校長が守秘義務違反の疑いで書類送検されるケースも
そのような中、最近は学校が持つ個人情報を保護者に無断でPTAに伝えたことで、校長が地方公務員法(守秘義務)違反の疑いで書類送検されるケースも見かけるようになりました。<地方公務員法>34条(秘密を守る義務) 職員は、職務上知り得た秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後も、また、同様とする。
例えば2021年には、大分市の保護者が校長を刑事告発しています。不起訴となりましたが、これを機に福岡県や北九州市などでは個人情報を適切に取り扱うよう、教育委員会やP連(自治体ごとのPTAのネットワーク組織)が通知やガイドラインを出しました。
ちなみに、これまで公立の学校は各自治体の個人情報保護「条例」の対象でしたが、2023年春から教育委員会が個人情報保護「法」の対象になりました。個人情報保護委員会の人によると、適用される条文はPTAと教育委員会では異なるとのこと。話を聞く限り、以前とそれほど大きな変化はなさそうな印象でした。
とはいえ、従来のやり方に問題があることには変わりありません。まれに「学校がPTAに個人情報を渡すのはOKだ」と言う教育委員会もありますが、そういった場合は自治体の個人情報を取り扱う部署などに相談するといいかもしれません。
以上のようなことを考えるとやはり、PTAも一般の団体と同様に入会申込を受けて、その際に個人情報を集めるのが最も安全で確実だと思います。
あるいは、PTAに個人情報を提供することについて学校が保護者に同意をとる、というやり方でも個人情報の問題はクリアできますが、「そもそも入会申込が成立していない」という問題は残ります。以前ここでお伝えしたような、会費の返還を求める調停・訴訟が起きる可能性はなくなりません。
>【実録】「PTA会費を勝手に引き落とされた」全額返還を求めた父親、結果はいかに?
PTAが入会申込を受けて個人情報を集めるのが、保護者にも教職員にも校長にも、1番よいのでは。もし「うちのPTA(学校)は、まだできていないな」という人は、来年度こそ変えられるよう何かアクションしてみてもらえたらうれしいです。
この記事の執筆者:大塚 玲子 プロフィール
ノンフィクションライター。主なテーマは「PTAなど保護者と学校の関係」と「いろんな形の家族」。著書は『さよなら、理不尽PTA!』『ルポ 定形外家族』『PTAをけっこうラクにたのしくする本』『オトナ婚です、わたしたち』ほか。ひとり親。定形外かぞく(家族のダイバーシティ)代表。