ヒナタカの雑食系映画論 第43回

「どんでん返し」がすごい! 伏線回収が秀逸すぎる2023年公開の映画8作品を見てほしい

「思い込みが完全に覆される」どんでん返し系の映画を、2023年公開作に絞って8作品紹介しましょう。SNSとネット配信のある今だからこその作品があることにも注目です。※サムネイル画像出典:(C)五十嵐律人/講談社 (C)2023「法廷遊戯」製作委員会

5:『リゾートバイト』(10月20日より劇場公開中)


ネットの都市伝説の映画化作品です。住み込みのバイトを始めた3人の若い男女が、不可解な出来事に遭遇して……という流れはホラーとしてスタンダードかつ丁寧なもので、「じわじわ」くる怖さを楽しめるでしょう。そして、キャッチコピーに「絶対に先が読めない86分」とある通りの、確かに「そりゃ読めないよ!」と思うばかりの後半の怒濤(どとう)の展開が何よりの見どころです。

まるで牛丼を食べに行ったらカツもおまけでトッピングしてくれたような、ほぼほぼコメディーと化したまさかの要素が紛れ込み、それでいて伏線回収はしっかりしていてとある展開にも納得できます。実に気が利いたラストも秀逸でした。永江二朗監督は今作と同様にネット上の都市伝説を映画化した『真・鮫島事件』『きさらぎ駅』を手掛けており、いずれもサービス精神満点の侮れないホラーになっていたので、そちらも合わせてご覧になってほしいです。

6:『#マンホール』


結婚式前夜にマンホールの中に転落してしまった男の姿を追った、ワンシチュエーションもののサスペンスです。外部に助けを求められる道具は「スマホのみ」な状況でのSNSを活用したアイデアが見どころで、「当然こうするだろう」と思う行動を主人公が早めに片付けてこそ、「もうこの手段に頼るしかない」心理がしっかり描かれていることが秀逸でした。

主人公が「完全無欠なハイスペック男」でありつつ、過酷な状況下でその「本性」がむき出しになっていくことにも、いい意味で意地悪な面白さがあります。製作陣が「類まれなるアイドル性」と「自分からかけ離れた人間になり切れる演技力」という理由でオファーをして、実際にその期待に答えた中島裕翔の1人芝居をたっぷりと堪能できます。メインのどんでん返しそのものは途中で予想できる人もいるかもしれませんが、それでも驚くであろう「その先」を見届けてほしいです。

7:『エスター ファースト・キル』


どんでん返し系のホラーとしても人気である『エスター』の、なんと13年ぶりの続編にして前日譚です。残忍な殺人鬼が失踪した娘を持つ家族の元へ行き、容姿が似ていたその娘に「成り代わろう」とする過程で、「別人だと家族にバレないようにしないといけない」「ちょっとした言動でボロが出てしまう」様にハラハラでき、ある意味で殺人鬼側を応援したくさえなってしまう、いい意味で危ういブラックコメディー的な内容にもなっていました。

物語は独立しているので今作から見ても楽しめますが、前作のどんでん返し部分が必然的にネタバレになってしまうので、できれば先に前作を見たほうがいいでしょう。そして、そのネタが割れた状態でも「そう来たか!」と心からびっくりできる、「二番煎じには絶対にしない」サプライズおよびアイデアに感心しきりでした。R15+指定ならではの残酷描写もあるのでご注意を。

8:『search/#サーチ2』


高い評価を得た『search サーチ』の続編ですが、物語は「インターネットおよびSNSを駆使して行方不明の母を探す」とシンプルなので、前作を見ていなくても問題なく楽しめるでしょう。「100%全てPC画面上の映像で展開していくサスペンススリラー」というキャッチーかつ挑戦的な前作のアプローチを踏襲しながら、しっかり新機軸も用意してくれています。

その新機軸の1つが、主人公がSNSを器用に使いこなす「デジタルネイティブ世代」の18歳の女性ということ。複数のSNSやアプリをほぼ同時並行でチェックするのはお手のもので、それがリアルかつスピーディな編集の映像にそのままシンクロしている様を楽しめるでしょう。そして、どんでん返し部分は「全画面伏線アリ」が言い過ぎではないほどに納得できる上、この上なく恐ろしくスリリングなものになっていました。


>次のページ:むしろ「どんでん返し」要素以外に魅力がある映画も
 
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