PTAが保護者や教職員本人の意向にかかわらず、「必ず参加しなければならないもの」と思われてきた原因の大本に、個人情報の取り扱いの問題があるからです。
PTAは学校の取り組みの一部だと錯覚させるカラクリ
日本のPTAはよく「入会を申込む」という仕組みナシで運営していますが、なぜそんな超能力みたいなことができるのかというと、保護者や教職員を勝手に会員として扱っているから。つまり、学校が持つ個人情報をPTAのことで使っているからです。一般的な団体は、加入申込ナシの運営などできようがありません。スポーツクラブでも手話サークルでも、入会を申し込む際に本人が名前や連絡先を伝え、団体はその人を会員にします。もし団体がどこかの学校の名簿を入手して「あなた方はうちの会員です」などと言い出したら、大騒ぎになるでしょう。
それがなぜ、PTAだと騒ぎにならないのか? それは「PTAと学校は別の団体だ」と気付かない人が多いから。逆にいうと、子どもが学校に入ると自動的にPTA会員として扱われるため、保護者たちはPTAを学校の一部と錯覚してしまうわけです。
ですから、加入申込の仕組みがないPTAでは、一見会員がいるように見えても、実は誰も会員がいない、という見方もできるかもしれません。
法律は個人情報の正しい入手を求めている
このようなやり方は、やはり法的にも問題があります。2017年に施行された改正個人情報保護法でPTAも対象事業者に含まれたので(それまでは小さい団体は適用除外だったのですが、その除外がなくなりました)、この法律を守らなければなりません。では、この法律が何を求めているのかというと、要は「個人情報は正しく入手してね」ということ。利用目的をちゃんと特定して明示した上で集め、もし第三者(他団体)から提供を受けるなら本人にちゃんと同意をもらう必要があるわけです。
そのため最近は、個人情報の取り扱いに関するルールを定めるPTAや、PTAへの個人情報の提供について保護者に同意をとる学校も増えてきました。また自治体によっては教育委員会が通知を出し、校長に個人情報の適切な取り扱いを求める例もあちこちで見かけます。
たまに「学校から『名簿』そのものをもらっていないからOK」「使っているのはPTA会員でもある教員だからセーフ」といった説を聞きますが、そんなことはありません。学校運営のために集めた個人情報を、PTAという別団体のために使っていることに変わりないからです。
個人情報の取り扱いの問題を抱えるのは、学校とPTAだけではありません。地域によっては子ども会や自治会が登校班の編成を行っており、学校が新入生の住所・氏名などを渡しています。もちろんこれもPTAの場合と同様の問題があります。