「フェミニスト」とは、どんな人のこと?
先述した田嶋さんの言葉にもあるように、フェミニズムによって差別や分断が起こるべきではありません。「フェミニズムについて勉強や活動をしていないのなら、あなたはフェミニストじゃない」と、決めつけてはいけないと思います。フェミニストの対義語は、「セクシスト(性差別主義者)」です。フェミニストの真の敵は、性差別や性暴力であり、それに加担する人々でしょう。
調査結果を見ても、「あなたはフェミニストですか?」という質問には、「いいえ」「わかりません」と答える人が多いのが現状。しかし、「あなたは性差別主義者ですか?」と聞かれたら、大体の人は「違います。私は性差別には反対です」と答えるんじゃないでしょうか。
「私はフェミニストじゃないけど」とエクスキューズを入れて、「でも性差別には反対です」と意見する人もいます。
もちろん、私は「人はみんなフェミニストを名乗るべき」なんて1ミリも思っていません。「私は性差別に反対です。だからフェミニストです」と、もっと気軽に名乗れる社会になればいいなと思っています。
むしろ「フェミニズムじゃないってどういうこと?」と言える社会に
世界経済フォーラムが発表した「ジェンダー・ギャップ指数2022」によると、日本は146カ国中、116位。これは、先進国の中で最低レベルの順位です。日本の学校はジェンダー教育が遅れているため、フェミニズムを学ぶ機会がなかったーーそれは個人の責任ではなく、政治や社会の責任でしょう。「パーソナル イズ ポリティカル(個人的なことは政治的なこと)」、これは長きにわたり、フェミニズムが訴えてきたテーマでもあります。
著書でも引用させてもらいましたが、「#なんでないの」 プロジェクトの代表・福田和子さんは、2022年のインタビューで以下のように話していました。
(スウェーデンに留学した当時)付き合っていたスウェーデン人の彼に「あなたはフェミニストなの?」とちょっとビビリながら訊いたことがありました。そうしたら「えっ、フェミニストじゃないってどういうこと? フェミニストじゃないってことは、ジェンダー平等じゃなくていいと思っているって意味?」と言われたんです。
むしろ「なんでそんなこと訊くの?」みたいな空気になって。あれは感動的でしたね。元彼は、特別にジェンダーを学んでいるわけでもない、普通に高校を出て仕事をしている人でした。(※2)
私はこの言葉を読んだ時、羨ましくて吐きそうになりました(笑)。「えっ、フェミニストじゃないってどういうこと?」と誰でも普通に言えるような社会になってほしい。そんなふうに、膝パーカッション(※膝を打ち鳴らして共感)する人は多いんじゃないでしょうか。
「私はフェミニストです」と名乗るのが怖いと感じる人へ
フェミニズムの歴史には大きく分けて4つの波があり、19世紀末~20世紀初頭頃の「第1波」から現在の「第4波」に至るまで、フェミニストたちは声を上げ、バックラッシュを受けながら戦ってきました。そういう多くの先人たちのおかげで、私たち女性は今、進学して、就職して、選挙に行くことができるのです。今フェミニストを名乗ることは、勇気や覚悟がいることかもしれません。でも子どもたちが大人になる頃は、そんな勇気や覚悟がいらない社会になってほしい。フェミニズムを火中の栗にせず、誰でもフェミニズムを語れる世の中にしたい。「性差別のない、全ての人の人権が尊重される社会を目指すこと」が共通認識になれば、多くの人が「私はフェミニストです」と堂々と言えるはずだと、切に感じています。
<出典>
※1『田嶋先生に人生救われた私がフェミニズムを語っていいですか!?』
著者:アルテイシア 、田嶋陽子(KADOKAWA/2023年)
※2『FRaU』
著書『ヘルジャパンを女が自由に楽しく生き延びる方法』(幻冬舎文庫/2023年)でも紹介
アルテイシアのプロフィール
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