相次ぐ性加害問題の報道などから、性犯罪や性暴力について改めて注目度が高まっています。
一方で、国内では、性暴力に関する基礎的な知識が十分に共有されていない現状もあります。All About編集部が男女500人に行ったアンケート調査では「性被害に遭った際に取るべき対応策や相談できる窓口を知っていますか?」という問いに対し、約半数である46%の人が「全く知らない」と回答しました。
そもそも「性暴力」とは何を指すのか、セクシャルハラスメントと違いはあるのか、被害に遭った場合に何をするべきなのかなどについて、助産師や性教育YouTuberとして活動するシオリーヌさんにお話を伺いました。
そもそも、性暴力とは「性に関する人権を侵害する行為」のこと
ー「性暴力」とは、具体的にどんな行動を指す言葉なのでしょうか? また、どこまでを「性被害」と捉えて良いのでしょうか?
シオリーヌさん(以下省略)「そもそも性暴力とは、『性』に関する人権、人が当たり前に持っている権利を侵害する行為のこと。多くの人が『性暴力』といえば、ニュースなどで報道されるレイプなどといった、自分とは遠い世界の非日常の出来事と捉えられるかもしれません。
ですが、身近な人から掛けられる言葉だったり、多くの学生さんが経験される痴漢の問題だったり、同意を得ない形で行われる性へのさまざまな人権侵害は全て『性暴力』です。性暴力は私たちの日常の中にある身近な問題であると感じていただけるといいと思います」
セクハラも性暴力の一部。「これ、セクハラじゃないから」は通用しない
ー性に関して人権を侵害される内容であれば「身近な人からの声掛け」も性暴力に該当するというお話でしたが、いわゆる「セクハラ」も性暴力の一部である、ということなのでしょうか?「そうですね。性暴力の1つにセクシャルハラスメントが含まれているという認識でいます。かつ、その行動や言動が『セクハラ』かどうかを判断するのは加害をする側ではない、という点も重要です。
『これ、セクハラじゃないから』といった前置きをつけて性的な発言をするケースがあります。この言葉は、相手に対して失礼だという自覚があるから付けられる前置きなのかもしれません。でも、それを言ったからといって、言われた相手が許さなければならないわけではありません。
『セクハラ』という言葉がどこかキャッチーなニュアンスだからこそ、軽い問題として扱われる場合もありますが、それは紛れもない性暴力であり、決して許されることではないと認識しておく必要があると思います」
もし被害に遭ってしまったら、まずは『#8891』に連絡を
ーでは、具体的に性暴力の被害に遭った場合、どうしたらいいのでしょうか? まず、「ここに連絡した方がいい」という相談窓口について教えてください。「性被害に関する相談先で、覚えておいていただきたいのは、ワンストップ支援センターです。電話の短縮ダイヤル『#8891』で『早くワンストップ』と覚えておいてください」
性被害は、状況によって、そのとき取るべき行動も変わります。それに対し『今の状況なら、こういう行動を取った方がいいですよ』といったように、包括的に相談に乗ってくれるのがワンストップ支援センターです。例えば、証拠の採取をしながら診察ができる病院や、アフターピルの処方ができる病院の紹介など、さまざまな状況に対応してくれます」
連絡は、被害から時間がたった後でもOK。あらゆる相談に対応してくれる
ーまずは「ワンストップ支援センター」と覚えておくのが大切なんですね。例えば、被害に遭った直後ではなく、しばらく時間がたった後に被害を認識した場合にも、頼っていいのでしょうか?「はい、もちろんです。ワンストップ支援センターは、カウンセリングや法律相談などに関しても、専門家が相談に乗ってくれる機関です。
例えば、被害から時間がたった後に『今から加害者を訴えることはできるのか』『被害経験によって精神状況に影響が出ていて困っている』などの相談にも対応してくれます。
とにかく、性被害に関するあらゆる相談に対応できる窓口だと認識していただいて大丈夫です」
>次のページ:性被害の証拠は何を残しておくべき?