PTAで払うと、補正予算で補てんするのは難しくなる
では実際、自治体の中で、学校予算はどんなふうに付くのでしょう。東北地方のある町で、教育委員会の施設・予算管理を担当するMさんに聞いてみました。「高額でも本当に学校運営に必要なものであれば、議会に補正予算を要求します。予算の要求は、最終的には首長が要不要を判断して、議会の議決を経て決定されます。
議会は基本年4回なので、すぐに対応が必要な場合は、予備費をあてるか、他の科目からの流用で乗り切り、次の予算で補正予算を組んで埋め合わせます。でも、PTAで払ってしまうと、後から町の予算で補てんするのはかなり難しくなる。ですから、PTAでお金を出す前に、まずは教育委員会に相談です」
ただし、教育委員会にいるのはMさんのような人ばかりではないことも。中には財政担当者でもないのに、学校からの要望を「お金がないから」と断ってしまう人もいたといいます。となると、教育委員会に予算を求める時は、できるだけ財政担当者に直接話すのがいいかもしれません。
「周年行事の費用の相談も受けたことがあります。以前は保護者や地域の方などから寄付を募っていたところ、児童生徒数も減って寄付では賄えなくなったので、一部予算を出して欲しいと。この時は教育長から首長に相談し、教育委員会の財政担当課長から町の財政担当課長に相談し、最後は首長から指示が出て、議会の議決を経て、予算の増額が認められました」
なるほど、ちゃんと手順を踏めば出るわけです。といっても、もちろん何にでも出るわけではありません。このケースは「こんなに努力をしたけれど不足した、というふうに、きちんと経過の説明があったからうまくいった」とのこと。
「予算を取るために大事なのは『根回し』と『話し合い』と『妥当な落としどころの見極め』です。小さな自治体なら、PTAや保護者は、議員や首長に直談判するのも効果的だと思います」(Mさん)
どの自治体でも同様にいくか分かりませんが、われわれはもっと、学校に予算が付く方法を考えたほうがよさそうです。PTAで気安くお金を集め、学校に寄付をする前に、ダメもとでトライしたいところです。
782人が参加して盛り上がった、お金をかけない周年行事
そもそもを考えると、「周年にそこまでお金をかける必要があるのか」という問題もあります。お金をかけずに、学校の創立を祝う方法もあるのでは。例えば習志野市立第七中学校では、2019年に40周年を迎えた際、「学校のお誕生日なんだから、みんなでお祝いしよう」ということで、これまでの卒業生や先生たちにSNSを使って声をかけたところ、なんと782人が参加。告知用につくったLINE公式アカウントには、2500人もの登録があったとか。
当日は体育館や校庭などで大人の部活動を開催したり、参加者全員で校歌を歌ったりして大いに盛り上がり、さらに先生たちからのメッセージ動画やイベントの様子をまとめた動画も配信して、当日参加できなかった人にも楽しんでもらったということです。
このイベントを企画した、当時のPTA会長・齋藤いづみさんは、こう振り返ります。
「すごくよかったです。先生も大勢来てくださって、あちこちで教え子さんと交流をされていて。お金をかけなくてもこういうことができるんだ、ということを体現できたと思います」
周年は10年に一度のことなので、PTAの役員さんたちは「とりあえず引き継ぎ書のとおりにせねば」とプレッシャーを感じがちですが、実はいろんなやり方ができるわけです。アフターコロナの今が、変えどきかもしれません。 この記事の執筆者:大塚 玲子 プロフィール
ノンフィクションライター。主なテーマは「PTAなど保護者と学校の関係」と「いろんな形の家族」。著書は『さよなら、理不尽PTA!』『ルポ 定形外家族』『PTAをけっこうラクにたのしくする本』『オトナ婚です、わたしたち』ほか。ひとり親。定形外かぞく(家族のダイバーシティ)代表。