アラサーが考える恋愛とお金 第23回

「モテ」「男ウケ」はもはや死語なのか。多様性の裏で“本音”が埋もれ、生きづらさを感じる女性たち

「本音を言ったら『男女平等が進まない』と言われた」「数年前に書いた恋愛コラムが炎上」多様性の時代だが、多様性の訴えそのものに“押し付け”を感じている人も多い。本音を言いづらくなってしまったと感じる女性たちに話を聞いた。

「モテ」「男ウケ」という価値観が消えつつある……のか?
「モテ」「男ウケ」という価値観は消えつつある……のか?

昨今、女性誌や恋愛メディアから「モテ」や「男ウケ」は消えつつある。多様性が叫ばれる現代。他人による「価値観の押し付け」によって、生きづらさを感じている人たちは多い。しかし、多様性の訴えそのものに“押し付け”を感じている人もいる。本音を言いづらくなってしまったと感じる女性たちに話を聞いた。

本音を言ったら「男女平等が進まない」と言われ

「おごりおごられ論争がネットで沸き起こっている時、女友達に『ぶっちゃけ私はおごってほしいな』と本音を言ったら『そういう女がいるせいで男女平等が進まないんだよ』と強く言われた経験があって」
 
こう話すのは、美紀子さん(20代後半)だ。彼女は都内の税理士事務所で秘書として勤めている。専業主婦志望の美紀子さんは「いい人がいたら、今すぐ結婚したい」と語る。
 
20代後半の彼女だが、結婚相談所にも登録済み。そんなとき偶然目に入った「おごりおごられ論争」に対しては、こんな意見を持った。
 
「自分的には『おごってほしいし、そういう人じゃなきゃデートしたくないな』って。でも『デート代は男性がおごってほしい』と発言した女性のタレントさんがボロカスに叩かれているのを見て、『あぁ、そういうことはおおっぴらに言っちゃだめな時代なんだ』と」
 
共働きが主流の時代。それでも結婚して専業主婦になり、子どもを産み育てることが自分にとっての“幸せ”だと考える美紀子さん。
 
自身の結婚観を他人に押し付けることはないが、逆に「結婚が幸せじゃない」「結婚にメリットはない」と、周囲の友人たちの考える結婚観を“押し付けられた”と感じることがあったという。
 
「結婚だけが全てじゃない、というのは分かっている。でも、多様性の時代になっても、子どもを産める時期や寿命は変わらない。だから私は早く結婚して安定して家庭を築きたいと思う」

多様性の訴えそのものを“押し付け”だと感じる人もいる

美紀子さんは「自分はどちらかというと古い価値観」だという。そしてそんな自分の本音を「言いづらい世の中になった」と語る。
 
日々、恋愛や結婚について取材を続ける筆者の元に寄せられる女性の声のほとんどは「多様性の時代にもかかわらず、他人による価値観の付けによって、生きづらさを感じている」というものだ。
 
例えば、結婚願望はないのに「30歳までに結婚した方がいい」と言われることで悩む女性の話や、夫婦同姓制度の不利益を訴える女性の話。
 
そのような声を届けていくことがメディアの役割であり、“多様性”という言葉がここ数年で一気に世間に浸透した一因だと感じる。しかしその裏で、多様性の訴えそのものを“押し付け”だと感じている美紀子さんのような存在もあるようだ。

「モテ」「男ウケ」の恋愛コラムでクレームが届くライターも

「本音を言いづらい世の中になった」と語る人はこんなところにも。
 
「数年前に書いた恋愛記事が炎上して」
 
こう話すのはフリーライターのモモさん(32歳)だ。彼女は数年前からWebメディアで恋愛記事を執筆するライターだが、彼女いわく、ここ数年で女性向けメディアは大きく変化したという。
 
「数年前は、『モテる服』とか『モテるLINE』とか、『彼氏をぞっこんにさせるテクニック』などの記事を執筆していました。PV数もよかったのですが……」
 
彼女の書く恋愛コラムは赤裸々で、ときにドキッとするようなタイトルのものもある。PV数もよかったというが、数年前に書いた記事が今になってプチ炎上した。
 
「女性を『お持ち帰りした』と、表現した5年前の記事が女性蔑視だとプチ炎上しました。当時は面白おかしく読まれていた記事だったのですが」
 
モモさんはこの件について「今なら『お持ち帰り』は、絶対に使わない表現」と反省しながらも、こんな本音も。
 
「最近、多様性に対応すべく、記事内で彼氏や彼女という言葉を禁止し、パートナーという言葉を使うメディアもあります。さらに『モテ』『男ウケ』という言葉も極力使わず、 “自分らしさ”を打ち出していこうという方針の女性向けメディアが増えました。それはそれでいい流れだと思いつつ、読者にも本音と建て前がある。昔『モテ』『男ウケ』についてこっそり読んでいた女性たちは、いなくなったのか」

建前では「自分らしく」と言いつつ、本音は「モテたい」と思う

筆者もモモさんと同じく、恋愛記事を書くライターの1人だ。
 
女性誌が展開してきた「モテ」「男ウケ」などのブームを引き継ぎ、Webメディアで多くの恋愛記事を書いてきた。
 
しかし昨今、女性誌や恋愛メディアから「モテ」「男ウケ」は消えつつある。その代わり「自分らしさ」や「多様性」を打ち出したものが目立ち、今まで無意識に排除していたかもしれない読者が女性誌やメディアを手に取れるようになった。これにより、読者も増えたはずだが、部数とPV数は右肩下がりのジレンマを抱えている。
 
筆者が日々記事を書く中で、思うことがある。それは、筆者がコラムを書き始めた7年前と、今とで読まれる記事のテーマは変わっていないということだ。多様性の今も、昔と同じく、取材対象者の女性の“本音”や“欲望”がむき出しになった記事はよく読まれる。一方、そのような記事は賛否が分かれるため、書くことに慎重にならなければならない。
 
建前では「自分らしく」と言いつつ、本音は「モテたい」と思う女性。建前では「パートナーと平等でありたい」と言うものの、本音では「パートナーには稼いでほしい」と願う女性。その“本音”や“欲望”は、大っぴらにしづらい。
 
「読者にも本音と建て前がある。昔『モテ』『男ウケ』についてこっそり読んでいた女性たちは、いなくなったのか」
 
答えはきっとノーだ。
 
SNS上には、アプリで加工された自撮り投稿や、パートナーとのキラキラ投稿があふれている。そこには彼女たちの”本音”や”欲望”が表れているように見える。

※回答者のコメントは原文ママです

この記事の筆者:毒島 サチコ プロフィール
ライター・インタビュアー。緻密な当事者インタビューや体験談、その背景にひそむ社会問題などを切り口に、複数のWebメディアやファッション誌でコラム、リポート、インタビュー、エッセイ記事などを担当。
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