【鎌倉殿の13人】「過去最高」「すでに実朝ロス」感動続々、柿澤勇人が実朝“最期の瞬間”に思ったこと

大河ドラマ『鎌倉殿の13人』(NHK)で11月27日、源実朝が御家人たちのパワーゲームに翻弄(ほんろう)され、悲劇的な死を迎えました。初登場以来、この実朝役を繊細に演じて注目を集めてきた柿澤勇人さんにインタビュー。

27日放送『鎌倉殿の13人』で悲劇的な死を迎えた実朝

柿澤勇人(かきざわはやと)|1987年、神奈川県出身。劇団四季を経てさまざまな舞台、映像で活躍。近年の主な作品に舞台『スリル・ミー』『デスノート THE MUSICAL』『東京ラブストーリー』、ドラマ『鎌倉殿の13人』、映画『すくってごらん』などがある。

後半に入ってからの“修羅の道”化がすさまじい大河ドラマ『鎌倉殿の13人』(NHK)で11月27日、第45回「八幡宮の階段」が放映。和歌を愛する温和な貴公子・源実朝が御家人たちのパワーゲームに翻弄(ほんろう)され、悲劇的な死を迎えます。初登場以来、この役を繊細に演じ、お茶の間の注目を集めてきたのが柿澤勇人さん。これまで数々の舞台に主演してきた彼は、実朝の“運命の瞬間”をこう振り返ります。
 

>泣けた!『鎌倉殿の13人』公式にも感動の声

 

実朝「最期の瞬間」に感じたこと

「もちろん実朝としては納得づくの死というわけではなく、まだ“この先(の人生)”があると思っていたと思います。というのはその直前、公暁の父・頼家の死の真相を知って、実朝は公暁に土下座をして、“共に北条から源氏に(権力を)取り戻そう、私とあなたならできる”と申し出ているんです。でも、つらい人生を送ってきた公暁には、もはや復讐以外の選択肢が無かった。
 

拝賀式で刀を持った彼と対峙した瞬間、実朝としては……楽になりました。
 

>柿澤さんも公式で“実朝の最期”をツイート


それまで、正直自分は向いていないし、子どもも作れないのに“鎌倉殿”にならなくてはならず、大好きな(和田)義盛や畠山(重忠)が、鎌倉殿の自分が“殺すな”と言っているのに殺されて行くのを目の当たりにして、すごく苦しかったと思うんです。
 

でも頭の良い人だったから、力のない自分がどうすればいいかとなった時に、朝廷と手を組むというか、その力をお借りすることで何とか良い国を作ろうとした。そうせざるをえなかった。
 

そんな中で公暁に襲われることで、やっと全てが終わり、ずっと会いたかった父(頼朝)や、話せなかった兄上(頼家)がいるあの世へ行けるんだ……と思いました。絵(画面)にも映っていると思いますが、自分にまとわりついていたものが全てとれた、と感じた瞬間でしたね」
 

実朝役は意表を突いたキャスティング

柿澤さんの“主戦場”であるミュージカルのファンにとって、実は今回の実朝役は意表を突いたキャスティングでした。反抗的な高校生役が鮮烈な印象を残した『春のめざめ』(劇団四季)や『デスノート THE MUSICAL』『ブラッド・ブラザーズ』等、舞台での彼は“怒れる若者”を演じることが多かったのです。

自身にとっても実朝役は意外だったと振り返る柿澤さん。脚本の三谷幸喜さんからも「こういう役初めてでしょ」と言われたそう。

「叫んだり駆け回る役が多かったので、映像作品に出演する時も、そういった色の役に行きがちでした。今回で言えば頼家のような、破天荒だったり、嫌なことがあったら机をひっくり返して“ふざけんな”と叫ぶ役が想像しやすいですよね(笑)。僕自身、(実朝役は)意外でした。
でも、(脚本の)三谷(幸喜)さんは“そうじゃないところ”がその人の豊かさだったり良いところだと見抜いて、逆の役をあててくださるんですよ。
 

