ケンカ売ってる? 間違った謝罪
また、2の「謝罪が間違っている」も女性店主はやらかしてしまった。ホームページに謝罪文を掲載したところまでは良かったのだが、その書き出しが、「拝啓 時下いよいよご清祥のこととお慶び申し上げます」と食中毒を起こした「加害者」側が使わないような表現をしてしまったことで、これまた「ケンカを売っている」「反省などしていないのでは?」とさらなる批判が殺到してしまったのである。
絶対やってはいけない「アカ消し逃走」
そして、極め付けが、3の「アカウントを消して逃げる」だ。この「アカ消し逃走」はネットやSNSの世界では、社会全体で叩いてもいいような犯罪者、悪質なことをした人間が最後にやるお約束ともいうべき行動だ。裏を返せば、この「アカ消し逃走」をした者は、ボロカスに叩いてもいいということなのだ。それをこの焼き菓子店はやってしまった。マフィンの回収方法などの連絡窓口として、X(旧Twitter)やInstagramのアカウントを厚生労働省の公式Webサイトに掲載していたが、これらのアカウントを削除してしまったのだ。
この背景には、「いたずら」や「脅迫」があったと思われる。女性店主が集英社オンラインの取材に応じたところでは、店には嫌がらせのイタズラ電話や無言電話がひっきりなしにかかり、店主の名前をかたってまったく無関係の幼稚園に殺害予告のメールが届くなどして、警察に対応を相談していたという。
たった1人でこのような事態に対応をするのは並大抵のことではない。しかし、だからといって「アカ消し逃走」は絶対にやってはいけない「悪手」だったのである。
「個人商店だからしょうがない」とはならない
インターネットやSNSの発達で「個人商店」でもうまく発信すれば、企業と同じ土俵でビジネスができることになった反面、企業と同じようなリスクも発生する。そして、社会は企業と同じような危機管理を求める。「個人商店だからしょうがないよね」と大目に見てくれる時代は残念ながら終わってしまった。これから個人でスモールビジネスを起業する人はぜひお気を付けいただきたい。
この記事の筆者:窪田 順生
テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経てノンフィクションライター。また、報道対策アドバイザーとしても、これまで300件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行っている。
テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経てノンフィクションライター。また、報道対策アドバイザーとしても、これまで300件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行っている。