日本語とは、ひらがなをはじめ、カタカナ、そして漢字と、さまざまな文字を使って表されるのが特徴です。
1文字が1音を表すひらがなやカタカナとは違い、漢字にはさまざまな読み方があります。それに漢字の場合、文字自体が持つ意味があり、読み方が同じ言葉でも、使う漢字によって意味が変わる場合があります。
今回は「気を使う」と「気を遣う」に焦点を絞り、2種類の異なる漢字表記である「つかう」の正しい使い方をフリーアナウンサーの笠井美穂が解説します。
<目次>
・漢字の「使う」と「遣う」の意味
・漢字の「使う」と「遣う」の違い
・「使う」と「遣う」の例文
・シーンに合わせて「使う」「遣う」を使い分けよう
漢字の「使う」と「遣う」の意味
まずは、「つかう」という言葉の持つ意味を辞書で確認してみましょう。
『精選版 日本国語大辞典』(小学館)
①身辺の世話や用事などをさせる。働かせる。
②物を用いる。ある事に物を役立てる。
③湯水で、物や手・体を洗う。また、弁当などを食べる。
④ことば、知恵、術、法などをあやつる。
⑤(心を)あれこれと働かせる。
⑥ある手段をとる。
⑦時間・金銭・品物などを消費する。
『精選版 日本国語大辞典』と同じように、多くの辞書には、「使う」「遣う」は「つかう」という1つの言葉として採録されています。
つまり「使う」も「遣う」も、基本的には同じような意味を表しているようです。
漢字の「使う」と「遣う」の違い
それでは、「使う」と「遣う」はどのように書き分ければよいのでしょうか?
『新潮日本語漢字辞典』や、毎日新聞校閲センターの『毎日ことば』には、一般的には「使う」を用いると書かれています。
また、『大辞林4.0』や『三省堂 類語新辞典』、『新潮日本語漢字辞典』、『日本語の正しい表記と用語の辞典 第三版』では、「遣う」について、「操る」という意味や、金銭を費やす、心を働かせるなどの意味の場合に用いるとされています。
こうしたことから、「つかう」という言葉は基本的に「使う」と表記します。一方で、「操る」「金銭を費やす」「心を働かせる」などの意味で用いる場合には「遣う」と表記するのがよいのではないでしょうか。
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「使う」と「遣う」の例文
以下にそれぞれの例文をまとめます。
「使う」を用いた例文
・気の使い方
・電車を使う
・お金の使い道
「遣う」を用いた例文
・上司に気を遣う
・丁寧な言葉遣い
・子どもにお小遣いを渡す
シーンに合わせて「使う」「遣う」を使い分けよう
「つかう」という言葉は、単純に何かを用いるという場合などは広く「使う」とするのが一般的です。そして、操る・金銭を費やす・心を働かせるなどの場合は「遣う」とするのがよいでしょう。
ただ、「使う」「遣う」のどちらを使っても厳密に間違いではありません。今回ご紹介したさまざまな基準も、今後、時代に合わせて変わっていく可能性もあるでしょう。
使う場面ごとに、どのような言葉と使い方がふさわしいか意識しながら、使い分けましょう。