なぜ恋愛リアリティショーはここまで人気なのか。若者の“恋愛離れ”で加速する「恋愛のコンテンツ化」

動画配信サービスを中心に、多様なジャンルが生み出され続けている恋愛リアリティショー、通称“恋リア”。何がそこまで視聴者を惹きつけるのか。アラサーたちに聞いた魅力に垣間見る、若者の恋愛離れとの関係性とは?

「自分事として感情移入」アラサー世代に聞いた“恋リア”4つの魅力

さて、アラサー世代を中心に、熱狂的なファンを獲得している恋リアだが、その魅力はどこにあるのだろうか。恋リアを視聴している周囲のアラサー世代に意見を聞いてみた。
 
1:感情移入できる多種多様なキャラクター
「とある恋リアに、婚約破棄された参加女性がいて。自分も似たような経験をしているので、“自分事”として感情移入したし、応援したくなった(29歳女性)」
 
恋リアには、多種多様なキャラクターが登場する。その中から“自分事”として感情移入できるキャラクターを見つけて応援していくのが面白いという意見が挙がった。
 
恋リアの参加者の多くは一般人や駆け出しのモデルや俳優たちだ。1人1人にキャッチコピーがつけられ、回が進むにつれて参加者の人となりが分かっていく。番組内でさく裂する恋愛の駆け引きも見どころで、いつの間にか“推し”が見つかり、友達を応援するような感覚で見進めてしまうのも特徴だ。
 
2:展開が読めない
「ドラマだとある程度展開が読めてしまうけど、恋リアは読めない(31歳男性)」
 
台本のあるドラマと違い、恋リアには台本はない。製作者ですら結末が分からないまま撮影がスタートし、思わぬ展開を迎えることがある。2019年に放送された『バチェラー・ジャパン シーズン3』では、番組内で結ばれたカップルは早々に破局し、別の参加女性と付き合っていたことが後日談として明かされ、ネットは騒然となった。番組放送中、そして番組放送後もどうなるか分からない展開が視聴者を熱狂させる要因になっているようだ。
 
3:他人の恋愛をコンテンツ化する風潮として、「〇〇見た?」が共通言語になる
「会社で『〇〇見た?』と同僚に聞かれるし、みんなその話題で盛り上がるので見ている(28歳女性)」
 
この女性は、周囲が見ているので、恋リアを見るようになったのだそうだ。しかし、“ハマっているか”といえば、そうではないようで……。
 
「ぶっちゃけ私はそんなに好きじゃない(笑)。人の恋愛を見てなにが楽しいのか分からない。それを友人に言ったら『普段(人の恋愛を)見られないから楽しいんじゃん!』って。恋リアは好き嫌いがはっきり分かれると思います。私はSNSでのカップル投稿とかもシラけちゃうタイプなので……」
 
「自身の恋愛については絶対SNSにアップすることはない」と語るこの女性は、そもそも“恋愛”というプライベートをさらけ出し、コンテンツにしてしまうことに対する違和感があるのだという。
 
とはいえ、SNS上で自身の恋愛事情を世間に公表することに抵抗を感じない人は増えている。カップルタレントや、夫婦Youtuberなどがその最たる例だ。「結婚」「破局」などの出来事がそのまま彼らの人気に直結し、まさにその延長線上に恋リアが存在し、ヒットの要因になっているといえるが、この“他人の恋愛のコンテンツ化”については好き嫌いが分かれるようだ。
 
4:疑似恋愛ができる
「コロナで自粛期間中に、恋リアにハマりました。自分が恋愛してないから思わぬ展開に『キャー!』とか言ってるのが楽しかった(笑)(32歳女性)」
 
現在結婚し、2児の母であるこの女性は「独身の友人もリアルな恋愛より、恋リアのほうがキュンキュンするって言ってます(笑)。自分が体験したことのない・できなかった恋を見て、自分が恋愛した気になれるのが恋リアの魅力ですね」と語る。
 
彼女や彼女の友人にとって、恋リアは最強の“疑似恋愛”ツールであるようだ。
 

コロナ禍や不況で加速した「若者の恋愛離れ」もヒットに影響?

調査の結果、アラサー世代の恋リアの視聴層は、2極化しているように思えた。1つは参加者を“自分事”として視聴する「現実タイプ」。そしてもう1つは、自身が経験したことのない恋愛を疑似体験しながら視聴する「疑似恋愛タイプ」だ。

特に、後者のタイプが生まれる背景には、恋リアのメイン視聴者層である20~30代の「恋愛離れ」も関係しているかもしれない。
 
先日、内閣府が発表した「令和4年版 男女共同参画白書」で、20代の男性の約7割、女性の約5割が「配偶者、恋人はいない」と回答したことが分かった。さらに「これまでデートした人数」が0人と回答した20代の独身男性の割合は4割、20代独身女性も2割を超えたそうだ。
 
この結果を受け「なぜ恋愛をしない若年層が増えているのか」でネット上は持ちきりに。SNS上で多く見られたのは「デートする金銭的余裕や時間がない」「恋愛は面倒だしコスパが悪い」といった意見だ。
 
恋リアのヒットの裏側には、コロナ禍や経済的理由で加速した「恋愛離れ」の影響も大いにある。現実の恋愛をしなくても“疑似恋愛”できる恋リアは、今後ますます広がりを見せそうだ。
 

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