今日は眠い』と言っていたけど、君は眠いのがデフォルトじゃないか」
金融・経済業界における「デフォルト」の使い方と例文
金融・経済業界における「デフォルト」は、多く「債務不履行」を意味します。日常生活ではそれほど多くは使わない意味ですが、金融・経済業界で生きる人にはもちろんのこと、ニュースや世相を深く見つめる際には必ず知っておかなければいけない使い方です。【例文】
「例の銀行が経営難でデフォルトの危機に瀕している」
IT業界における「デフォルト」の使い方と例文
先述したように、「デフォルト」という言葉は、たびたびコンピューターやプログラミングの世界で使われてきました。そのため、IT業界における「デフォルト」は、一義に定まらず、さまざまな意味合いを持ちます。ここでは、以下の3つを紹介します。「初期設定」の意味合いで使う場合
「デフォルト効果」
「デフォルト値」
それぞれ見ていきましょう。
・「初期設定」の意味合いで使う場合
IT業界で「デフォルト」を「初期設定」の意味合いで使う場合、システムやソフトウェアが最初に設定される状態や標準の設定を指します。新たに導入されるソフトウェアやデバイスも、通常は消費者に提供される状態を「デフォルト」と呼びます。ただし、これは仕様を指すことが多く、バグはその限りではありません。
デフォルトのメリットは、ユーザーが設定変更を行わずとも、システムやソフトウェアが使用可能である点です。実際、デフォルトの設定は、システムやソフトウェアを素早く操作できるように設計されていることがほとんどです。
例えば、Webブラウザのホームページや検索エンジンもデフォルトが設定された状態で出荷されます。もちろん、その後ユーザーが自身の好みやニーズに合わせて設定変更を行うこともできますが、複雑なIT業界における「デフォルト」のシステム設定は、利用者の作業効率を高めているといえるでしょう。
【例文】
「この会社のスマートフォンは、ゲームアプリがデフォルトで2種類インストールされている」
・「デフォルト効果」
「デフォルト効果」とは、「人は最初に提示された標準状態を、その後に提示されるよりも受け入れやすい」という心理現象を指す言葉です。デフォルト効果は元々心理学分野の言葉ですが、IT業界をはじめとしたマーケティング業界において、ユーザーの行動や意思決定に影響を与える重要な要素として認知されています。
IT業界では「ユーザーが何も選択せず、システムやアプリケーションのデフォルト設定のまま利用する傾向がある」という旨を指します。「現状維持バイアス」の一種で、これは人が決断をする際に、手間や労力を避けたり、既定の選択肢が合理的だと考えたりする傾向があるためではないかとされています。
IT業界では、このデフォルト設定が重要な役割を果たします。例えば、ソフトウェアのインストール時にデフォルトのチェックボックスがオンになっている場合、多くのユーザーはそのまま進んでしまう傾向があります。これを利用して、IT企業や開発者はユーザーの行動を誘導できるわけです。具体的には、プライバシー設定のデフォルトを厳しくすることで、ユーザーの個人情報保護を強化できるなどが挙げられます。逆に、デフォルト設定が利益最大化につながるような設定になっている場合、ユーザーはそのまま利用してしまうでしょう。
【例文】
「デフォルト効果を狙って、トラッキング設定はデフォルトでオンにしておこう」
・「デフォルト値」
「デフォルト値」とは、あるパラメータや変数が明示的に指定されていない場合に設定される値のことを指します。プログラミングにおいては、関数やメソッドの引数にはデフォルト値を設定することが一般的です。これにより、引数が省略された場合や値が与えられなかった場合にデフォルト値が自動で使用され、プログラムの柔軟性を高めるのです。
例えば、ある関数に引数として整数を渡す必要があるとします。しかし、特定の場合には明示的に値を指定しないこともあります。このとき、引数にデフォルト値を設定しておけば、値が渡されなかった場合でもプログラムはエラーを出さずに処理を続行できます。
【例文】
「このプログラムのバグの原因は、デフォルト値を設定していなかったことにある」
スポーツ業界における「デフォルト」の使い方と例文
スポーツの分野においても、特有の意味を持った「デフォルト」が使われることがあります。特に試合や大会などのシーンで「不出場・欠場・棄権」という意味で使われます。つまり、選手やチームが予定された試合や大会に参加しない状況です。なお、予選での敗退が理由で本戦に不出場の場合など、出場権をそもそも得られていない場合には使われません。いわば「出場するべきにもかかわらず出場しないこと」であり、英語の「default」の意味の1つ「怠慢」のニュアンスを含んでいると考えると分かりやすいかもしれません。
【例文】
「去年、準優勝したあのチームが、今年はデフォルトしたらしい」
もちろん、スポーツ分野での会話でも、「標準」「定番」「よく見られる」といった意味で使われることがあります。
【例文】
「相手チームの監督は守り重視の戦術がデフォルトだ」
スポーツ分野で「デフォルト」という言葉が使われる場合は、文脈やシーンによって意味が変わることを念頭に置いておいてください。選手やチームの不出場や欠席を指す場合と、一般的なプレースタイルなどを指す場合の使い方があるため、その時々で正しく意味を把握しましょう。
まとめ
「デフォルト」とは、「基本的な状況・初期状態・標準設定」などの意味で使われる言葉です。ほかにも「債務不履行」の意味があり、金融業界などでたびたび使われます。スポーツ業界においては「不出場・欠場・棄権」などの意味を持ちます。IT業界では頻出する言葉でありながら、その使い方も派生の仕方によって大きく異なるため、文脈に合わせて使い分けましょう。
■執筆者プロフィール
フリーキャスター、気象予報士、保育士。京都大学 工学部建築学科卒業。北陸放送アナウンサー、テレビ大阪アナウンサーを経て2012年よりフリーキャスターに。NHK「おはよう日本」、フジテレビ「Live news it」、読売テレビ「ミヤネ屋」などで気象キャスターを務めた。現在は株式会社トウキト代表として陶芸の普及に努めているほか、2歳からの空の教室「そらり」を主宰、子どもの防災教育にも携わっている。
