慣用読みとは? 重複・貼付・早急・出生・依存・堪能・固執など、例とともに慣用読みを解説

「慣用読み」とは、誤読などによって本来とは異なる間違った読み方が広く用いられるようになり、使うことも認められるようになった読み方のことです。慣用読みの例には、重複・貼付・早急・出生・依存・堪能・固執​​​​​​​などがあります。

 慣用読みの一覧や普及された理由
慣用読みの一覧や普及された理由

言葉は時代によって、意味や使い方、読み方が変わることがあります。間違った使い方でも使う人が多くなれば、それが一般的になります。そのような慣用読みについてフリーアナウンサーの小川厚子が解説します。

<目次>
慣用読みとは
慣用読みが普及された理由
慣用読みの例:重複・貼付・早急・出生・依存・堪能・固執など
まとめ

慣用読みとは

意味

「慣用読み」とは、誤読などによって本来とは異なる間違った読み方が広く用いられるようになり、一般に広がり定着したものです。間違った読みでありながら、広く知られるようになり使うことも認められるようになった読み方のことを「慣用読み」といいます。

由来

中国大陸由来の漢字本来の読み方ではない、日本で普及した読み方が慣用読みには多くあります。戦後の教育改革で、一部の難解な漢字や言葉が、別の言葉や漢字に置き換えられて、慣用読みになったものもあります。

慣用読みが普及された理由

例えば、「一段落」という言葉は、本来「いちだんらく」と読みますが慣用読みの「ひとだんらく」も広く使われています。慣用読みが普及したのは「一」という漢字は「いち」とも「ひと」とも読めますが、「ひと」と読む言葉が多くあり、誤用が増えたことが理由です。

このように、一つの漢字には多数の読み方があるため混同したということが考えられます。また、「輸」と「愉」のように形が似た漢字の読み方が混同したともいわれています。

関連記事:「一段落」の正しい読み方は「ひとだんらく」「いちだんらく」どっち?

慣用読みの例:重複・貼付・早急・出生・依存・堪能・固執など

慣用読み(1)重複(ちょうふく・じゅうふく)

本来の読み方は「ちょうふく」ですが、慣用読みの「じゅうふく」も広く使われています。「重複」は「重」も「複」もどちらも重なるという意味を持つ言葉で、同じ物事が重なり合うこと、重ねることを表しています。「重」が「ちょう」と読むより「じゅう」と読むことが多いため混同されたと考えられます。

関連記事:「重複」の読み方は「ちょうふく」「じゅうふく」どっちが正しい?

慣用読み(2)貼付(ちょうふ・てんぷ)

本来の読み方は「ちょうふ」です。「てんぷ」は慣用読みです。貼付の意味は貼り付けることで、添え付けるというよく似た意味を持つ「添付(てんぷ)」と間違えられたのではないかと言われています。また、貼はチョウと読むのが正しいのですが、「店」「点」などを「てん」と読むことから、似ている文字で読み方が混同したともいわれています。

関連記事:「添付」「送付」「貼付」の違い

慣用読み(3)早急(さっきゅう・そうきゅう)

本来の読み方は「さっきゅう」ですが、慣用読みの「そうきゅう」も広く一般に使われています。「早速」は「さっ」と読みますが、「早朝」や「早々」など「そう」と読む字も多く、混同したと思われます。「早急」の意味は、は非常に急ぐこと、またそのさまのことです。

関連記事:早急の読み方は「さっきゅう」「そうきゅう」正しいのはどっち?

慣用読み(4)出生(しゅっしょう・しゅっせい)

本来の読み方は「しゅっしょう」で、慣用読みが「しゅっせい」です。戸籍関係では「出生届」(しゅっしょうとどけ)や出生率(しゅっしょうりつ)のように「しゅっしょう」が使われます。現在では一般的に「しゅっせい」が使われることも多くなっています。「出生」の意味は、人が生まれること、ある土地、環境、家柄の生まれであることです。

慣用読み(5)依存(いそん・いぞん)

本来の読み方は「いそん」で、慣用読みが「いぞん」です。「いぞん」は慣用読みでしたが、文化庁の国語に関する世論調査で「いぞん」と読む人が9割以上になったため、2014年以降「いぞん」を優先させる読みとして変更されています。「依存」の意味は他のものや人を頼って存在すること、頼らないと精神や身体を平常に保てないことをいいます。ものや人に頼るだけではなく特定の行動がやめられない場合も「依存」といいます。

慣用読み(6)堪能(かんのう・たんのう)

本来の読み方は「かんのう」で、慣用読みが「たんのう」です。現在では一般的に「たんのう」と読まれることが多いです。「かんのう」の意味は、学問や技術などが深くその道に通じている様子やその分野に詳しい人のことを意味します。「たんのう」と読むと「十分に満足すること」という意味も含まれます。読み方によって意味が異なりますので注意が必要です。

慣用読み(7)固執(こしゅう・こしつ)

本来の読み方は「こしゅう」で、慣用読みが「こしつ」です。現在では一般的に「こしつ」と読みます。NHKでもニュースなどで読む時は「こしつ」のみを認めています。「執」は「執着しゅうちゃく」「執念しゅうねん」のように「しゅう」とも読めますが、固執の読み方は「こしつ」が一般的です。「固執」の意味は自分の意見を主張して曲げないこと、譲らないことです。

慣用読み(8)消耗(しょうこう・しょうもう)

消耗は慣用読みの「しょうもう」の方が一般的に広く使われていますが、本来の読み方は「しょうこう」です。「毛」の音「もう」の読み方から、誤読されたのが始まりで、定着していったとされています。「消耗」の意味は使って減らしなくすこと、ものがなくなったりその働きが減ったりすることです。「心神耗弱」は「しんしんこうじゃく」と読むように、「耗」は「こう」とも読みます。

慣用読み(9)漏洩(ろうせつ・ろうえい)

本来の読み方は「ろうせつ」で、慣用読みが「ろうえい」です。現在では一般的に「ろうえい」と読むことがほとんどです。「漏洩」の意味は、秘密などが漏れること、秘密などを漏らすことです。

慣用読み(10)輸出(しゅしゅつ・ゆしゅつ)

本来の読み方は「しゅしゅつ」で、慣用読みが「ゆしゅつ」です。現在では「ゆしゅつ」と読むのが一般的です。「輸」は本来「しゅ」と読みますが、「愉快(ゆかい)」の「愉」と似ていたため誤読が広がったといわれています。「輸出」の意味は、自分の国の産物、製品、技術などを外国へ売り出すことです。

慣用読み(10)惨敗(さんぱい・ざんぱい)

本来の読みは「さんぱい」で、慣用読みが「ざんぱい」です。現在では一般的に「ざんぱい」と読むことがほとんどです。「惨敗」の意味は、ひどい負け方、みじめな負け方をすることです。

まとめ

言葉は時代によって意味や使い方、読み方が変わっていくものがあります。慣用読みの方が一般的になっているものもありますが、検定試験などでは本来の読み方が正解となる場合も多いので、本来の読み方を理解して使えるようにしておきましょう。「輸出」や「漏洩」「消耗」など、本来の読み方では伝わらない場合もありますので、どちらも間違いではありませんが状況に応じて使い分けるようにしましょう。

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