誹謗中傷を生みやすいリアリティーショーの「悪役演出」。番組制作側に法的問題はある? 弁護士に聞いた

恋愛リアリティーショー(以下、恋リア)戦国時代といわれる現代。リアルな恋愛模様や心理描写を見たい視聴者に熱烈に支持される一方、番組にのめり込みすぎた一部の視聴者による出演者への誹謗中傷が起こっている。恋リアの問題点について、弁護士に聞いた。


恋愛リアリティーショー(以下、恋リア)は、近年人気が急上昇しているコンテンツである。1999年に放送が開始された『あいのり』(フジテレビ系)をきっかけに、さまざまな番組が登場し、話題を集めてきた。

しかし、リアルな恋愛模様や心理描写が熱烈に支持される一方で、番組にのめり込みすぎた一部の視聴者による出演者への誹謗(ひぼう)中傷が起こっている。本記事では、とある恋リアへの出演経験がある筆者が類似コンテンツの基本構造を考察するとともに、恋リアの法的な問題点について、エンターテインメント法務に詳しい弁護士に話を聞いてみた。
 

恋愛リアリティーショーの基本構造には2パターンある

恋リアには大きく分けて2つのパターンがある。
 
1つ目は、同じ場所に集められた男女が、自由に恋愛をする「マッチング方式」。
 
『あいのり』を皮切りに、複数の男女(だいたい男女比同じ)がシェアハウスをする様子を映し出した『テラスハウス』(フジテレビ系/2015年からNetflix)や、かつて恋人だった5組のカップルがホカンス(ホテルでの共同生活)をする『ラブ トランジット』(Amazonプライムビデオ)など、近年制作される恋リアはこのパターンが多くなっている。
 
2つ目は、複数の女性(または男性)が1人の男性(または女性)を奪い合う「脱落方式」。20人前後の女性と1人の独身男性が参加する『バチェラー・ジャパン』(Amazonプライムビデオ)などがこれにあたる。
 

共通点は、「(建前を含み)出演者が全員素人」「悪役の存在」

番組の構造的には異なる「マッチング式」と「脱落式」だが、共通しているのは、フィクションの恋愛ドラマと違い出演者が“全員素人”であるということだ。
 
中には、タレントとしての活動経験がある人もいるが、建前上“一般人”として番組に参加する。これにより、視聴者はより自分に近い属性の出演者に感情移入しやすくなる。
 
また、もう1つの共通点は、「悪役」ポジションとなる出演者がいること。近年、この 「悪役」として描かれた出演者へのバッシングが大きな問題となっている。
 
恋リアで「悪役」へのバッシングが起きる構造と問題点について、エンターテインメント関連の法務に詳しい尾崎聖弥弁護士に聞いた。
 
尾崎弁護士「恋愛リアリティショー番組に限らず、バラエティ番組、ドキュメンタリー番組などでも、一般的に、番組制作者は膨大な素材の中から番組に使用するものを厳選し、番組を作っています。

例えばこれがバラエティ番組の場合は、出演しているのは芸能事務所に所属するプロのタレントですから、番組制作者は芸能事務所との関係上、一部のタレントを徹底的におとしめて番組を作ることはできません。
 
しかし、ドキュメンタリー番組や恋愛リアリティー番組の場合には、出演するのは素人ですから、番組制作者がより視聴者ウケする番組を作ろうとした結果、一部の出演者をおとしめる素材ばかりが使用され、悪役として仕立て上げられてしまうということが起こるのです」


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