息子の自己肯定感を育んだ「肯定的な刷り込み」
理系母さんは、息子を普通級に入れることにはこだわらなかった。「1番大事なのは普通級に入ることを目指すのことではなく、『息子の成長につながる環境はどこなのか』だと考えていました。
人の話を聞いて行動する、不適切な発言をしない、自分で時間やものの管理をするなど、わが子が将来生きていくうえで必要なスキルを身につけるためには、少人数で指導を受けられる支援級の環境が適していると思ったんです」
支援級ではアットホームな雰囲気で伸び伸びと過ごすことができたが、普通級の中には「支援級を下に見ている」子どもがいることも、理系母さんは理解していたという。
「学校の生徒の中に『支援級ってバカな子のクラスでしょ』と言う子がいるのは知っていました。でも、別に全員に理解してもらう必要もないと思っていましたし、これからの長い人生で、息子が自分に自信を持って生きていけるようにすることを重視しました。
ことあるごとに、『あなたには、お母さんやお父さんにはない着眼点がある。それは本当にすごいことなんだよ』と言い続けました。例えば、息子が支援級の先生との連絡帳のやりとりでユニークな一言を書いていたら、『他の人が気にも止めないことに着目して、こんな表現ができるなんてあんたは天才だ!』と、夫婦で褒めちぎったり。
ちょっとしたことでも具体的に褒めて肯定的な刷り込みを続けた結果、すごく自己肯定感が高い子に育ちました」
僕は数学者になれる! 中2で数検3級に合格
ポジティブな思い込みの強さは、思わぬところにも発揮された。「中学生のとき、息子が急に『将来は数学者になる!』と言い出して。親が『ちょっと数学が好きな程度で数学者になんかなれないよ』と言っても、『いや、僕は数学が得意だからできる』と、全く意に介しませんでした。
でも、そこから自主的に勉強をがんばり始め、中学2年の冬の終わりにとうとう数検3級(中学3年生程度のレベル)に合格したんです。思い込みのすごさを思い知らされましたし、『この子にはできるはずがない』と決めつけてはいけないと、改めて思ったできごとでした」