今回も、ミュージカル『メリー・ポピンズ』で煙突掃除夫のバートという、天真爛漫で誰からも愛されるキャラクターを演じる僕の中に、哀しみや闇、孤独を見て、実朝にと言ってくださったんです。撮影に入る前、ご飯をご一緒しながら、三谷さんからは“柿澤さん、こういう役初めてでしょ”と言われました。“すごく難しい役だけど、あなたならできます”と。
 

実際、三谷さんの台本は読んでいると、すっと入ってくるんです。これどういう意味? という部分がほぼ、ありません。役者って、“名悪役”といったスペシャリストを貫く方もいらっしゃるけど、僕は多面的でありたいと思うタイプなので、この台本を読んで、良い意味で皆さんの予想を裏切りたいなと思いました。僕のそういう面も三谷さんが見抜いてあて書きして下さり、大河ドラマという長丁場で皆さんに見守っていただけたのはとても幸せでした」
 

初登場から間もない頃、和田の屋敷で皆と猪鍋をつつきながら、じんわり幸福を感じる様を表情で見せたり、20日の放送回ではゆっくりとしたまばたきに意味を込めたりといった細やかな表現を磨けたのも、本作出演の収穫だったと言います。
 

「まばたき一つで表現は変わりますし、指先もちょっと動くだけで絵に映ってしまうので、(撮影時は)ものすごく自分のことを俯瞰で観ていた気がします。今、目線が何ミリ動いたな……とか。
 

その一方では、義盛が殺された時や(北条)政子に対して“母上が分からない”と叫ぶ場では、もうそんなことは考えていられなくて、感情のままに演じました。後で見返して“もっと行けただろう““もっと違う表情があっただろう”と思ったところもありますが、あの時ベストを尽くした結果なので、反省点は次に生かせればいいかなと、今は思います」
 

実朝の次に見るなら、この役は「驚いていただけます」

達成感に浸る間もなく、27日からは永尾完治役を演じる舞台『東京ラブストーリー』が開幕。そして2023年3月には『ジキル&ハイド』と、大作ミュージカルへの出演が続きます。
 

「大河ドラマで僕を知って下さった方々には、特に『ジキル&ハイド』を見ていただけると、驚いていただけるんじゃないかな。人間の善悪を分離する薬を開発しようとした医師の中に、別人格が生まれてしまうという物語で、僕は声も立ち姿も全く違う二人を演じます。特にハイドは凶暴な殺人鬼で、実朝のように愛される要素は全くないけれど(笑)、全力で嫌いながら“こんな声を出すんだな”とか、役者・柿澤の別の一面を楽しんでいただけましたら。音楽はキャッチ―かつ度肝を抜くような曲ばかりですし、キャストには日本の演劇界の最高峰の方々が集まっているので、人間の中に内在する善悪に思いを馳せながら、きっとスペシャルな時間を過ごしていただけると思います」
 

実朝役で広く世間の注目を集めたことで、ミュージカルに興味を持つ人が増えたら何より嬉しい、という柿澤さん。
 

「僕自身、高校生の時に『ライオンキング』を観たことで人生が変わりました。あの時出会っていなければ僕は今のような仕事をしていなかったと思うし、ミュージカルにはそれだけの巨大な力があると思っています。最近、ミュージカルは日本でブームになっていると言われているけれど、僕はまだまだだと思っていて、もっと知っていただきたいし、誰もが気軽にミュージカルを観られるような環境になるといいなと夢見ています。一人で業界を引っ張って行くようなかっこいいことはできないので、とにかく一つ一つの舞台を通して、生きている限り、僕が受けた恩を返していきたいです」
 

>『鎌倉殿』公式にも感動の声が続々
 

<公演情報>
『ジキル&ハイド』2023年3月11~28日=東京国際フォーラムホールC、その後ツアー公演として2023年4月8~9日=名古屋公演・愛知県芸術劇場 大ホール、2023年4月15~16日=山形公演・やまぎん県民ホール、2023年4月20~23日=大阪公演・梅田芸術劇場メインホールにて上演 
 

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