All About ニュース編集部は、2023年7月26日~9月26日にかけて、奨学金の利用経験がある人を対象としたアンケート調査を実施。奨学金制度を利用したきっかけや返済にまつわる不安、現行制度への思いなどを聞きました。
今回は、アンケートで得た回答をもとに、20年近くにわたって奨学金の返済に苦しみ続ける母子家庭出身の30代男性のエピソードを紹介します。
回答者のプロフィール
回答者本人:30代男性在住:神奈川県平塚市
家族構成:既婚(子なし)
住居形態:持ち家(戸建て)
職業:正社員
年収:500万円
現在の貯金額:500万円
回答者の奨学金の状況
借りた奨学金の種類:貸与型奨学金返済状況:返済中
奨学金で利用した金額(総額):400万円
奨学金の返済残高:80万円
奨学金の月々の返済額:約2万円
奨学金以外に借入しているもの:住宅ローン3500万円
独立行政法人日本学生支援機構が発表した令和2年度学生生活調査結果によると、大学では49.6%、短期大学では56.9%の学生が奨学金を利用しています。
母子家庭になったことをきっかけに奨学金を利用
大学進学を機に奨学金を借りた回答者。詳しい理由について、「高校生のとき両親が離婚し、母子家庭になりました。母は病気がちで、仕事もフルタイムで十分にできる状況ではなく、離婚した父から養育費支払いもなかったため、自分が現役で大学に行くためには奨学金を借りざるを得ない状況でした」と語りました。
1人親家庭が利用できる学費支援の一例として「母子父子寡婦福祉資金貸付金制度」がありますが、こちらも貸与であり返還の必要があることには変わりありません。
40歳近くになっても終わらない奨学金返済「これがなければ……」
奨学金返済における苦悩について尋ねると、回答者は「現在の勤め先も決して給料がよいわけではないため、月々の支払いは生活を多少なりとも圧迫しており、これがなければ…とふと思ってしまうことがあります」とつらい思いを告白。「周囲の同級生は親が学費を全額支払っているケースがほとんどにもかかわらず、自分は40歳が近づいても未だに支払いを続けている」と、家庭環境の差が現在の生活に表れていることへのわだかまりも打ち明けました。
繰り上げで早く終わらせるべき? 「結婚する前に分かると気まずくなる」
奨学金の機関に提示された計画に従い、約2万円を毎月返還してきた回答者。奨学金にまつわる後悔について聞くと、「繰り上げ返済していればとっくに返済は終わっていたはずなのですが、そういったことをせず、機関が示した計画にただ沿っていただけなので、そこは計画的になるべきでした」と話しました。加えて、「特に結婚する前に奨学金が残っていることが相手にわかると、かなり気まずくなってしまいますので、その点については注意が必要かと思います」と、結婚の際に奨学金が障壁となる可能性についても言及。
「貸与だけではなく、もっと給付型の奨学金制度が増えてほしいと思います」「条件のハードルを下げるのではなく、成績優秀で有望な人にちゃんと給付されるような仕組みで、誰でもかれでも給付されるようなことがないようにです」と話し、進学を本当に望む人の将来が返済で閉ざされることのないよう制度の改善を求めました。
※回答者のコメントは原文ママです
この記事の筆者:三山 てらこ
横浜生まれ横浜育ち。グルメと深夜ラジオを愛するライター。FP2級。銃弾を防ぐ少年団と、ポケットに入るモンスターも大好き。最近の悩みはアイスの買い置きが一瞬でなくなってしまうこと。X(旧Twitter):てらこ@ライター(@TeraWEB1)