日本人のマナーについて仰天した出来事
10月の日本帰国時に、目を見張るような言動の男性と遭遇しました。要約すると、壮健そうな若い男性が電車の乗車時に私を押しのけて良い立ち位置を確保しようとし、失敗すると大きな舌打ちをしてこちらをにらんだ、という出来事でした。
レディーファーストのあるヨーロッパでは、女性を押しのける行為は殊のほか見苦しいとされ、侮蔑の対象ともなり得る行為です。私も長い欧州生活でその習慣にすっかり染まっていたため、この男性には大きな衝撃を受けてしまいました。
しかし、その後に会った友人の意見を聞くと、「日本では女性だからという理由で何かを優先させる習慣はない」とのこと。そして、「するなら弱者全般を優先させるべき」だとも。
よくあるレディーファースト理論のすり替えと勘違い
日本でこの議論になると、必ず聞かれる反論がありますが、なかには論点のすり替えや、レディーファーストの理念そのものに対する誤解と思われるものも見られます。
勘違い1.「淑女でない女性」にはレディーファーストをする必要がない
この見解の方は、どうやら一定数いらっしゃるようです。しかし、レディーファーストとは相手を選り好みせず、基本的に全ての女性に対して行うもの。相手女性によって態度を変えていては、それこそ紳士でないと見なされてしまうでしょう。
勘違い2. 女性だけでなく「弱者全般」を助けるべき
私の友人も口にしていた通り、これもよく聞かれる意見であり、正論に聞こえます。ただ、日本人が日常的に年配者・障害者・妊婦・子連れの母親などの社会的弱者を積極的に手助けしているかというと、疑問に感じます。
例えばヨーロッパでは、公共交通機関で席を譲ったり、ベビーカーの乗降を手伝う人は、文字通り毎日見かけますが、日本でこのような行為を連日見かけることはほぼ皆無。人口比で考えると、確率的にはかなり低いと言って良いのでは。したがって、「女性だけ優先させず、弱者全てを助けるべき」という主張も、どこか空虚に聞こえてしまいます。
勘違い3. レディーファーストはモテテクニックの一種
驚くべきことに、日本ではレディーファーストを習慣ではなく「モテテクニック」と捉える人が少なくないようです。その証拠に、女性側のレディーファースト反対意見の中には、
「レディーファーストをする男性は打算的な人が多い」
「スマートに振る舞う自分に酔っている」
「モテを狙っていて、浅はかな感じ」
といったものが多く挙がっており、マナーではなくモテ狙いでレディーファーストを利用しようとする男性の下心への異議が見て取れます。
「モテ」ではない、レディーファーストは基本的な国際儀礼
しかし、外務省「プロトコール(国際儀礼)でよくあるご質問」や「国際儀礼の基本講座」でも紹介されている通り、レディーファーストは基本的な国際儀礼であり、決してモテテクニックに終始するものではないはず。
この他にも、「男女平等の世にレディーファーストなんて前時代的」という意見も、フェミニストや若い世代を中心に出ているようですが、そういうポリシーの女性にはしなければ良いだけのこと。
「レディーファーストができるけど相手に合わせてしない」のと、「元々できない」には大きな隔たりがありますし、レディーファーストができなかったために、実際に海外で仕事のチャンスを逃したり、社交の輪から外されてしまった日本人もいると伝え聞きます。ここは、モテ技と軽視せずに、国際的なマナーのひとつとして学んでおいた方が、転ばぬ先の杖となりそうですね。
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