「うさぎ年」は災害多発の年だった? 記憶に残る大災害や気象業界で語り継がれる大雪も

2023年の干支(えと)は卯(うさぎ)です。過去の「うさぎ年」の天気を振り返ると、当時の防災体制を変える甚大な災害が多くありました。東日本大震災に、「特別警報」創設のきっかけとなった台風、歴史に残る大雪も。うさぎ年の天気について気象予報士が解説します。

災害多発の「うさぎ年」

うさぎ年の2023年は、太平洋側では穏やかに晴れた一方、日本海側は大雪や吹雪となったところもあり、冬らしい天気で幕開けしました。
 

2023年こそは穏やかな天候に恵まれる一年であってほしいですが、地球全体で気候変動が進む今、過去の災害を振り返り備えることは欠かせません。新年を機に、うさぎ年の過去の天気を振り返ると、防災体制を見直す大きな災害が多くありました。
 

12年前は「東日本大震災」が発生

12年前のうさぎ年は2011年、東日本大震災が発生した年です。3月11日の14時46分、三陸沖でマグニチュード9.0、最大震度7の巨大地震が発生しました。東北地方の沿岸には高さ10メートルを超える津波が押し寄せ、今もなお行方不明の人がいるなど影響が続いています。
 

当時発表された情報の課題を改善し、2013年からは新たな「津波警報」が始まりました。マグニチュード8を超える巨大地震の場合には正しい地震の規模をすぐには把握できないため、その海域における最大級の津波を想定し警報を発表します。
 

この時「巨大」という言葉を使って、東日本大震災クラスの津波が来る非常事態だと、より分かりやすい表現で伝えることになったのです。

巨大地震発生時の津波警報の発表イメージ ※出典:気象庁ホームページ
巨大地震発生時の津波警報の発表イメージ 出典:気象庁ホームページ

「特別警報」が創設された「紀伊半島豪雨」も

2011年は震災だけでなく甚大な気象災害も起きました。8月30日から9月5日にかけて、四国に上陸した台風12号の影響で、紀伊半島の各地で総雨量1000ミリを超える雨が降り、一部では2000ミリを観測した地点もあります。
 

記録的な大雨になったのは、台風が大型で動きが遅く、非常に暖かく湿った空気の流入が続いたためです。一連の大雨は「紀伊半島豪雨」と呼ばれ、これをきっかけに防災情報の見直しが行われました。
 

当時、気象庁が発表していた災害発生の警戒を呼びかける「警報」よりも、さらに強く災害の発生が迫っていることを呼びかけるために創設されたのが「特別警報」です。「特別警報」は「警報」の発表基準をはるかに超える大雨や大津波などが予想されるときに発表され、ただちに命を守るよう最大級の警戒を呼びかける情報で、2013年8月から運用が始まりました。 

紀伊半島に1000ミリの大雨をもたらした台風12号(2011年)※出典:ウェザーマップ
紀伊半島に1000ミリの大雨をもたらした台風12号(2011年)出典:ウェザーマップ

また、前々回のうさぎ年、1999年も当時の防災情報を変える災害が発生しました。お盆の期間と重なった8月中旬、東日本に接近した熱帯低気圧の影響で関東地方は大雨になりました。この時、神奈川県西部の玄倉川(くろくらがわ)が増水し、中州にいて逃げ遅れたキャンプ客13人が犠牲になる被害が出ました。
 

当時、台風の基準に満たない熱帯低気圧は「弱い熱帯低気圧」と表現されていましたが、油断につながる恐れがあるため、2000年から「弱い」を省いて「熱帯低気圧」と表現することに変更されたのです。
 

今も残る、歴代「全国1位」の大雨

このほか、うさぎ年には短い時間に大雨となる「集中豪雨」の被害も重なりました。1999年の10月27日は、本州南岸を急速に発達しながら進んだ低気圧によって、佐原市(千葉県)で1時間に153ミリの猛烈な雨が降りました。
 

これは今も全国で観測史上1位の記録として残るほどの大雨です。同じ年の6月には梅雨前線の活動が活発になり、福岡市では29日に1時間に79.5ミリの滝のような降り方の雨を観測しました。博多駅前が浸水し地下街に濁流が流れ込むなどの被害が起き、これを機に「都市型水害」という言葉が広く使用されるようになりました。
 

気象業界で語り継がれる「三八豪雪」もうさぎ年

また、大雪の事例として気象業界で必ず話題に挙がるのが「三八(さんぱち)豪雪」。これもまた1963年(昭和38年)のうさぎ年に発生した災害です。
 

当時年末から約1カ月にわたって、東北から九州の広い範囲で雪が降り続きました。冬型の気圧配置が続く中、日本海で発生した前線や小さな低気圧が通過して、特に北陸地方で記録的な大雪になりました。最深積雪は長岡(新潟県)で318センチ、福井で213センチ、富山で186センチなどとなり、家屋の屋根まで達するほどの大雪となったのです。鉄道や道路などの交通網はストップし、多数の集落が孤立しました。
 

近年は「地球温暖化」が大きな問題になっていますが、温暖化が進んでも大雪のリスクが減少するわけではありません。気温の上昇によって空気中の水蒸気量が増えれば、雪の量が増える地域も出る可能性があります。
 

短い時間に大雪となる「ドカ雪」によって道路が渋滞するなどの交通障害も毎年のように発生しています。過去のうさぎ年の傾向と2023年の天候に科学的な関連はありませんが、この1年も最新の気象情報や防災情報を確認して、日頃から備えを進めておきましょう。
 

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