新横浜ラーメン博物館(以下、ラー博)は2024年に迎える30周年に向けて、2022年7月1日から「あの銘店をもう一度」プロジェクトをスタート。過去に出店したことのある約40店舗の銘店が2年間かけてリレー形式でラー博に出店します。
2023年12月12日~2024年1月10日の「あの銘店をもう一度“銘店シリーズ”」第26弾は、ドイツ・フランクフルト「無垢(むく)ツヴァイテ」が出店。「逆輸入ラーメン」として、ラー博に新風を巻き起こした「無垢ラーメン」の最新版をぜひ味わって(画像は全て提供)。
ドイツだからこそ生まれた「無垢」のラーメン
2010年、ドイツにラーメン店「無垢」をオープンした山本真一さんは、もともとは欧州向けに日本食材を卸す大手食品商社の営業マンとしてドイツを駆け回っていました。「直接、お客さんに感動を伝える仕事がしたい」と、独学でラーメンを作り上げたのです。
日本はラーメンを作る環境が恵まれているのに対し、ドイツは限られた環境だったそう。麺に使用する「かん水」も開業当時のドイツでは入手できず、薬局で炭酸ナトリウムと炭酸カリウムを購入し、山本さんが自分で調合していました。
小麦粉も日本のようにラーメン用にブレンドされたものはなく、粉という粉を試し、ピザ用とパスタ用の小麦粉にたどり着きました。山本さんは、このような環境だったからこそ、今につながっているといいます。
「もしあの時、日本のようにラーメンを作る環境が整っていたら、既成概念に縛られたラーメンしか作れなかったと思います。制限されているからこそ、知恵と工夫が生まれたのだと思います」。
「無垢」のラーメンは、ドイツだからこそ生まれた味だったのです。
口コミだけでおいしさが広まり、オープンから2年後の2012年には、ヨーロッパの口コミサイト「トリップアドバイザー」で、TOP10入りを果たすほどの超人気店に成長させます。
「逆輸入ラーメン」の草分けとして約6年ラー博に出店
ラー博は、2013年から日本にお店がなく海外で独自の進化を遂げたラーメン店を紹介する「逆輸入ラーメン」をスタート。
第1弾のアメリカ・ハリウッド「IKEMEN HOLLYWOOD」に続く第2弾として、2014年6月25日に「無垢ツヴァイテ」がラー博にオープンしました。”ツヴァイテ”はドイツ語で2号店という意味です。
オープン時にはフランクフルトのスタッフ全員が駆け付け、山本さんはその後も横浜に滞在していました。そして、2020年4月3日まで、6年近く出店していました。
筆者がオープン時に取材させていただいた時は、家系ラーメンをより上品に仕上げた印象で「これが逆輸入なのか!」と驚愕(きょうがく)したのを覚えています。文字通り“クセ”になり、何度もリピートしていました。コロナ禍でのラー博休業中に卒業したため、「あの銘店をもう一度」での出店を待ちわびていました。