日本人にとってはおなじみの実用英語技能検定(英検)の準2級と2級の間に、2025年度から新たな級が導入されることになったと聞きます。現在は高校中級相当(高1レベル)の準2級と高校卒業相当(高3レベル)の2級の間には高い壁があるとされ、「高2レベルの実力を客観的に示せる級ができた」と歓迎される一方で、「資格ビジネスでしかない」「持っていても英語が話せない資格に意味があるのか?」などと厳しい意見も挙がっています。
>準2級と2級のレベルは段違い
仕事に役立つ資格を求めるヨーロッパ人、趣味の資格を欲しがる日本人
筆者が住むヨーロッパにおいては、医師免許や調理師免許、医療フットケア資格など、その国での開業や就業に必須の国家資格を取得する人を多く見かけます。まず明確な目的があり、それを実現する手段としての資格取得であって、「何かに役立つかもしれないから、とりあえず取っておこう」という趣味の延長線上のような検定や資格類は、世の中に氾濫していません。
ところが日本に帰国すると、どの書店も検定・資格取得コーナーに大きなスペースを割いていることに驚かされます。しかも語学や国家試験用の王道系から、「整理収納アドバイザー」「野菜スペシャリスト」「eco検定」などヨーロッパではついぞ見かけないユニークでニッチな資格まで充実しているのが印象的です。
日本では英検を筆頭に、なぜこれほど検定や資格が重宝されているのでしょう?
自信のない自分への「箔付け」
日本人は外国人と比べて自分に自信のない人が多いといわれており、2018年度の内閣府「我が国と諸外国の若者の意識に関する調査」で「自分自身に満足している」と答えた人が日本では45.1%、アメリカで86.9%、ドイツで81.8%であったことからもそれがうかがえます。
素の自分に自信がなくとも、資格があれば何となく自分に箔が付き、武装できたような気分になるもの。「自分はこんなにすごい人間です!」と声高にアピールして回らずとも、己にひっそりと自信を与えてくれるのが検定結果や資格の存在であり、控えめを是とする日本人の気質とは相性が良いのでしょう。
微妙な差別化を期待する「金太郎飴にトッピング作戦」
就職活動をする日本の大学生たちが、そろいもそろってリクルートスーツを着用するのは誰もが知るところです。黒いスーツに黒い髪と黒い鞄、同じようなヘアスタイルとメイクで整え、上品なマナーと話し方をマニュアルで習得し、そして恐らく会社ごとに似たような経歴の人材が集まるものと推測されます。金太郎飴のように酷似した学生たちが群がる中、個性や経歴を演出するトッピング的役割を担うのが検定・資格類なのかも知れません。
自慢できるTOEICのスコア、難関資格、話題づくりに役立つ珍しい認定。日本社会特有の「目立ち過ぎはアウト、かといって埋もれ過ぎても落とされる」という極めて狭いストライクゾーンの中で、いかに自分を無難に脚色して、当たり障りなく際立たせることができるか……。ちまたにあふれる資格類は、そんな微妙なさじ加減を担ってくれているのではないでしょうか。