2023年に入り、岸田文雄首相が記者会見で発した「異次元の少子化対策」という言葉が大きな議論を呼んでいる。この政策について、首相は「年齢・性別を問わず、皆が参加するもの」と説明した。
しかしこれを受け「子育て支援のために増税? 少子化が止まらない(泣)」「異次元って一体……」など、子育て世代からはSNS上で困惑の声が上がっている。
現代社会における「子どもを産み育てること」に関して、アラサー世代はどのような本音を抱いているのだろうか。2人の既婚女性に本音を聞いた。
仕事を辞めるか検討できるのは「大学までの学費が無償化」になったら
「学費の無償化が一番の少子化対策になるのでは」こう語るのは、ミチさん(31歳/会社員)。いずれ子どもが欲しいと思っているが、妊活に踏み切れずにいる。
「周りの友達は計画的に子どもを作っているので、私もそうしようと思っています。今は仕事が忙しい時期なので、一旦落ち着いたときを見計らって……と。でもそれですぐにできるとは限らないので、今のうちに妊娠力チェックなどは受けておこうと思います」
ミチさんは計画的な妊娠を望んでいる一方で、経済的な面での不安を抱えている。
「出産した友人たちはみんな共働きのバリキャリ女子ばかりで。仕事が好きで続けたい人ももちろんいるけど、私の場合は “出産後も働かないと生活できない”っていうのもある。子どもに不自由な思いをさせたくないし。
旦那の給料で、2人で生活するには十分だけど、子どもができて、大学まで行かせることを考えたら、私も働き続けなければいけない。この年になって、共働きで、私と弟を私立大学に行かせてくれた両親の偉大さを感じています」
彼女は、少子化対策についてこう語る。
「大学までの学費が無償化になったら、仕事を辞めて子育てに専念する選択肢もある」
ミチさんのように、連日ニュースで取り上げられている「子育ての経済的負担に対する不安」の声は多い。しかし一方で、筆者の友人からはこんな意見が挙がった。
子どもを産まないのは「経済的な理由」っていうけど、本当にそうなの?
「ニュースのインタビューで『子どもを産めないのは経済的な理由』っていう人を見るけど、本当にそうかな? って思うときがある」こう話すのは、リサさん(30歳/パート)だ。
彼女は筆者の学生時代の友人で、大学2年生の時に、妊娠が発覚し大学を中退し結婚。夫の地元に戻り、その後も3人の子どもを産み、今では4人の子どもを育てている。
「最初に妊娠が分かったときは目の前が真っ白になりましたよ。旦那は、当時飲食店のアルバイトだったし、私も大学生だったので。経済的な面で大変だった。でも、やっぱりうれしかったんですよね。親に助けてもらったり、自分に使うお金を減らしたりして、なんとかやっていけた。旦那も子どもができたら、急に真面目に働くようになって」
リサさんは決して経済的に裕福ではないという。現在は子どもが保育園に行っている間にパートに出ているが、月の給料は10万円以下だ。
「デキ婚が分かったときは、本当にどうしようかと思ったけど、今では4児のママ。振り返ってみると、お金がなくても体力のあるうちに産んでおいてよかったな、と思う。まだ子どもは保育園と小学生なので、これからお金はかさむだろうけど……」
そう言いながら、リサさんは最近の少子化のニュースを見て思うことがある。
「最近子どもを産まない(産めない)理由に経済的理由を挙げる人が多いけど、本当にそうなのかな? って思う。うちは貧乏だけど大家族だよって(笑)。大家族インスタとかもよく見るけど、節約しながらみんな幸せにやってるし。
結局『経済的不安』っていうのは、生活できないレベルのことではなく、自分の生活水準を下げたくないっていうわがままもあるんじゃないかな? って思ったり」
出産・子育てに対して、経済的な不安を挙げたミチさんと、経済的な面は関係ないのではというリサさん。同世代の2人だが、意見は大きく異なった。
言うまでもなく、少子化は未婚率の上昇や晩婚化が原因であり、その背景には「結婚や出産に対する価値観の変化」や、ミチさんが挙げた「経済的不安の増大」がある。
それに対して、リサさんはこう語る。
「私は20歳だったから、何も考えずに産めたのかもしれない。大人になって責任が増えたり、金銭的なことを考えすぎたり、SNSで周りと比べたり……。そういうので産めなくなるんじゃないかな」
「将来必ず子どもを持つと思う」と答えた19歳以下女性は1割
17~19歳の男女1000人を対象に実施された「18歳意識調査」では、こんな興味深い結果が見られた(調査期間:2022年12月2~5日)。同調査の中で、「将来子どもを持ちたい」「どちらかと言えば持ちたい」と答えた人の数は、女性・男性ともに60%前後となっている。しかし、質問を深掘りして「将来、必ず子どもを持つと思う」と答えた割合を見てみると、男性で14.7%、女性では10%と、ぐんと割合が下がったのだ。
その理由にも関係する「将来子どもを持つうえでの障壁」のトップに入ったのは、男女ともに「金銭的な負担」。17~19歳が回答したとは思えない現実的な回答であった。
さらに、少子高齢化についてどう感じているかという質問に対しては、「非常に危機感を感じる」「やや危機感を感じる」の回答が、男女ともに70%を超えた。
「私は20歳だったから、何も考えずに産めたのかもしれない」
そう答えたリサさんが20歳の頃から、10年の月日がたった。
リサさんよりさらに若い世代は、“考えざるを得ない”状況に置かれている。自分事として出産やそれにかかる経済的負担に不安を感じているのだ。
※回答者のコメントは原文ママ
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・18歳意識調査(日本財団)