「糸引きマフィン」騒動のことだ。
ご存じない人のため、この騒動の経緯を簡単に説明しておこう。事の発端は11月11、12日に開かれていたアジア最大級のアートイベント「デザインフェスタ」のフードコーナーで売られていたマフィンを買った客から「糸を引いていた」「ひと口食べただけで吐き気がした」などの声が相次ぎ、食べてしまった人らが次々と腹痛などの体調不良を訴えたことだった。
では、そんな問題のマフィンを売っていたのはどこかというと、東京都目黒区の個人経営の焼き菓子店である。
宣伝文句とは真逆だったマフィン
目黒通りから少し入った住宅街の一軒家の1階に店を構え、マフィン、クッキー、スコーンの製造販売をしているこの店の看板やホームページには以下のような宣伝文句が踊っていた。「無添加 お砂糖控えめ」
「離乳食完了期のお子様よりOK」
「熊本県産小麦粉のみを使用」
「子どもが安心して食べられるマフィン」をアピールしていたわけだが、このイベントで売ったマフィンは「安心」の正反対のものだったというわけだ。実際、被害の調査を行った厚生労働省は、重篤な健康被害が生じる危険性が最も高い「CLASS I」と認定。「糸引きマフィン」として大騒ぎになったというわけだ。
事後対応のまずさで炎上
これだけでも個人で飲食店や食品商店をやっている人からすれば「もし自分の店であったらと想像をするだけで恐ろしい」という反応だろうが、実はそのような人たちが今回のケースから本当に学ばなくていけない点は他にある。それは「事後対応のまずさで悪目立ちして大炎上してしまった」ということだ。
確かに、深刻な食中毒事案を発生させてしまったことは問題だが、それだけではこんなに大騒ぎをされることはない。食中毒というのは「あってはいけない」ことではあるが、残念ながら食材の管理ミスや手洗いを徹底していないなどヒューマンエラーが原因で、定期的に発生しているからだ。
しかも今回、食中毒を起こしたのは全国区で展開している大手の有名チェーンとかでもなく、女性が1人で切り盛りするような個人商店だ。ましてや、死者がでたわけでもない。本来であれば、1日、2日ネットやSNSでひとしきり叩かれて終了だ。しかし、現実はそうなっておらず、かれこれ10日間以上も炎上し続けているのだ。