もはや慣用句? 「前から言ってるけど……」と前置きしつつコメント欄で持論を展開する人たち

ネット社会にあふれる「シン・日本語」をプロライター兼コラムニストの山田ゴメスが考察する「山田Gのシン・日本語辞典」。シリーズ【vol.14】は、ネットメディアのコメント欄に結構な頻度で出没する「自分の投稿がずっと読まれている」テイの書き込みをする人について。

SNSで話題の新語、大人の常識では解読できない若者言葉まで。ネット社会に増殖し続ける「シン・日本語」をプロライター歴30年の山田ゴメスが考察する。
 

vol.14 コメント欄をにぎわす? 「前から言ってる」と主張する人たち

もはや慣用句? (画像はイメージ)

自由に意見を書き込みできるネットメディアのコメント欄で見かける「前から言ってるけど〜」という、もはや慣用句と呼んでも差し支えない前置き。
 

類語

・いつも言ってるけど~

・前にも書いたけど~

・散々繰り返してきたけど〜
 

考察

(主に)ヤフコメ欄あたりで、投稿内に「前から言ってるけど〜」みたいな“お断り”を入れてから、自身のロジックをたっぷりと展開するヒトがいる。例えば、新型コロナウイルス関連の記事に対する書き込みだと、
 

「前から言ってるけど、マスゴミは今日は全国で◯◯人の感染者数でしたと垂れ流しているだけ。いい加減国民もうんざりしてる」
 

……みたいな感じである。ただ、筆者は目にするたびに思う。
 

「前から言ってるけど〜」って……知らんがな!
 

アンタのことなんて、アンタがコメント欄で同じことを何回言ってるかなんて、アンタがどーいう主義主張の持ち主かなんて……。
 

筆者がまだ駆け出しのライターだった頃、
 

「いくら連続モノの記事やコラムや小説であっても、この原稿を初めて目にする読者のことを常に考えた書き方を心がけなさい」
 

……と、何人もの担当編集から徹底的に叩き込まれてきた。だから、「前から言ってたけど〜」は最も使用してはいけない禁句中の禁句なのだ。百歩譲って、そう記述するなら、紙媒体だとその「前から言ってたこと」の要約を追記、ネットだとそこへ飛ぶことができるリンクを貼るのがマストなのである。
 

2022年11月15日から、ヤフーはヤフコメ欄への投稿に対して、携帯電話の登録を必須化した。
 

そのおかげで「コメント欄が“キレイ”になった」という声がある一方、ネット全体で見れば「口汚い誹謗中傷がTwitterや5ちゃんねるやガールズちゃんねるとかに流れただけ」という見方もある。
 

また、ヤフコメ欄は、中高年世代を中心とする一部のヘビーユーザーが一つの話題に何度も投稿していたりもするため、必ずしも投稿実数と投稿人数は一致しないなんて話を聞いたこともある。「そう思う」「そう思わない」ボタンで、自分の意見が多数派かどうかを確認する……ような使い方をしている人も少なからず、らしい。
 

いずれにせよ、一つの記事に何百何千ものコメントが集まるヤフコメ欄において、ましてや無記名の適当なハンドルネームのみで発信する投稿が“読者”の記憶に残っているはずもない……そんな謙虚な客観的視点は、いくらノーギャラであろうと趣味の一環であろうと、公におのれの持論を放言するかぎり、最低限持ち合わせて然るべき“礼儀”なのではなかろうか。
 

あと、ついでにもう一つ。よく「マスゴミ」なるワードも見かけるが、これはおそらく「マス・コミュニケーション」の略語である「マスコミ」の誤記であると推測される。やはり、公におのれの意見を晒す際に、誤字脱字はMAXに頭が悪そうに見えてしまうので、そこらへんのうっかりミスには万全の注意を払っていただきたい。
 

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