K-POP仲間は「お母さん」から「クラスメイト」に変化!? 世代間の分断は生まれたのか
ゆりこ:そうそう、矢野さんのK-POP好きもお母さまの影響でしたもんね。ただ意外にも「親子での来場率」が下がったように見えたんですよ。今も親子ファンは多いはずですし、実際に以前お仕事をご一緒した会社でそのようなデータを見せていただいたこともあります。でもコロナ禍以降、子どもも親もそれぞれ「同世代の仲間同士」で参加し始めてるんじゃないかという仮説を唱えたく。
矢野:それってつまり、こうは考えられませんか? ひと昔前、僕が学生だった5年前までは、まだK-POPって「オタク向けカルチャー」の色が残っていて、学校で分かり合える友達も限られていたんです。でも、今はK-POPがより一般化して、クラスの中だけでもライブ仲間がたくさん見つかっちゃうようになったとか。「お母さんとの共通の話題」から「友達との友情をつなぐもの」「若者同士で楽しむカルチャー」へ変化してきたといいますか。
ゆりこ:一理あるかもしれません。SNSでつながったファン仲間と来ている子もいたでしょうね。とにかく同世代グループが増えた印象でした。学生同士、アラサー同士、熟年同士……。そんな輪がたくさん存在していた感じですね。実際のところ「推しの愛で方」も年齢を重ねるごとに少しずつ変化していきますし。あくまで私の肌感覚なので、異論は当然あるかと思います(笑)。
矢野:じゃあ「世代間の分断」みたいなものも起きてると思いますか? 正直なところ。
ゆりこ:いや、それが意外にも「シームレス」につながっているのかもと思っていたり。というのも私、いたるところでK-POPの話をしている人たちの会話を聞いちゃってるんですけど……。
矢野:盗み聞き(笑)。マックで女子高生が……。
ゆりこ:そうそう、スタバの女性たちが……ではありませんが。1つ弁解させていただくと、皆さんK-POPの話すると声が大きくなるんですよ。特に推しの話題になるとね。それはしゃーないのです、ほぼ生理現象だから! だから聞き耳立てているというより、聞こえてきちゃうのですよ。でね、オトナのファンは自分の子どもや、職場の後輩など若い世代からの情報をありがたがっているし、情報収集能力を頼りにしてるなというのが伝わるんです。逆に若い子たちはお母さんの推し歴の長さを誇っていたり。あと、そもそも世代とか性別でカテゴライズするのも野暮なのですよね、ってこの話題を始めちゃったの私か……ミアンです(ごめんなさい)。
矢野:もう新参vs.古参みたいな感覚も変わってきているのかもしれませんね。ちなみに印象的だった話はありますか? 具体的に。
ゆりこ:KCONで近くに座っていた20代の女の子たちが話していた内容なのですが。以前電車に乗っていたとき、ある駅でお母さん世代の女性が大量に乗り込んできたそうなんです。なぜかみんな興奮気味でワイワイにぎやかな雰囲気で。会話の内容や持っているグッズから某ベテランアイドルのライブ後だったということが分かったそうなんですよ。
矢野:(名前を聞いて)おお、日本の有名アイドルじゃないですか。キャリアからして長年応援している人も多そうですね。で、ファンの団体に遭遇した女の子たちはどんな発言を?
ゆりこ:そのトークの続き、正直私は……ちょっとだけ批判的な言葉が続くんじゃないかって身構えてしまったんです。でも、彼女たちから出た言葉は「長く応援できるアイドルがいるのは素敵なことだよね」「中年になっても推し続けたいな」「好きなアイドルを見て興奮しないなんていくつになってもムリじゃん?」だったんですよ。私も、30代半ばを過ぎてもなおK-POPアイドルを追い続けていることに恥じらいはないですが、彼女たちほどオープンになれていなかったのかも、と一瞬身構えた自分を反省しました。
矢野:彼女たちの感覚、ちょっと分かる気がします。もう「オタク」に対するマイナスイメージはあんまり無くて、むしろ「推せる存在がある尊さ」とか「詳しい分野」や「熱中できるもの」があることへの憧れの方が年々強くなってきているかもしれないですね。オタクの地位向上というか。
ゆりこ:自ら「オタク」を名乗るファンも多いですしね。そこに否定的なニュアンスは感じられないです。それに「いくつになったら卒業」するとか、そういう感覚も窮屈で、今にマッチしないものなんだなって。日本の場合は結構前からそうだったとも思うんですが、オトナ本人がそう思っていても、下の世代がどう感じているかという本音は分からなかったんです。N=2の意見が若者全体の総意だとするには乱暴ですが……。
矢野:世代とか性別でカテゴライズするのも野暮(2度目)と思いつつ、傾向としてこういう変化を知るのは面白いですよね。その感覚ってどの世代が発生源だとしてもいずれ全体に広がるじゃないですか。今回のテーマって今更ですが「K-POPファンの『シームレス』化」なのかも。
ゆりこ:それでいうと、ファン側だけでなく「アーティスト側」もシームレス化は進んでいますよね。