M世代の韓国エンタメウォッチャー・K-POPゆりこと、K-POPファンのZ世代編集者が韓国のアイドル事情や気になったニュースについてゆるっと本音で語る【K-POPゆりこの沼る韓国エンタメトーク】。韓国エンタメ初心者からベテランまで、これを読めば韓国エンタメに“沼る”こと間違いなし!
#18のテーマは前回に引き続き「K-POP業界とメンタルヘルスの問題」について。後編では韓国の芸能事務所が行っているアイドルのメンタルケア対策とスタッフ側の抱える課題について取り上げます。そして後半はファン自身の「セルフケア」についての話題へ。
【前回の記事(#17)はこちら】
アーティストへのメンタルケアに疑問の声
編集担当・矢野(以下、矢野):K-POPアイドルの訃報や、体調不良のニュースが出るたびにメディアやファンから必ず出てくるのは「芸能事務所はアーティストのメンタルケアをちゃんとやっているのか?」という疑問の声。実際に韓国の芸能事務所って何か対策しているのでしょうか?
K-POPゆりこ(以下、ゆりこ):私の知る限り……しているところは“一応”しています。
矢野:冒頭から歯切れが悪いですね(笑)。HYBEはBTSが新人時代からメンタルケアに注力しているとパン議長やBTS本人が言及していましたけれども。
ゆりこ: 例を挙げると、JYPエンターテインメントも2010年代から社内に心理カウンセラーを雇っていると公言しており、IVEの所属するSTARSHIPエンターテインメントはタレントとしても活躍する精神科医ヤン・ジェジン先生と契約しています。韓国の報道によると大手事務所は精神科医や臨床心理士と提携しているとのことですが、中小事務所を含め全ての会社がそうではないでしょう。それにいくら専門家と提携していても、そのプログラムがちゃんと機能しているかどうかは別問題だと思います。だから「対策はバッチリ」と断言はできないです。
矢野:確かに、デビュー前の人であれば「弱みを見せたらデビューさせてもらえないかもしれない」と思うかもしれないし、デビュー後も「グループに迷惑がかかるかもしれない」「せっかく夢をつかんだんだから、ここで弱音を吐いてはいけない」と頼れない人もいるでしょうね。勝手な想像なのですが。
ゆりこ:これも想像の範囲内ですが、心理カウンセラーや医師に本音を言えないアイドルがいても不思議ではありません。常に自分がどう見られているか、どんな姿を期待されているか考えてしまう人も多いでしょうし。
矢野:アイドルとしてのプロ意識ゆえに。ちなみに、韓国ではメンタルの不調で病院やカウンセリングにかかることへの心理的ハードルって高いんでしょうか? アメリカのドラマだとよく登場人物がカウンセラーに悩みを打ち明けるシーンが出てきますが。
ゆりこ:今回このテーマを話すにあたって、いろんな韓国の知人たちに聞いてみたんですよ。心理カウンセリングや精神科に行くことについて。全員一致で「まだまだハードルが高い!」との回答でした。もし会社と契約している医者やカウンセラーがいても本音を話すのは勇気がいると。もちろん守秘義務があると知っていても、だそうです。頼るとしたら「どうしようもなくつらくなったら」「周りに強く勧められた時」っていう意見が多くて(※あくまで筆者の知人らの個人的見解です)。
矢野:なるほど。ではなおさら自発的なSOS発信を待っているだけではダメで、周りが早めに察知してサポートする必要がありそうです。
ゆりこ:そう思いますね。アイドルが自らSOSを出している時には、深刻化している場合もある。でもね、ここで今までの話を覆してしまい申し訳ないのですが……。スタッフ側のサポートにも限界があると感じた経験がありまして。
矢野:お、ゆりこさんの実体験ですか?