「孫の写真をアップして何が悪い」父のFacebookには衝撃の投稿が。30代が抱える“親世代”のSNSリスク

アラサーにとって、親世代のSNSの利用はリスクになりかねない。プライベートな写真をたびたび投稿する親に「公開制限してほしい」と頼んでも、ネットリテラシーの低さから「やり方が分からない」と言われることもあるそうだ。30代前後の女性に話を聞いた。

アラサーにとって、親世代のSNS利用はリスクになり得る
アラサーにとって、親世代のSNS利用はリスクになり得る

SNSで炎上するのは若者だけではない。スマートフォンの普及により、ネットリテラシーの低さはシニア世代にも広がっている。シニア世代のSNS利用率は、60代で8割、70代でも5割超え。SNSにアップした画像が思わぬトラブルになることもあるようだ。30代前後の女性たちに、親世代のSNSでのトラブルを聞いた。

父親のFacebookは“俺通信”。娘や孫の写真を勝手にアップ

「父親からFacebookの友達申請がありました。投稿を見てみると無断で娘の写真がアップされ、プライベート丸出しの投稿ばかりだったんです」

こう話すのは、ヨウコさん(32歳)。彼女は現在、都内で働きながら子どもを育てる一児の母だ。先日、遠く離れた九州の実家の父親からFacebookの友達申請があった。

「Facebookなので、鍵がかかっていると思いきや、父の投稿は完全オープンになっていました。そこには私が娘を産んだこと、娘を生んだ産院の名前、娘の本名、顔などが全て写真付きで細かく記されていて。中には私の写真も。しかもかなり疲れ顔のもの……」

父の本名をGoogleで検索してみると、トップにFacebookが出てくる。投稿には父を含む、家族全員の個人情報がすぐに特定されてしまうような内容のものもあった。ヨウコさんはすぐに父親に連絡し、Facebookに鍵をかけて孫と自分の写真は消してほしいと依頼した。

「でも、まず鍵のかけ方が分からないと言い始めました。さらに『自分の孫の写真をアップしてなにが悪い? なぜ消さないといけない?』とキレモードで。たくさんコメントも来ているのに、と」

結果、ヨウコさんの父親は、友人のみの限定公開に切り替えたようだが、今も孫のことや自身の趣味や釣りの話を頻繁に更新しているという。

「アイコンもなぜか自撮りだし、まるで論文のような長文投稿を日々更新中。誰に向けて投稿しているのか……」

さらにヨウコさんの父は、ヨウコさんの高校時代の友人たちにも友達申請を送っている。

「先日の同窓会で『ヨウコのお父さんからFacebook申請来たよ、投稿がめっちゃ“俺通信”でおもしろい(笑)』と言われました。恥ずかしいのでやめてほしいのですが、楽しんでいる様子なのでやめてと強くは言えず……」

元々ヨウコさんの父は、友人にすすめられてFacebookを始めたようだ。最初はスマートフォンを持つことすら嫌がっていたのに、今では画面をかじりつくように眺めている。

「友人限定にしていても、父には勝手に他人の写真をアップしたりする危うさがあるので、トラブルにならないか心配です。他人に迷惑をかけることだけはやめてほしいですね」

50代後半の父親がInstagramで「#スーツ男子」投稿

さらに、シニア世代のSNS投稿のリスクはこんなところにも。

「父親のインスタには、日々の全身コーディネートが載っています」

こう話すのはミキさん(20代後半)。50代後半になる会社経営者の父親は、昨年突如Instagramで自身のファッション投稿を始めたという。

「父は自分の全身コーディネートを投稿しています。どこで学んだのか、顔はしっかりSNOWで加工されているんです」

父は顔出し全開、さらに下の名前の本名でInstagramをやっていることもあり、ミキさんは父が恥ずかしい思いをするのではないかと心配している。

「私の写真をアップしているわけではないので、私がとやかくいう権利はないとは思いますが。父がフォローしているのが、グラビアアイドルやセクシー女優さん、キャバクラ嬢さんばかりなんです。たまに『フォローありがとうございます! ファッションかっこいいですね』とセクシーな女性からのコメントも……。もし母や取引先が見たらどう思うかな、とヒヤヒヤしています」

最近の投稿はパワーアップし、「#ファッション好きな人と絡みたい」「#スーツ男子」など大量のタグが並んでいる。

「一歩間違ったら名誉棄損」Xで政治的思想の発信

さらにアラサー世代の女性たちに親のSNSについての調査を進める中で、こんな意見もあった。

「私の仕事用のX(旧Twitter)を父らしきアカウントにフォローされました。父の投稿を見てドン引き。現状の政治に対する不満をぶちまけるアカウントだったからです」

30代のこの女性は、お笑い芸人のリポスト(リツイート)が多いこと、ローカルニュースをリポストしていることで、X(旧Twitter)のアカウントが匿名であるものの、父だとすぐに分かったという。

Xには、自分の知らない父の姿が……。政治に対して熱烈に批判したり、自分の嫌いな政党を支持している他人の投稿を攻撃したりすることも。

「日頃優しい父がSNS上では別人のようで。ショックでした。一歩間違ったら名誉棄損で訴えられるような過激な内容もありそうで、ヒヤヒヤしています」

「公開制限」の方法が分からない。それなのに勝手な投稿を繰り返す親世代

上記の3人の女性のように、自身の父親のSNSに頭を抱えた経験のある子ども世代も多いようだ。それもそのはず、この数年でシニア世代へのSNSの普及は一気に進んでいる。

2022年、NTTドコモモバイル社会研究所は「シニアのSNS利用実態」についての調査結果を発表した(60~79歳の男女709人が回答)。

その結果、シニア世代でSNS(LINE・Facebook・Twitter・Instagram)を利用している人は、この4年間で倍となり、60代は8割、70代も5割を超えていることが分かった。SNSの内訳はLINEが66%と最も多いが、Facebook・Twitter・Instagramの利用率も10%前後ある。

この世代のほとんどが、50代や60代に入ってスマートフォンを手にした人たち。ヨウコさんの父親のように「SNSの公開制限の方法が分からない」といった、若者とは別のネットリテラシーの低さによるリスクを伴っている。

若者のSNSの利用による炎上ニュースはたびたび話題になるが、一方で、ニュースになるほどではないものの、シニア世代の子どもたちが、親のネットリテラシーに頭をかかえる現状も浮き彫りになってきた。

※回答者のコメントは原文ママです

この記事の筆者:毒島 サチコ プロフィール
ライター・インタビュアー。緻密な当事者インタビューや体験談、その背景にひそむ社会問題などを切り口に、複数のWebメディアやファッション誌でコラム、リポート、インタビュー、エッセイ記事などを担当。
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