世界最高峰のスタッフとキャストが、とてつもない努力と研鑽(けんさん)により作り上げたこと、劇場で見ればこその「圧倒的な映画体験」ができることは間違いありません。ネット上には絶賛レビューも続々と届いており、「ディズニー実写映画の最高傑作」と評する人もいます。
作品そのものが、公開前の批判的意見に対する「回答」に
本作は後述するように、公開前から論争を呼び、批判的な声が多く寄せられた作品です。しかし、本編を見てみれば、そうしたネガティブな印象を覆す作品の力がある、もっと言えば、作品そのものが批判への「回答」だとも思えたため、内容に不安を覚えている人にこそ見てほしいと心から願えたのです。その理由を解説していきます。
正当な批判意見もありつつ、一線を超えた“荒らし”が横行した作品
論争の中心にあったのは、原作となる1989年公開のアニメ映画で白人系の見た目だった主人公のアリエルを、アフリカ系アメリカ人のハリー・ベイリーが演じたこと。忠実な実写化を願うファンからの反発の声は特に多く、「『リトル・マーメイド』の実写化ではなく、完全に新規の作品でのキャスティングであれば良かったのに」という意見には納得できるところもあります。しかしながら、ハリー・ベイリー本人への過剰なバッシングや、彼女へのルッキズムに満ちた揶揄(やゆ)、果てはレビューサイト上の最低点を数の力で投稿し続ける“荒らし”までもが発生しており、それらは見過ごせるものではありません。原作に対する愛情ゆえの不満があることは致し方ないですが、限りなく犯罪に近い、一線を超えた行為は批判されなければならないでしょう(なお、米批評サイトRotten Tomatoesでは荒らしへの対応ができていたため、一般観客からの支持率が94%と正当な高いスコアとなっています)。
もちろん、ハリー・ベイリーを受け入れる声も多く届いています。公開前からTikTokでは、アフリカ系の子どもたちが予告編を見て喜ぶ反応の動画が多数が投稿されました。さらに、公開後もTwitter上の「どんな格好で『リトル・マーメイド』を見に行った?」という投稿に対する動画の数々から、実写映画のアリエルがアフリカ系の当事者からいかに愛されているかもよく分かります。
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