日本にいる外国人が、ご飯にお箸をブスッと突き立てたり、靴のままお座敷に上がろうとする姿にギョッとしたことはないでしょうか? 私自身も、南米やヨーロッパなど外国に長年住む中で、悪気はなくとも知らぬ間に現地の人を驚かせていたり、行儀作法に反してしまっていた経験が多々ありました。
 

今回はその中から、盲点となりがちなケースを3つ紹介したいと思います。

ビュッフェの落とし穴

日本で生まれ育つと、「出された料理は満遍なく食べること」と、家庭で習った方も多いのでは。調べてみると、一品ずつ供される料亭でもない限り、「特定のものだけを集中的に食べない」「ご飯と汁物は一口ずつ交互に」といったことは、食事の際の大切なマナーのようです。
 

ただし、この刷り込みのお陰で、私は移住先のウィーンで恥ずかしい思いをした経験があります。
 

当時付き合っていたオーストリア人(現在の夫)の家族から、カジュアルなビュッフェ式レストランに連れていってもらった時のこと。私は日本在住時と同様、お皿にサラダ類や肉・魚料理などを「満遍なく」盛りつけて席に戻ったところ……。「あれ、君、もう全部持ってきたの!?」と彼が目を丸くしています。
 

ふと見ると、他の人が取ってきているのはサラダやスープなどの前菜のみで、メインまで盛られた私のお皿を皆が不思議そうに眺めていました。コース順に食事が運ばれてくるレストランでは間違いようがないものの、まさか気軽なビュッフェスタイルでさえも「前菜→主菜→デザート」の順に逐次取りにいくとは! その場で慌てて日本の食習慣について説明しましたが、初対面の家族の前で赤面の至りだったことは言うまでもありません。
 

外国人には異様に映る? 「マスク姿」

日本では花粉症の増加とともに、市民権を得て久しい衛生マスクの着用。特にオフィスや電車内などでは、他人への配慮から着用している人も多いことと思います。ところが、ヨーロッパに来て気づいたのは、マスクをするのは医療関係者や感染の危険性がある重篤患者などで、一般人はよほどの事情がない限りマスクをする習慣がないということ。
 

昨今では、日本人観光客のマスク姿を徐々に見慣れてきている感もあるとはいえ、日本にいる時の気分のまま、のどの痛みや花粉対策でマスクを着用していると、奇異の目で見られてしまうシーンもあることでしょう。加えて昨今では、テロへの懸念から「覆面禁止法」が施行されている国も増えていますし、状況によっては衛生マスクもその対象と聞きますので、ヨーロッパ訪問の際には、マスク着用は控えたほうが無難かもしれません。
 

右手挙手はナチス式の「敬礼」に見える!?

日本で普通に暮らしていると、公共の場で「ナチス」と口にするのがタブーだとはなかなか気付きにくいもの。でもこちらヨーロッパでは、「ヤ〇ザ」と声高に叫ぶようなもので、かなり周囲の状況に配慮しながら口にする必要があります。

歴史的背景から、欧米ではナチスを彷彿とさせるものは忌避されがちですが、日本では「海外でも通用する赤ちゃんの名付け本」にアドルフという名前(ヒトラーのファーストネーム)が紹介されていたり、往年のアニメ「キン肉マン」には鉤十字を身に着け、口から毒ガスを吐くドイツ人キャラクターが登場したりと、タブー感は希薄で、国によっては禁忌であることもさほど周知されていません。
 

なかでも、私たちが犯してしまいがちなタブーの筆頭が「右手の挙手」です。日本の学校では、「姿勢を正し、右手をピンと伸ばして挙げましょう」と習いますが、何とこれはヒトラーへのナチス式敬礼と酷似しており、公共の場で行うと、ドイツやオーストリアなどでは即刻逮捕となります。
 

ギリシャでは、かつてこのジェスチャーを観客に対して行ったために、チームを永久追放となったサッカー選手がいましたし、今年に入ってアメリカのユニバーサルスタジオでは、この敬礼と白人至上主義のポーズを取りながらアトラクションに乗車した団体が、園外永久追放の処分を受けていました。私たちも海外で手を挙げる際には、人差し指を立てるなど、十分気を付けたほうが良さそうです。