Q. 子どもが性被害に遭わないよう、親ができることはある?
性暴力が起きたとき被害者に全く非はないということは大前提ですが、それでも自衛、防犯を日頃から考えておく必要のある世の中ではあります。
例えば、『あぶないときは いやです、だめです、いきません』(岩崎書店)という絵本では、「怪しい人について行っちゃいけない」という場合の「怪しい人」「危ない人」の見分け方や、危険を感じたときに助けを求める方法などを学ぶことができます。
また、プライベートゾーン(=水着で隠れる部分と口)に許可なく触れてくる人がいて、「誰にも言っちゃダメ」と言ってきたとしても、本人が「何かおかしい」と感じたならSOSを出していいということや、SOSの出し方を伝えておくことも大切です。
・「絶対にあなたの味方になるよ」と普段から繰り返し伝える
子どもたちの中には、被害に遭った際に「親に心配をかけたくない、親が悲しい顔をするのがつらい」という思いが強く、声を上げることにハードルを感じてしまう子もいます。必要なサポートがきちんとできるよう、親からは「どんなことでも話してくれて大丈夫なんだよ」と伝えていきたいですね。
「絶対にあなたの味方になるし、怒らないから、何でも話してね」と日頃から繰り返し伝えることで、「トラブルがあったときはまず親に話そう」という気持ちを育むことができるのではないかと思います。
Q. 子どもが性加害者にならないよう、伝えるべきことは?
自分にも他者にも「SRHRという権利がある」ということ、同意なしに他者の体に触れてはいけないのだということを、子どもが小さい頃から伝えていくことが大切です。
性教育の根本は「人権教育」。子どもを加害者/被害者のどちらにもしないために、人権の意識をきちんと伝える必要があると考えています。参考になる絵本として『子どもを守る言葉「同意」って何? YES、NOは自分が決める!』(集英社)がおすすめです。
「相手の同意なしに性的な行為に及んではいけない」と理解することは、性暴力といえるような内容を扱ったアダルトコンテンツを真似るなどの行動を防ぐことにもつながると思います。過激な描写を目にしたときに「この人は本当にこの行為を望んでいるのかな?」と考えられるアンテナが育っていれば、実際の人間関係にも、相手の権利を意識して向き合っていけるようになるのではないでしょうか。
Q. 過激な描写のコンテンツと、どう付き合えばいい?
今のネット環境の中で、子どもたちが性に関するコンテンツに全く触れずに生活していくことは難しいでしょう。エンタメ系のYouTube動画などでも、性に関するワードが気軽に使われていますし、子どもたちが性的ワードを知ったり、調べたりするのも容易です。
有害な情報から完璧に守らなくては、と考えるより、子ども自身で適切な情報を判断できるための情報を伝えていくことが大切だと感じます。
もし子どもが過激なコンテンツに触れていることを知って不安に思ったのであれば、「もしこれをそのまま真似したら、誰かをとても傷つけるかもしれないんだ」など、なぜ不安に思っているのかといった親の気持ちを素直に伝えてもいいと思います。
Q. 性被害に遭った場合の対処法を知っておきたい
・子どもに被害状況を聞く際の注意点
子どもが性被害に遭ったかもしれない、という状況では、怒ったり否定したりすることで目を背けたくなることもあるかもしれません。ただ、その気持ちを子どもにぶつけてはいけません。
第一声は「話してくれてありがとう」。まずは全面的に子どもを信用し、本人を責めたり、怒ったりしないで話を聞きましょう。
本人が話したがらない状況で無理に聞き出そうとすることは、負担が大きい場合もあります。詳しい内容を確認する必要があるときは、「今から話を聞いてもいい?」と都度確認をとって話してもらうように、気を配りましょう。途中で話を中断したくなったときには、いつでもやめていいと伝えておくことも大切です。
・「ワンストップ支援センター」に相談を
被害に遭った場合、包括的に相談できる場所は「ワンストップ支援センター」(電話の短縮ダイヤル『#8891』)です。性暴力に関する相談窓口で、その時の状況に応じて専門家が必要な対処法を教えてくれます。
重大なことが起きたときだけ、子どもに話してもらうのは難しいものです。日常の他愛もない話もたくさんできる関係性があるからこそ、重要なことも話そうと思えるのだと思います。日頃から子どもも大人も対等なコミュニケーションをとることを心がけられるとよいのではないでしょうか。
この記事の監修者:シオリーヌさん
助産師/性教育YouTuber 株式会社Rine代表取締役 総合病院産婦人科、精神科児童思春期病棟で勤務ののち、全国の学校や企業で性教育に関する講演・イベントの講師を務める。性教育YouTuberとして性を学べる動画を配信中。2022年10月、性教育の普及と子育て支援に取り組む(株)Rineを設立。著書『CHOICE 自分で選びとるための「性」の知識』、『こどもジェンダー』ほか。
この記事の筆者:古田綾子
雑誌・Webメディアの編集者を経てフリーランスライター。2児の母。子どもの受験をきっかけに教育分野に注力。自らの経験に基づいた保護者視点で、教育界の生の声やリアルな体験談などを取材・執筆。