日本一の若手漫才師を決める大会であるM-1グランプリ2023の決勝で、令和ロマンが史上最多8540組の頂点となる第19代王者に輝きました。
第1回大会の中川家以来22年ぶり! トップバッターからの優勝
令和ロマンは、吉本興業に所属する高比良くるまさんと松井ケムリさんのコンビ。東京NSC23期を首席で卒業し、結成5年で初めてM-1決勝の舞台に立つことになりました。※高は、はしごだかABCお笑いグランプリで2年連続準優勝、M-1グランプリも昨年の敗者復活戦で2位と着実に結果を積み上げて迎えた本大会。視聴者が上位3組を予想する「M-1三連単」の人気ランキングでも決勝経験組であるさや香と真空ジェシカに挟まれての2位。名実ともに優勝候補の一角とされていました。
トップバッターとしては歴代最高得点となる648点を獲得し、2001年の中川家以来22年ぶりとなるトップバッターからの優勝を成し遂げました。
これで人生1周目ってマ!? 最年少&初決勝とは思えない貫禄と戦略
トップバッターになってしまった令和ロマンは、決勝進出を決めた準決勝でやったものとは違うネタを選択し、見ていたファンを驚かせました。決勝後の大反省会では「トップバッターになったので、全部で4本用意していた中からしゃべくり漫才にして、お客さんに話しかけるツカミをしっかりやった」「出番がしゃべくり漫才の人の後なら漫才コント、逆に漫才コントの後ならしゃべくり漫才をと考えていた」という戦略を語り、それを聞いた歴代のチャンピオンたちをも驚かせました。
出番順でネタを変えると言えば、2020年優勝のマヂカルラブリーがギリギリまで悩んだ末に準決勝で披露した勝負ネタの「吊り革」を温存したことが話題になりましたが、4本も用意したコンビは他にいないのではないでしょうか。
慶應義塾大学のお笑いサークル出身の高学歴コンビであり、自身のYouTubeでホワイトボードいっぱいに事細かく分析する「M-1オタク」である令和ロマンらしい戦略ですが、初めての決勝の舞台でそれを完遂できる実力と心の強さは並大抵ではありません。これで人生1周目ってうそでしょ……!?
史上初の連覇も夢じゃない!? 前人未到の「2周目クリア」へ
大反省会で「トップバッターの自分たちが基準点になって大会全体の得点が低くなったのが申し訳ないと思った」と語る2人からは、人生の懸かった大舞台とは思えない、自分たちを俯瞰で見ているような余裕が感じられました。ネタ前のVTRでは各コンビに聞いた「一言でいうと自分たちとは?」が紹介されていましたが、ヤーレンズなら「おしゃべり。」、さや香なら「ほぼケンカ」など、コンビの関係性やネタの特徴を示したものが多い中で、令和ロマンの場合は「他人事。」でした。
まるで、M-1というゲームが大好きで、勝つために緻密な戦略を立て、失敗しても死ぬわけじゃないという心持ちで、思いっきり楽しもうとするゲーマーのように。
優勝した気持ちを聞かれて「来年も出ます」と即答し、早くも連覇を狙う宣言が場を沸かせましたが、2人にしてみたら当然の答えでしょう。
いきなりクリアできちゃって、もちろんうれしいけど、まだまだ楽しみ足りない。今回やらなかったあのネタを武器に戦ったらどうなるだろう。次は難易度も上がるだろうから面白そうだな。今年から実装された新しい敗者復活戦も出てみたいし!
まさに、エンディングムービーもそこそこにスキップして、2周目プレイを立て続けに始めるゲーマーのようでした。
人生というゲームが2周目みたいな彼らなら、M-1というゲームも前人未到の「2周目クリア」は決して夢ではないでしょう。果たして、彼らを止める裏ボスは現れるのか? もしそうだとしたら、それは一体誰になるのか?
来年のM-1グランプリが、今から楽しみです。
この記事の筆者:石川 カズキ
1984年沖縄県生まれ。筑波大学人間学類卒業後、会社員を経て芸人・作家・コピーライターに。エレキコミック・ラーメンズを輩出した芸能事務所トゥインクル・コーポレーション所属。第60回宣伝会議賞コピーゴールド受賞、LOFT公式YouTubeチャンネル『コントするイシカワくん』シリーズのコント台本・出演、KNBラジオCMコンテスト2020・2023協賛社賞受賞など。お仕事あればお気軽にご連絡ください。AIから仕事を奪うのが目標です。