海外から眺めてみたら! 不思議大国ジャパン 第7回

ヨーロッパの「人前授乳」事情~皮肉な印象を残したルーブル美術館の“トイレ授乳”トラブル

公共の場での「授乳」可否については、日本のみならず世界各国でたびたび話題になります。先日、ルーブル美術館で授乳中だった女性が「トイレで授乳を」と注意を受けたそうですが、同じヨーロッパでも授乳事情はさまざまです。

皮肉な印象を残したルーブル美術館

少し前、フランスのルーブル美術館内のベンチで赤ちゃんに授乳をしていた女性が職員から指導を受けたとして話題となっていました。なんでも、「他の訪問者の邪魔にならないよう、トイレで授乳するように」と言われたのだそうです。
 

これに納得のいかなかった女性側からのクレームを受け、ルーブル美術館は謝罪とともに、スタッフの再教育を約束したそうですが、あの自由ファーストのフランスでも、人前授乳は注意されてしまうのか……と少々驚きました。

同様の事例はヨーロッパでも定期的に世間を騒がせており、決して真新しい論争ではないものの、今回の騒動勃発となったのがルーブル美術館だったのはかなり皮肉な印象です。

というのも、当美術館では授乳をモチーフとした数々の美術品に加え、地下の入り口付近にある『シモンとペロ』(娘の乳房を吸う父親の衝撃的な彫刻)、『ガブリエル・デストレとその妹』(妹の乳房をつまむ裸体姉妹の肖像画)、数多の局所丸出し作品など、美術品と称された「わいせつ物」まがいの作品群をこれでもかと展示しながら、他方でお腹をすかせた赤ん坊に授乳する母親を咎めるのは、どうにも矛盾をはらんで見えるからです。
 

同じヨーロッパでも、国によって違う授乳事情

日本と比べると、比較的自由度の高いヨーロッパですが、それでも国によって授乳事情は異なってくる様子。

例えば私が長く住んでいたオーストリアでは人前授乳に対してかなり寛容で、ところかまわず授乳する母親たちを頻繁に見かけました。レストランで食後の一服よろしくポロリ、公園のベンチで休みがてらポロリ、地下鉄の移動時間を利用してポロリ。

日本で普及している授乳ケープなどはそもそも売られていませんし、ショールやジャケットで代用する母親が大半で、授乳服すら着ていない母親たちも少なくありません。誰もが服の胸元を無造作に引き下げて、あるいは引き上げて、思い思いのスタイルでのんびりと授乳タイムを謳歌しているように見受けられます。

一糸まとわぬ姿のまま水辺でリラックスできる「ヌーディストビーチ」も随所に設けられていますし、自然なライフスタイルを満喫するヌーディストが一定数存在するこの国では、公共の場での授乳も自然な行為として捉えられている節が窺えます。
 

「人前授乳」が忌避されがちな国もある

ところが私が現在住む隣国のスイスでは、事情は少し異なるようで、そんなポロリ授乳をする母親はほとんど見かけません。

以前、とあるスイスの新聞に載せられた「最新の悪習」という題のコラムには、

「授乳が自然な行為だからといって、大衆の面前で体液をほとばしらせるのは如何なものか」
「子供のことになると、なぜ母親たちは急に露出狂と化し、羞恥心が霧散するのか」
「ファンタジーを掻き立てるセクシーな裸身モデルのピンナップとは違い、授乳中の胸など誰も見たくはない」
「体液を輩出するという意味で、人前での放尿と授乳はなんら差異がない」

……といった、非常に手厳しい意見が掲載されていました。

自由なヨーロッパ内においてかなり保守派のスイスですが、昨今では古い殻を打ち破るべく、敢えて母親たちの授乳写真を撮影しつづける女性フォトグラファーの活躍が注目を集めるなど、時代の潮流が変わる兆しも感じられます。

赤ちゃんを抱える母親たちは、授乳時以外にも、酷い不眠に陥っていたり、両手に腱鞘炎を患って日常動作にも痛みを伴ったり、ワンオペでメンタルが参っていたりと、相当つらい思いをしている人も少なくないはず。ヨーロッパで時折見かける、「ベビーカーを押している自分は女王様」的な、高飛車な態度の人には「何でも許されると思わないで」と進言したくもなりますが、そうでもない限り、乳児・幼児連れのお母さま方に優しい社会であればと願います。


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